↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/60

第30話 飲みくらべ

 宝殿が作り出したポーションを、みんなで囲む。


 小ぶりな瓶の中で揺れる液体は、いかにも薬らしい色をしていた。

見た目の時点で、湊のパナシーアとはだいぶ印象が違う。


「で、どうなんだ」


 川端に促されて、宝殿は頭の中へ流れ込んだ説明をそのままたどる。


「中度から軽度くらいの怪我を治せて、毒にも効くみたい」


「毒って、どのくらいだ」


「そこまではっきりはしないけど、たぶん軽いものまでだね」




「麻痺は?」


 柊が聞く。


 宝殿は首を横に振った。


「無理みたい。他の状態異常も、少なくとも説明にはなかった」


 その場の空気が、わずかに落ち着く。

悪くはない。

 でも、飛び抜けてもいない。

そういう反応だった。


 風連が腕を組む。


「まぁ、第二階層のボス報酬としては、妥当なところか」


「使えないわけじゃないけどな」


 川端も続けた。


「回数制限つきだし、あくまで応急処置寄りだろ」


 宝殿は少しだけ唇を尖らせた。


「なんかぁ……思ったより評価渋くない?」


「いや、十分便利だとは思う」


 湊は正直に言った。


「ただ、比較対象が悪い」


「比較対象」


 宝殿が繰り返す。


 その視線が自然と湊に向いて、何人かも同じようにこちらを見る。

 そこで宝殿は、何か察したように目を細めた。


「もしかして、東金君の回復スキルって、かなり変なスキル?」


「変って言うな」


 思わず返すと、風連がすかさず口を挟む。


「いや、変だろ。どう考えても」


「怪我だけじゃなくて毒も麻痺も疲労もいける時点でだいぶおかしい」


 川端までうなずいた。


「しかも回数管理の融通も利くしな」


 柊が短く言う。


宝殿は手の中のポーションと、湊の方とを見比べた。


「じゃあ、飲みくらべ……してみる?」


「そうなるよな」


 半ば当然みたいな流れで話が進み、湊は小さく息をついた。

 手の中に意識を向け、パナシーアを作る。


 現れた液体は、宝殿のものよりもずっと自然に見えた。

 薬品というより、普通の飲み物に近い。


 宝殿はまず自分のクリエイト・ポーションを一口飲んだ。

すぐに顔をしかめるほどではないが、微妙な表情になる。


「……薬の味。だね」


「だろうな」


「まぁ、素直に言うと、おいしくはないよね」


 それから今度は、湊のパナシーアを口にする。


 一瞬、宝殿の動きが止まった。

驚いたように目を丸くして、それからもう一口確かめるように飲む。


「え?」


「どうした」


「いや、これ」


宝殿は手元の瓶を見つめ、それから湊を見る。


「なんでこんなに飲みやすいの? っていうか、回復薬の味じゃなくない?」


「知らないけど」


「知らないで済ませるんだ……」


 風連が呆れたように言う。

けれど宝殿はそれどころではないらしい。


「いや、味もそうだけど……そもそも全然違うじゃない」


「どのへんが?」


「こっちは薬って感じがしないよね。回復用の薬液っていうよりも、普通に体に入ってくる感じがする。なんか、美味しいし」


 川端が鼻で笑う。


「だから言っただろ。湊の方がおかしいんだよ」


「僕の、普通に当たりスキルだと思ったんでだけどなぁ」


宝殿が少し複雑そうに言う。


「当たりではあるだろ、ペナルティなしで使えるんだし」


柊が言った。


「ただ、東金の隣に置くと見劣りする」


その言い方は、変に気を遣っていなかった。

事実をそのまま置いただけだ。


 宝殿は数秒黙ってから、自分のポーションを見下ろす。


「中度から軽度の怪我と、軽い毒だけ」


「麻痺なし、他の状態異常回復もなし」


 風連が指を折るように確認する。


「しかも一日三回で、総使用回数二十回」


「並べるとだいぶ厳しいな」


 川端が言う。


「厳しい……よね」


 宝殿は素直に認めたあとで、ふっと笑った。


「いや、逆に安心したよ」


「何がだ」


「東金君の方がおかしいなら、僕のスキルが外れってわけじゃないんだろうから」



 その言葉に、何人かが少しだけ肩の力を抜く。


 たしかにその通りだった。

クリエイト・ポーションが弱いわけじゃない。


 ただ、パナシーアのスキルが異常なだけだ。


 湊は黙ったまま、手の中の液体を見る。

自分にとっては、もう使えるのが当たり前になりかけていた。

けれど、こうして並べられると嫌でもわかる。


 これはたぶん、普通のスキルじゃない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。