第25話 ブラックスミス
それは、第二階層攻略の途中、短い休憩を取っていたときだった。
壁にもたれたまま、筋肉質の男がボソリとこぼす。
「……戦力、やっぱ足りねえな」
色黒でいかついゴリマッチョな大男の延徳 龍太郎だ。
その呟きに、近くにいた圭が顔を向けた。
「まぁ、そうだな」
「前に出る奴が限られすぎてる。せめて武器でも回せりゃ、多少は違うんだけどな」
少し離れた場所にいた柊も、その言葉には静かに反応した。
「だが、このダンジョンじゃ武器もダイスに願わなければ手に入れることは出来ない」
「わかってんよ」
延徳は頭を掻く。
「だから思ったんだよ。一回こっきりで物を出すんじゃなくて、武器をどうにかできる力があればってよぉ」
圭が眉を上げる。
「作る側になるってことか」
「……たぶんな」
そこで延徳は一度黙った。
願えば、ペナルティが来る。
しかもこういうのは、たぶん軽くない。
それでも、前に出る連中の負担を思えば、誰かが引かなければならない気がした。
延徳は息を吐き、ダイスを強く握る。
「『俺に、みんなが使える武器を作れる力をよこせ!』」
言い切ってから、無造作にダイスを放る。
コロコロ、カラン。
乾いた音を立てて転がったダイスが、石床の上で跳ね、最後に止まった。
「……1」
出目は低い数字だった。
圭が小さく息を呑む。
柊は黙ったまま、出目を見つめている。
次の瞬間、あの無機質な声が響いた。
『確認。対象《延徳 龍太郎》による願望行使を受理しました』
延徳は無意識に喉を鳴らす。
『能力を付与します』
短い沈黙が落ちた。
「……来た」
圭が先に反応する。
「鍛冶……の能力か?」
「ああ。武器作成系、たぶんそれだ」
延徳は自分の手を見る。
まだ何かを持ったわけじゃない。
けれど、何をどう願えば武器になるか、どんな形なら扱いやすいか、そんな感覚だけがじわりと頭に馴染んでくる。
柊が静かに口を開いた。
「ペナルティは後で来るぞ」
「だろうな」
延徳は苦く笑う。
「でも、これで少しはやりようが増える」
圭が口元を緩めた。
「いいじゃん。前に出られなくても、戦力にはなれる」
「戦力になるために引いたんだよ」
そう言って、延徳はダイスを拾い上げた。
胸の奥には不安もある。
だが、それ以上に、自分の役目を掴んだ感覚の方が強かった。




