第8章 第2話 炎上案件で業務統括になる。
残るのは保守運用へ向けた障害対応だった。
法人向けシステムの構築が一段落した頃、自分は業務統括へ抜擢されることになる。
4次請けにもかかわらずである。
1次請けの会社名を名乗り、顧客との電話会議へ参加する。
障害状況の説明。修正方針の説明。対応期限の説明。
本来であれば1次請けが行う仕事だった。
要するに、現場にはシステム全体を理解し、ロジックレベルで説明できる人間がほとんど残っていなかったのである。
また、顧客には正論で勝つ必要があった。
相手は高学歴のエリート集団である。
こちらは服飾専門学校卒。
学歴で勝負しても意味はない。
システムを理解し、事実を整理し、論理で勝負するしかなかった。
結果として障害は1つずつ解決されていった。
そしてプロジェクトは保守運用フェーズへ移行することになる。
そのタイミングで自分はプロジェクトを離れることになった。
気が付けば業務統括である。
技術者として参加したはずだった。
しかし最後には顧客説明や進捗管理まで担当していた。
最後の送別会で、1次請けのリーダーから言われた言葉がある。
「あなたがいなければ、このプロジェクトは終わらなかった」
素直にうれしかった。
何年経った今でも覚えている。
この案件以降、自分は単なる技術者ではなくなった。
2次請けでありながら、PMやリーダー、サブリーダーを任されるようになる。
現場を立て直し、人をまとめ、プロジェクトを前に進める人材として扱われるようになったのである。
振り返ると、この案件は2次受けSEとして経験できる最上位のポジションを経験した時間だったと思う。
この時、32歳だった。




