第4章 2話 ネット歴3日でオフ会幹事になる
友人の紹介で、うどん屋のアルバイトを始めた。
18時から22時まで働く。
まかないを食べる。
生活費を浮かせる。
親に仕送りをもらいつつ食いつないでいた。
そして22時になると、自分は別の世界へ入っていく。
インターネットである。
当時はISDN回線。
定額で使えるのは22時から翌朝6時までだった。
PCを購入した時に、
「キーボードに慣れるにはどうしたらいい?」
と友人に確認した。
答えは、
「出会い系チャットに行け」
だった。
当時はインターネット黎明期。
草チャットがたくさんあったのである。
チャットを始めて3日目。
誰かが言った。
「オフ会やらない?」
面白そうだった。
自分はすぐに手を挙げた。
そこから3週間ほど、毎晩チャットで参加者を集めた。
10人でも開催するつもりだった。
人数が見えてきたところで店を予約し、あとはキャンセルの補充を続けた。
そして当日。
新宿の居酒屋に30人が集まった。
男性20人。
女性10人。
何をやりたかったのかは分からない。
でも、人を集めることができた。
それが純粋に楽しかった。
さらに予想外のことも起きた。
当時、自分はずっと非モテだと思っていた。
だからこそ服装を学び、見た目を変えようとしてきた。
ところがオフ会の世界では、なぜか自分はオシャレな人間として見られた。
服飾専門学校で学んだこと。
幹事をしたので、連絡先は知っている。
結果としてこのオフ会参加者の3名の女の子とデートしたり、
アレコレしたりといい思いをさせてもらったのである。
人生、どこで経験が役に立つか分からない。
アパレル会社では評価されなかったものが、ネットの世界では評価された。
うどん屋で働きながら、夜はネットを続けた。
そしてある日、ふと思った。
パソコンを使う仕事をしてみよう。
まだプログラマーになるつもりはなかった。
そんな知識も技術もない。
ただ、自分にできることならあった。
文字入力である。
派遣会社へ登録し、キーパンチャーの仕事を始めた。
時給1250円。
プロバイダ契約書の内容を延々とパソコンへ入力する仕事だった。
1日中入力する。
首が痛くなる。
そこでブラインドタッチを覚えることにした。
北斗の拳のタイピングゲームで遊びながら練習した。
今思えば、ここも小さな一歩だったのだと思う。
アパレル業界で働くことはなくなった。
しかしアパレルで学んだことは残った。
服を見る目も、ブランドの知識も、今でも生活の中で役に立っている。
仕事としてのアパレルは終わった。
けれど生活の中のアパレルは人生の財産として残った。




