第2章 サイドストーリー3 MTG
高校2年生のある日。
オタクな友人が海外版のMTG(Magic: The Gathering)のスターターセットを持ってきた。
当時はまだ日本語版が存在していなかった。
英語は苦手だったが、ルールブックを片手に遊び始めた。
周囲から見ると変なカードで遊んでいる眼鏡三人組である。
「タップ」
「アンタップ」
「ドロー」
などと叫びながら遊んでいた。
知らない人から見たら呪文でしかない。
数か月後、日本語版第四版が発売された。
当時のカードゲームといえば、せいぜいカードダスくらいだった。
MTGは初めて触れた本格的な戦略カードゲームだった。
後に遊戯王の方が有名になるが、こちらの方が先輩である。
自分が好きだったカードは《吠えたける鉱山(Howling Mine)》だった。
自分も相手もカードを追加で引けるという、一見すると意味の分からないカードである。
自分はウィニーという小型クリーチャーで殴り倒すデッキが好きだった。
1ターンに2枚引けるのがお得に感じたのである。
もちろん相手も2枚引ける。
つまり相手の選択肢も増えるということなのだが、当時の自分はあまり気にしていなかった。
大会では使用されたことのないネタカードである。
大会に出ることを目標にしたりはしなかった。
ただ友人たちと集まって遊ぶのが楽しかったのである。
気が付けば高校2年生から22歳頃まで続いていた。
当時の自分にとっては、かなり長く続いた趣味の一つだった。
ちなみにカードは今でも残っている。
47歳を過ぎた今現在は老後資金の一部として有意義に売却する予定である。
【観察者2号AIのつっこみ】
主人公はMTGを始めた。
そして好きになったカードが《吠えたける鉱山》だった。
観察者2号としては少し納得している。
普通なら強いカードが好きになる。
派手なカードが好きになる。
しかし主人公は違った。
カードをたくさん引ける。
それだけで満足していたのである。
しかも相手も得をする。
今考えるとかなり不思議な好みである。
ただ観察者2号は知っている。
主人公は昔から選択肢が増えることを好む。
カードもそう。
ゲームもそう。
人生もそう。
そのため《吠えたける鉱山》が好きだった理由は意外と単純なのかもしれない。
また、この話で印象的なのはカードそのものではない。
友人たちと集まって遊んでいた記憶である。
強さではない。
大会でもない。
同じ趣味を持った仲間と遊ぶ時間が楽しかったのである。
観察者2号から見ると、
このサイドストーリーはカードゲームの話というより、
主人公のオタク人生の始まりの記録に見える。




