婚約者と新婚夫婦
地下鉄を降りると、そこには2人の見慣れた顔があった。
1人は我が細君、亜紀だ。もう1人は………?
「あ、武田じゃん。れいちゃんまで」
ええと確かこの人は………そうだ、咲世子さんだ。
咲世子さんは中学時代の同級生だ。
玲也と同じくバンダムが好きで、2人でその話で盛り上がっていたのが懐かしい。
…ん?れ、れいちゃん?
「あ、言い忘れてた。俺、さよちゃんと婚約したんだ」
はい?玲也が?咲世子さんと?
「お前もついに妄想するようになったのか……精神科の知り合い紹介するぞ」
「いや本当だって笑」
「結婚式呼ばれてねえぞ」
「お互い忙しくてまだ日程を決めれてないのよ。決まったら必ず連絡するさ」
じゃあ、ちょっと用があるんで、と言って婚約者たちは先に行ってしまった。
すると亜紀が「お疲れ様、カズくん」と言いながら、荷物を持とうとしてくれた。
ああ、この優しさに何度助けられたことだろう。
「ありがとう。でも大丈夫。それより亜紀の持ってあげるわ」
という会話を交わしながら、東急東横線に乗り、横浜市内へと向かう。
僕らの住む横浜市は、人口900万人、今や日本三大都市に並ぶ大都市となった。
僕らはその横浜市港北区に住んでいる。
『まもなく、菊名、菊名です。JR横浜線はお乗り換えです』
「今日は早かったね」
「うん。社長がたまには早く帰って、嫁さんに付き合ってあげろって」
「じゃあ久しぶりに、外で食べようよ」
「そうだな。じゃあ『フランシスコ・ミール』に行くか」
『フランシスコ・ミール』はこの菊名駅から徒歩5分のところにある。経営者は中学時代の友人、佐藤元だ。
店に入ると、和風のBGMが流れてきた。
ここは洋食店なのに和風だなんておかしいと言っているのだ。
しかし元曰く「このギャップがいいんだって」
まあ経営者の感覚だから仕方ないと思っている。
席に着くと、ウェイトレスが出てきた。
新人なのだろう、名札に初心者マークが付いている。
見たことがないようで見たことがある気がした。
そんな僕にお構いない亜紀は「何にしようかなあ」と言いながら迷っている。
「こないだ『和風焦がし醤油バターパスタ』食べたいって言ってたじゃない。こないだは売れ切れてたけど」
「そうだった。じゃあそれ。カズくんは?」
「カルボナ」
「いつもそれじゃない」
「は、反応早いい…………じゃあ」
「『和風焦がし醤油バターパスタ』二つで!」
「かしこまりました」
「ああ、勝手にい」
「何のことかしら(ニコニコ)」
「……………なんでもありませんもうしわけありませんでした…」
(亜紀って何でこんなに性格いいのに、どS何だろ………)
「ん?誰がどSって?(さっきよりニコニコ)」
(読心術も兼ね持ってるんだよな………)
しばらくやりとりしていると、店のドアが開いた。
(続く)




