音楽と孤独
「別れましょう」
僕が家でロックミュージックを聴いているときに電話でそう一言告げられた。
彼女との関係はそれが全てだった。
友人は彼女に寂しい思いをさせたのだろうなどと僕に言っていたが、僕らは独立心のある関係で、お互い依存するところは全くなかった。
その日からしばらく、僕と彼女の関係の必要性について頭を悩ますことが何度かあった。
だが、結局のところ終わってしまった関係が戻るわけではないので僕は翌週にはその悩みを頭の外へ追いやることに成功した。
終末に彼女と行っていたバーに行くと彼女がいた。
僕は当然のごとく彼女に話しかけた。
「久しぶり」
「そうね」
「なんで別れなくちゃならなかったんだ」
僕はやり直したいわけではないがただ疑問として聞いてみた。
「必要なかったからよ、私たちの関係はなくてはならないものではなかった、ただそれだけ」
なるほど必要ないのなら無くてもよかったのだろう、僕は納得した。
「君に必要なものはあるのかい?」
「そうね、多少のアルコールとジャズかしら、人は必要なかったみたいね」
「なるほど」
そう言うと僕らは一時間ほど隣に座りアルコールを楽しみ出て行った。
それはただ隣に座っていただけであり、特に関係を持とうとはしなかった。
バーから出ると駅まで歩き電車に乗った。
僕はポータブルオーディオにイヤホンをつなぎビートルズを再生しながら電車に揺られた。
不思議と孤独感は感じなかった。
それが音楽によるものか周囲にいた他人によるものかは分からなかった。
ただ、僕にとって彼女は欠かせないものではないことだけが理解できたのだった。




