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129、再会の涙

 チビっ子二人は、スープを飲み、赤い米のようなものを小さく丸めた物を食べていた。母はスープだけね。


 侍女達の顔色から、母が自力でスープを完食することは珍しいのだとわかる。目にうっすらと涙を浮かべる侍女もいる。



「ジュリエッタは、たべないの?」


(無いよ)


 食事は二人分しか用意されていないため、白い髪の小さな女の子の素朴な疑問に、侍女達は慌てた。


「私は、村長さんのご飯を食べるからね。まだ、お弁当も残ってるけど」


「ポウロにあげようよ。そんちょうのおべんとうは、きれいなんだよ」


 白い髪の小さな女の子がそんなことを言うから、ポウロくんのキラキラした目線が痛いよ。



「じゃあ、キララ、お弁当を出して」


 私がそう言うと、キララは、白い髪の小さな女の子の席の前に、お弁当を置いた。


「ポウロ、あげる。ゆっくりしないと、なかみが、とんでいってしまうから、じょうずにあけてね」


「ふわしろスライムがやってみせて」


「ええっ? ぼくは、しっぱいするかもしれないよ。ジュリエッタ、どうしよう」


(泣きそうな顔してる)


「わかった。じゃあ、私が紙包みを開けるね。ここの折り返しをこうやって開くんだよ」


「どうして、ジュリエッタがやると、とんでいかないのかな。おとなだからかな」


「ふわしろスライムさんは、まだ生まれたばかりだからだよ。そのうち、できるよ」


「まぁっ!」


(ん? 誰の、まぁ?)


 声のした方に視線を向けると、扉番の女性がいた。キュルルとお腹が鳴ったような気もする。


「うおっ! すごいきれいだよ、おかあさま。どうしてこんなに、いろいろないろがあるんだ?」


 母の方に視線を向けると、彼女も目を見開いていた。



「スライム神の島には、人間の集落もあるの。加工肉は赤の集落の特産で、黄色い卵とパンは黄の集落、緑色の野菜は緑の集落のものだよ。村長さんは、黄の王国の出身だけど、赤の王国と黄の王国と緑の帝国が、こんな風に仲良く一つになって欲しいんだと思う」


「ジュリエッタがお世話になっている方なのかしら」


「うん、6歳のときから、海辺の集落にいるよ。小さな集落だけど、人化したスライム達がたくさんいるし、水を汲みにいく泉には、仲良しのスライム達がいるの」


「そう、ジュリエッタが元気なのは、村長さんやスライム達のおかげなのね。ご挨拶したいけど、私には無理ね」


(ご挨拶?)


 もしかして、ポウロくんをスライム神の島に連れて行きたいって、思ってるのかな。



「スライム神の島には、大陸から大型船が来るよ。島の周りには珊瑚礁があるから、正確には、島の近くの小島に、大型船が来る。戦乱で止まってしまってるけどね」


「大型船?」


「うん、商人の船かな。だけど、片道にひと月ほどかかるんだって」


「そう、商人の船を使えば良かったのね。ジュリエッタもジュリエットも、海に流してしまったわ。ジュリエットは、すぐに大きな魔物に食われてしまったみたい。だから、ジュリエッタも、生きてないと思っていたわ」


 侍女達が、王妃を気遣って、背中をさすっている。侍女達も自分の子供を海に流した経験があるのかもしれない。


 白い髪に対する変な噂がなければ、こんな悲劇は起こらなかった。でも長年の噂は、すぐには消えないかな。




「キララ、扉の外にいるランドルフくんを連れてきて」


 キララはスッと姿を消した。だけど、すぐには戻って来ない。ランドルフくんは居ないのかな。



「ジュリエッタ、誰を呼んだの? なぜ……」


「お母様、キララには、新たな国王になったランドルフくんを呼びに行ってもらったの。彼の意見も聞きたいから」


「えっ? ランドルフさんが、新たな国王? あんなに優しい子が……」


 母は、意外そうな顔をしてる。こんなに痩せ細った姿は見せたくないかもしれないけど、ランドルフくんには知っておいてもらうべきだと思う。亡き国王の葬式に出られなかった理由も、会えばわかるはず。


「うん、オルグさんだったかな? ぶよぶよなオジサンが、人化したレッドスライムに騙されてたみたい。殺されてもいい子を国王にしたらしいけど、逆に、この選択は悪くないと思うの」


「オルグには、良い噂はないわ。だけど、こんな戦時下で、ランドルフさんに国王は……」


(あれ? みんな、来ちゃった)



「ジュリちゃん、ごめん。賢い子が来るって言い出して、それならカールも来るって言って、結局ブラックも連れてきたよ」


「いいけど……ん?」


 赤い髪の女の子の様子がおかしい。ランドルフくんとお兄さんも、驚いた顔をして固まってるけど。



「おかあさま……おかあ……さまっ」


 赤い髪の女の子は、王妃の顔を見て、ぼろぼろと涙を流している。しかも、発声した!


「えっ? 私?」


 驚いた顔をする母に駆け寄り、椅子に座る彼女を、そっと抱きしめてる。


(あー! そういうことか)


 赤い髪の女の子は、王妃の膝の上に顔をうずめて、ビービー泣いてる。



「お母様、その子は、レッドスライムです。ふわしろスライムさんが、墓場から生み出したの。人化したレッドスライムの新たな王になると宣言してたけど」


「墓場?」


「赤い丘にあるスライムの墓場だよ。その付近で殺された人間の残留思念も、取り込んでる。たぶん、私のお兄様が、その子の中にいるんだよ」


「ジュリアス? 今の声は、ジュリアスなの?」


 赤い髪の女の子は、その問いかけには答えない。ただ、母にしがみついて、ひたすら泣いている。



「たぶん、ジュリアスくんだよ。ここに弟がいると教えてくれたの。その子が生まれるまでは、お母様に会いたくて、城の中を彷徨っていたんじゃないかな」


「ジュリアスも、戻って来てくれたのね」


 母は、赤い髪の女の子の頭を撫で、涙を浮かべていた。



「ランドルフくん、この子はポウロくんだよ」


 何が起こっているかわからないポウロくんは、不安そうにキョロキョロしている。白い髪の小さな女の子が、そんなポウロくんに、オバサンのサンドを食べさせようとしてるけど。


「やはり、4人目が居たんだね。白い髪だな」


「うん、白い髪が転生者の証だということは、お母様に話したよ。だけど、人々の噂は簡単には消えない。でも、ポウロくんをずっとここに置いておくわけにもいかないでしょ」


「そうか、それで俺を呼んだんだね。ジュリエッタの物質スライムの能力には、もう今さら驚かないけどさ」


「ランドルフくんに相談しようと思ったんだよ。ポウロくんの髪色は、赤くする方がいいかな?」



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