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123、城へのレッドスライムの襲撃

「な、なぜ仕切り壁が……何が……」


 ぶよぶよなオジサンが立つ壇上からは、炎は見えてないみたい。炎の中で平然と立っているのは、赤い髪の人化したスライムね。


『ジュリエッタ、反乱分子は、私を狙って来たようだ。国王や大臣も同時に潰せるチャンスだと考えたらしい』


 赤い髪の女の子は、迎撃する気みたい。だけどそんなことをしたら、スライムが人間の城を潰したと言われるだけだよ。


「賢い子さん、手出しは無用だよ。キミが考えているよりジュリちゃんは強いからね」


 キララがそう言うと、赤い髪の女の子は、ハッとした顔をしてる。



「何を話している? そうか、おまえ達が何か妙な魔物を、城に引き入れたのだな!?」


「オルグ様! こちらに降りて見てください。魔物ではない。赤い髪の人化したスライムだ。見覚えのある顔もあるんじゃないですか」


 お兄さんがそう言うと、ぶよぶよなオジサンは、横の部屋を見ようと壇上から身を乗り出している。降りる気はなさそうね。


(あっ、来た)


 赤い髪の人化したスライムが数人、壇上へワープしてきた。すると、ぶよぶよなオジサンは慌てて、横の階段を駆け降り……ようとして、転げ落ちた。


 ランドルフくんが壇上にいるのに、他の人達も慌てて移動してる。だけど、すぐに戻ってきた。ランドルフくんを連れに来たのかと思ったけど、違うみたい。その人達が逃げようとした別の部屋から、ぶわっと火魔法が放たれたためだ。



「キララ、ランドルフくんを保護して」


「わかった」


 キララが返事をして消えた直後、驚いた顔をしているランドルフくんと手を繋いだキララが戻ってきた。


「ジュリエッタ、あの……」


「その子は、私の物質スライムのキララだよ。ちゃんと手を繋いでいてね。キララと手を繋いでいれば、攻撃は当たらないよ」


「えっ? 人に見えるのに物質スライム?」


「ボクは、ジュリちゃんを守る物質スライムだよ。こっちの魔導ローブを身につけてる子が、ネイル。ネイルはボクの弟なんだ」


「物質スライムの弟?」


 ランドルフくんは、理解が追いつかないみたい。だけど、今は説明している余裕はないよね。




「赤の王国の国王! この城は、我々が支配することに決めた。そこにいる赤い髪のスライムは、我々の長を呪いで石像に変え、赤い丘から我々を追い出したからな!」


(乗っ取るつもり?)


 赤い髪の女の子の方を見ると、イラついているのがわかる。だけど、黒い髪の人化したスライムは楽しそう。白い髪の小さな女の子は、状況がわからないのか、キョロキョロしてる。


 キララと手を繋いだランドルフくんは、真っ青な顔をしてる。声が出せないみたい。お兄さんは、ランドルフくんの後ろに立ち、何か声をかけてる。



「待ってくれ。あんたは確か、若い人と城によく来ていた商人だろう? 赤い丘はスライムの棲み家じゃないか」


 逃げようとオロオロしていた人のうちの一人が、壇上にいる赤い髪の人化したスライムの顔を知っているみたい。


 お兄さんは、赤い髪の人化したスライムが頻繁に城に来ていたことも、知ってたのね。でも、兵の中にいるスライム達の反応には、少し違和感を感じた。


『ジュリエッタ、ここにいるレッドスライムすべてが私に反逆心を持っているわけではない。人間のフリをして兵をしているスライムの何体かは、人間を見ているのが楽しいから城務めをしているようだ』


(そうなの? 兵も二つの勢力に分かれてるのね)


『あぁ、だが、壇上のスライムには逆らえないと考えているらしい。私は最強だと説明したが、まだ念話しか使えないのに最強なわけがないと反論された』


(賢い子は、生まれたばかりだもんね)


『だから、私の力を示すためにも……』


「ダメだよ! ジュリちゃんが生まれた場所が燃えちゃうでしょ!」


 キララが会話に割って入った。突然、大きな声を出したから、壇上にまで聞こえたみたい。赤い髪の人化したスライム達が、一斉に私達の方を見た。



「何がダメだって? 赤い髪のスライムと一緒にいるおまえは人間か? 白い髪のバケモノ以外の人間は、我々に傷ひとつ付けられないぞ。我々は、ただのレッドスライムではないからな」


(何を言ってるの?)


 キララの方を振り返ってみると、ニッと笑ってる。私の髪色は、今、赤いから、私のことがわからないってことかも。


 私の顔をやたらと見てるけど、もしかして、私と賢い子の見分けも、できないのかも。誰かが私達へのサーチ妨害をしてるのかな。




「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺はオルグだ。レッドスライムは、我々に友好的ではないか。なぜ、人間の城を欲しがるのだ」


 ぶよぶよなオジサンが、やっと口を開いた。人間が名乗らないと、スライムには見分けができないことが確定ね。


「オルグか。我々は、この城を起点にして大陸全体を支配下に置くことにした。おまえもそれに同意していたではないか」


「いや、それは、赤の王国の軍隊に力を貸してくれるという話だっただろう? スライムが城を欲しがるのは、おかしいではないか」


「は? 話を聞いていないのか。我々の棲み家であった赤い丘は、そこにいる赤い髪のスライムに占領されたからな。スライムというのもおかしいか。墓場から生まれたスライムと人間が混ざった奇妙な魔物だ」


「何を……赤い髪の少女は人間ですぞ。あっ、もう一人の方のことか」


「どっちが魔物かなんて、どうでもいい。力をつける前に潰さねばならない。人間を守ってやれと言うスライムなんて、聞いたことがない。異常個体だ!」



 ボォォッ!


 話し終わると、壇上の赤い髪の人化したスライムは、私達の方に不思議な炎を飛ばしてきた。キングシルバーの盾があるから、当然、その炎は届かない。


(あれ? 消えた)


 炎が当たった透明な盾が、蒸発するようにシューッと音を立てて消えた。さっきからずっとネイルが出していたから、弱くなってたのかな。



「ジュリさん、壇上のスライムは、改造スライムです」


「えっ? 改造スライムって、グリーンスライムだよね?」


「人間が作り出したのは、グリーンスライムの改造スライムですが、賢い子さんが、赤い丘にいた改造スライムを弱体化させたので、奴らが吸収したようです」


 ネイルがそう分析すると、赤い髪の女の子は、さらにイラついたように見える。そっか、すべて利用されたんだ。だから彼女は、力を示したいんだね。



「わかった。じゃあ、私が迎撃すればいいね。あのスライム達は、人間の顔の見分けができないもん」



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