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18. さよならバースデー5

 



 姿を現した悪魔は倒れるスミスを見て、心の底から歓喜する。



「フフフフこの我としたことが、一瞬とはいえ人間に気圧(けお)されるとは。やはり我の目に狂いはなかった、なんとしても貴様らの魂は回収させてもらうぞ。幸い一番厄介な敵はもういない」


「ルル姉さん。アホがなんか言ってますよ」


「そうねルト。殴られ過ぎて頭がおかしくなったの。私たちで殺してあげて、現実を教えてあげましょう」


「ほざけ、愚か者ども。付与魔術などたかが知れてるわ。触手の攻撃も、タイミングさえ計れば対処は容易い。貴様らが我と対等に渡り合えていたのは、あの赤髪の小僧の純粋なパワーがあってこそ。時間さえあれば、我の手数で圧倒よ。このようにな!!」



 魔方陣を用いた魔法。単発で方向性がバラバラだった上級魔法を複数、しかも全て同じ方向に合わせて、撃つことによって威力は倍々で大きくなる。


 一つ一つは小さな稲妻でも、合わさることで巨大な龍の形をした黒い稲妻として、二人を襲う。



「来ると分かっていて、止められないわけないでしょ。やはり阿呆ね、空間遮断」



 手を前に出して、目の前の空間をねじ曲げるとこで攻撃を無効化するルル。前までこんなことできてなかったのに、六日間という短時間でここまで成長するなんて。

 火竜との戦いで薄々感じていたけど、僕の幼馴染みは強さの階段を無視してロッククライミング始めたようだ。僕の物差しでは到底測ることができない所まで、登り詰めた。


 焦ることなく第二波を放とうとした瞬間、全身を青く光らせるルトが蹴りで悪魔の上半身を消し飛ばす。発動準備中だった魔方陣は風圧で粉々に破壊される。



「エンチャント・魔法反射並びに魔法耐性強化。ブースト×3」


「異次元魔法・マジックボックス常備展開。血液へマナポーション接続完了。これからは散財覚悟の大勝負、アクセル全開フルスロットルで行くよルト!!」


「うん、お姉ちゃん」



 ルルが手を開くとエンチャントとスミスの合作。使い捨て武器――アホな子シリーズ爆殺武器(ミナゴロシ)が手に握られる。

 ルトは魔方陣を使わずに一瞬で悪魔の後ろに転移して、一撃を加える。武器がひび割れ、周囲を巻き込む破壊。


 瞬時に別の場所で復活する悪魔。


 黒い球体、恐らく複合魔法だろうを数十展開する。得意な魔法らしく他の魔法と比べて魔力を練って数を揃えるまでの時間が恐ろしく短い。

 その分、魔力の消費は激しいようだ。これを何度も使わせることができたら、魔力切れをおこせるかもしれないが、そう簡単にはいってくれない。


 あの黒い球体の弾幕を張られたら、ルルの転移魔法を使っても簡単に近づくことができない。それに彼女が扱える魔法は、強力な分魔力の消費が激しい。

 今はマナポーションで魔力の消費を誤魔化しているが、そうポンポンと使っていたらすぐにマナポーションの在庫が切れる。


 そんなルルの代わりにルトが前線に立つ。スミスと同様にパーティーの前線を担う彼女は、自分に刻み込んだ付与魔術刻印に魔力を流すことで、その恩恵を受ける。


 放たれた矢の如く、悪魔に向かっていく少女。襲いかかる黒い球体の一つを掴んで悪魔に投げつけて体を消滅させる。


 ルルとルトの二人がかりで悪魔に攻撃を加える。

 何度でも復活を繰り返す悪魔に流石の二人も疲れが見える。ポーションを用いても傷や魔力を誤魔化しても、体力精神力はじわじわと削られる。


 二人の足が止まる。追撃はない。

 復活した悪魔は勝ち誇ったように高笑いする。



「フフフフ甘い甘い甘い!! 我に消耗戦を挑むとはまさに愚の骨頂。気に入ったぞ、愚か者ども。その無謀に敬意を称して、楽に殺してやる」


「やっぱりこいつ阿呆だわ、ルト」


「そうだねルル姉さん。救い用のない馬鹿です」


「ふんっ、負け惜しみか。怯えて戦いもしない錬金術師の小僧と太った男に何ができる。貴様らの負けは我と敵対した、その瞬間に確定しているのだ」


「それはどうかな」



 地面に手をつけたアルケミーが声をあげる。



「どうするというのだ。我を殺すか、それとも契約者を殺すか?もし契約者を殺しても朝が来るまで我は消えることはない。その間に貴様らを殺して、魂を回収すればいいだけの話。詰みなのだよ貴様らは」


「グラトンさんがいる限り、僕たちに負けはないです。あの人は不可能を可能にする、僕らのヒーローですから。助けを求める人がいる限り、あの人は負けることはない。僕らはその手伝いをしているだけです」



 アルケミーと目が合う。彼は誇らしげに笑って頷く。



「あなたの敗因は自分の力を過信しすぎたことだ。接続錬成・存在の核の可視化。元々あった結界に細工をしました、今のお前は裸同然だ」



 アルケミーの言葉通りに、悪魔の黒い体に核のようなモノが見える。

 あれが悪魔の核――魂だ。黒い体の中にあるというのに、なお黒い禍々しい漆黒の魂。



「無意味なことを。魂に触れられるのは神か、我々悪魔だけだというのに」











 僕は手を合わせる。これは習慣である。

 いついかなる時でも、感謝を伝える心を忘れてはいけない。これは一種の儀式なのだ。命を頂くという神聖な行為に対する答えである。



「いただきます!!」



 命を頂く、その行為に善も悪もない。あるのは食べる者と食べられる者という区別だけ。

 僕は食べる。生きるために食べる、そして食べるために生きる。食べるということを恥じることはい。僕はそれを再認識できた。


 一人よりも二人、二人よりも三人。みんなで食べる食事は、どんな高級食材も勝ることない最高の調味料なのだ。


 だから、僕は戦う。一人で無理なら、仲間に頼る。

 一人で抱え込まない。だってそうだろ、僕には最高の仲間がいるのだから。恐れる必要はない。僕はもう迷わない。



 力が溢れてくる。

 脂肪が燃えているのを感じる。生命エネルギーが体を循環する。僕が今まで奪ってきた命の重さ、それが今僕を作り上げ生きる力を与えてくれる。


 だから僕は感謝する。

 ありがとうと、これからもよろしくねと。君たちから頂いた命の重さを背負いながら生きる。


 僕は大きく口を開け、悪魔の体にかぶりつく。



「うん、不味い。ゲスの味がする!!」


「な、なんだお前は!! 我が食べられているだと!!」


「邪魔はさせないわ」



 抵抗する悪魔に馬乗りしながら、僕は食事を続ける。魔法は凄いが、力は貧弱だ。

 魔法による攻撃はルルとルトが対処してくれている。僕はただ目の前にある食材を食うだけ。



「ふざけるなぁ!! 我が死ぬはずない。我は悪魔なのだぞ。こんなことが許されるか!! こんなデブに喰われて死ぬなどあっていいはずがない!! わ、我から離れろ。頼む、我はまだ死ぬわけにはいかんのだ」


「大丈夫。ちゃんと全部食べるから。無駄にはしない」


「や、ややめろ。それは我のモノだ。嫌だイヤだいやだイ――」



 核を歯で砕く。命の味だ。色んなモノが混ざりあっている。

 この悪魔が今まで集めてきた魂たちだ。ずっと囚われていたのだろう。感情が流れ込む。

 それは悲しみであり、救いも終わりもないことへの恐怖だった。



「ごちそうさまでした」



 僕は両手を合わせる。




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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、食べて何とかした! 脂肪燃焼パワーでなんとかするのかと。 何でも食べれる、の何でもが規格外すぎるぜ
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