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14. さよならバースデー(メルシー視点)

 




 メルシーには大切なともだちがいる。

 名前をエメルっていう。メルシーの名前はエメルがつけてくれた。エメルとは、よく一緒に大人に悪戯をして回っていた。


 エメルは一人親で、お母さんと一緒に暮らしてた。

 エメルのお母さんは優しい人で、村の人から好かれていた。それはエメルも同じで、困っている人がいたら助けずにはいられないお人好しだった。

 メルシーはそんなエメルが大好きだった。


 そんな幸せな時間は突如終わりを迎えた。

 7月7日、エメルの12歳の誕生日を祝う日。彼女は呪いを背負うことになる、魔女という呪いに。


 その日からエメルは心の底から笑わなくなった。

 メルシーがいるときは、笑顔を見せようと努力するがメルシーには分かってしまう。エメルがとても悲しんでいることを。











 この世界にはソウルスキルと呼ばれる、特別なスキルがある。人間は12歳の時に、モンスターは生まれた時から与えられるスキル。


 私の場合は『悟り』相手の心の声が聞こえる能力だった。


 考えていること感じてること、その思考に至るまでの経緯から無意識の領域まで、ありとあらゆる情報を得ることができるとても便利なスキル。そう言われた。

 だけど、メルシーはこんな能力欲しくなかった。


 妖精は悪戯好きな生き物だ。その中でも、ピクシーと呼ばれる種族はその傾向が強い。特に反応を返してくれる知能の高い生き物、その中でも人間に悪戯するのが好みだった。


 私の心の声を聞く能力は、もちろん悪戯した相手の心の内を見ることができる。本音だ。

 大体の人はどんなに取り繕っても、心の中ではメルシーのことを嫌っている若しくは馬鹿にしていた。それがとても苦しくて、悲しかった。


 メルシーたちは別に嫌われるために、悪戯をしているわけじゃない。楽しいからしているのだ。なのに、悪戯をされる相手はそれを楽しんでくれない。

 それどころか、メルシー達のことを利用しようとする輩も少なからず存在する。


 世界は悪で満ちていた。

 それがこの能力を持っていたら、否応なしに理解できる。


 この世界は愛と優しさではできていない。それを知ったとき、メルシーは怖くなって逃げ出した。誰もいない場所、心の声が聞こえない場所を目指した。



 そうして辿り着いた泉で出会ったのが、エメルだった。

 彼女はとても自分の心に正直だった。好きなものは好き、嫌いなものは嫌いとハッキリと言うタイプでメルシーの周りに居なかったタイプだった。

 それが何処か新鮮でもっと一緒に居たいと思えた。


 会ったその日にエメルとメルシーは契約を結んでいた。メルシーはエメルの契約妖精となった。


 契約妖精になったメルシーはどんなに離れていても、エメルと心の中で会話することができる。テレパシーだ。

 それでも会いたくなって、メルシーはエメルの家に住むこととなった。










 エメルの母親であるエマは、心の綺麗な大人だった。こどもの様な無邪気さと母親としての深い愛情で、エメルを優しく導いていた。

 こどもの頃のエメルは魔法の才能があった。きっと将来は凄い魔法使いになると村の大人は期待した。みんなが彼女の成長を楽しみに見守っていた。


 12歳の誕生日。人間のこどもはその時になって、初めてソウルスキルを得ることができる。


 7月7日、0時を時計が指したときそれが現れた。

 黒く形が定まらない影のような、そこにいるかどうかわからない不確かな存在。そう、悪魔である。


 彼女のソウルスキルは『魔女』という、罪のスキルだった。











 悪魔は願いと引き換えに契約者の魂を奪う。

 魔女とは悪魔と契約した、自分の欲望のために世界の裏切り者である。それを12歳にという若さで、しかも自分の意思とは関係なく魂に刻まれた少女。


 メルシーはその悲痛の叫びを聞くことしかできなかった。

 何もできなかったのだ。心の声を聞こえる能力を持ってしても、メルシーはその傷を癒すことも、痛みを分かち合うこともできなかった。


 妖精には導きと幸運を与える力があると、信じられている。

 本当にそんな力があるのかはメルシーにはわからないけど、例えエメルが地獄の道を進むというのならば、メルシーは一緒に隣を歩いていくと決めた。


 もう決して、一人にはしないと決めたのだ。




 でも、もし本当にメルシーに導きと幸運を与える力があるというのなら、この絶望だらけの暗闇に希望という光を照らしてください。


 |この世界は愛と優しさでできているのだと、ヒーローはいるのだと証明してください《エメルを助けて》。


 新しくできたともだちに送る、最後の言葉です。





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