↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~  作者: 鹿角フェフ
かくて遊戯は終わりを告げる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
179/181

第百六十八話 綻び

 繰り返される時間。誰にも認識されることのない時の中にあって、それは小さな違和感だった。


「さぁ会議を始めよう……あれ?」


 何かを思い出したかのように不意に拓斗が小声を漏らし、訝しげな表情を見せる。

 違和感だ。何か得体のしれない違和感が拓斗を襲った。今までなら……、もしかしたら気の所為だと振り払っていたかもしれないそれは、この時この場所においては拓斗を引き止めることに成功した。


「ごめん、ちょっとストップ」


 視線が、一つに集中する。

 向かう先は当然イラ=タクトだ。同盟の盟主たる者がこの場に及んで中断を宣言した。

 軽い口調とは裏腹に、その意味は大きい。

 沈黙の後、困惑、そして動揺。周りが密かに、だが確実にざわめいていく。

 それは従者たるアトゥも同じだった。今まさに世界の命運をかけた戦いについて意見のすり合わせを行おうとしていたのだ。懸念や漏れがあったとしても、突然中断するにはあまりにもタイミングが悪い。

 小さな不信はやがて大きな亀裂となって自分たちに襲いかかる。人心掌握に明るいというわけでもないアトゥですら、そのことはなんとなく理解できている。

 いわんや拓斗がそのことについて理解していないはずはない。


 であれば……。


(一体どのようなご懸念があったというのですか、拓斗様……)


 心の中で主を気遣う。

 口には出さない。この場に参列するのはマイノグーラの配下だけではないのだ。

 口に出してしまえば、それすなわち動揺や困惑を伝えてしまうことになる。

 だからアトゥは口を閉ざし、静かに自らの王が発する言葉を待った。

 同様に、マイノグーラ側の参列者であるモルタール老やギアなども口を閉ざしている。

 彼らの判断は共通していた。どちらにしろこの状況を解決できる手段を持ち合わせているのは拓斗だけという点だ。


 だが……その当の本人が沈黙を貫いている。

「…………」


 拓斗は黙考したままだ。いや、アトゥなどはその表情から彼が深く考え込んでおり、何やら難解な問題に直面しているであろうことを推測できた。

 だが分かるのはここまでだった。

 アトゥも、モルタール老も、ギアも、当然ながらその他の参加者も。この偉大なる破滅の王が何に悩み、何を懸念して会議を中断したのか、一向に理解できていなかった。

 次第にざわめきと困惑が大きくなっていき、居心地が悪そうに身動ぎする者まで現れる。

 皆の困惑が最大限になり、限界に達した誰かがことの真意を問いただそうと口を開けかけた瞬間――。


「何か問題が起こっている気がする」


 そんな、根拠の全く存在しない、おおよそ荒唐無稽な主張が、固く結ばれていた口から紡がれた……。


 ………

 ……

 …


「そう、君もそう判断するか……」


 軽く手を振りながら、拓斗は声をかけた人物へ下がるよう促す。

 先ほどまで意見を求められていた人物こそ、幸福なる舌禍ヴィットーリオ。

 マイノグーラが誇る英雄で、アトゥとは違い智謀と策略を得意とする搦手の道化師だ。

 その彼をもってしても答えは否。

 拓斗が考える懸念など存在せず、自らが秘す策謀にその様な要素は無しとの答えである。


「ヴィットーリオはこと悪知恵に関してならマイノグーラの誰よりも、いや、この世界の誰よりも優れているといえる……」


 続きの言葉は出ずともその場にいる皆は分かった。

 唯一ヴィットーリオだけが興味深げに、そして楽しげに拓斗を見ていたが、その心中を理解することのできるものはこの場にはいない。


「違和感があるんだ。なにか良くない問題だ。致命的な何かを見落としていて、その失態をカバーできるのはこのタイミングをおいて他には無い」


 ぐるりと、拓斗はその場の参加者全員の顔を確認するように大きく視線を動かした。

 彼の想像通り、その表情はどれもこれも困惑と混乱が色濃く浮かんでいる。

 今までの拓斗であればこの様な視線を向けられてはコミュ障の気質が強く出て大きく慌てていただろうが、今はそれどころではない。

 この場に至るまでの様々な経験が、彼のメンタルに強く影響していることは明らかだった。


「皆、何か意見はあるかな? 荒唐無稽な主張な気もするけど、何でもいいから思いついた事を出して欲しいんだ」


 故に、厚顔無恥とも言える要望をこの場でぶちまける。

 本来であればこの様な具体性の無い提案など愚の骨頂。一般の会議ですら進行に影響をきたす可能性がある。いわんやこの場はこの大陸の運命を決める重要な場だ。


 だが拓斗は引かなかった。

 決して見逃してはいけない。そのことはよく覚えている。

 ほとんど直感のようなものだ。理屈ではない部分が、拓斗に強く訴えかけてきている。


「なるほど、ねぇ……よくわかんねぇが。とりあえず大将が納得すればいいんだよな?」


 幸いだったのは、彼のこの行動に対して真っ向から非難し否定するような愚か者は誰一人として存在しなかったことだろう。

 自分の問いに拓斗が頷いたことを確認した繰腹は、一度だけ強く目をつむり、やがて大きなため息とともに左手を虚空にかざした。


「うーん、これあんま使いたくねぇけどなぁ……」


「《幸運》《幸運》《幸運》《奇跡》《奇跡》《奇跡》――」


「――《直感》」


 自らに課したルーチンとでも言わんばかりにパチリパチリと何度も指を鳴らし、静かに目を閉じ何らかの事象に集中する。

 繰腹の能力がストック制であることは、すでにこの場にいる重要人物達も把握している。

 無論回復するにはそれ相応の時間とコストが必要だし、この力は来たるべき決戦の時に使うため一回たりとも無駄にはできない。

 それをここまで大盤振る舞いしたことに彼に従う二人の聖女は心の中で顔を顰める。だが反対に勇者である優など一部の者はその決断力に感心していた。


 やがて繰腹は何かを考えるよう大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐いた。

 そして、真正面に拓斗を見据える。


「何もねぇ。少なくとも、俺が知ったり理解できたりする範囲では問題はねぇはずだ。答えは出たなイラ=タクト」


 拓斗はその言葉に軽く首を振り、気持ちを切り替える。

 繰腹の能力が強力であることは彼も知っているところだ。GMの能力が剥奪されたとてその脅威に衰えは無い。

 であればこそ、この違和感の正体が気の所為であるという判断の根拠として十分。

 むしろここまでやってもらって意見を覆したところで、何も答えは見つからないだろう。

 そのように判断して謝罪の言葉を口にする拓斗。


「そうか、わざわざ済まなかったね繰腹く――」


「――ちげぇよ全く逆だ。何かある」


 だが、返ってきた言葉は拓斗にとって予想外のものだった。


「全く逆? どういうことだい?」


 思わずオウム返しで聞き返す。

 それほどまでに繰腹の言葉は奇妙であったし、理解に苦しむものだった。

 繰腹自身もその発言だけでは誰にも通じないことを理解していたのだろう。

 不敵な笑みを浮かべ、だがどこか自信に満ちた様子でゆっくりとその真意を語り始める。


「まぁ確かに俺の技能では何もでなかった。ここまで重ねて何もなしだったら、普通なら無視していい話だ。――だがなイラ=タクト。わざわざお前が会議を止めるまでの事だったんだろ? それで気の所為はちょっとおかしいぜ。勘違いより見過ごしの方が納得がいく」


 ストンと納得したのは、むしろ拓斗以外の面々だったのかもしれない。

 それほどまでにこの状況は想定外の連続だった。そもそも、イラ=タクトという存在がここまで判断に窮することなど普段から側に侍るアトゥですら見たことがない。

 であればこれを無視するよりも、異常と捉える方があまりにも自然であった。

 繰腹は皆の視線が注目していることに気を良くしたのか、饒舌に続きを語る。


「さっきやった《直感》だが、あくまで推測やひらめきの強力なやつで、真実を知ることじゃねぇ。とは言え、ぶっちゃけチートじみた情報まで降りてくるからほぼほぼ正解を言い当てる。特に今回みたいに《幸運》や《奇跡》を重ねた場合はだ」


 拓斗も、そして参加している全ての者は繰腹の言葉を静かに聞いていた。

 多くの者は少しでも会議の流れを把握するために、そして一部の者はその言葉から少しでも真実へのヒントを得ようと。

 やがて繰腹は言葉に詰まったのか、うーんと一言唸るとピッと人差し指を拓斗に向け「ごちゃごちゃ言ったがつまりはだ……」と切り出しその真意を語る。


 すなわち、

「お前がここまで勘違いするなんてありえねぇよ」と。


「…………そうか、ありがとう繰腹くん」


 繰腹の「どういたしまして」という少し気恥ずかしさの籠った小さな返事を聞き流しながら、拓斗は再度思考の海に沈む。

 彼の言葉で方向性は見えた。懸念が存在するかどうかの確認から、存在することを前提とした調査へと。


(だが僕が見逃していることがあるか? ここまで準備に準備を、検討に検討を重ねてきたはずだ。漏れはない……いや、繰腹くんの言葉と能力行使の結果を見るに、もっと別のアプローチが必要なのかな?)


 拓斗の中で急速に理論と推測が組み上がっていく。

 通常の懸念ではない。繰腹のダイスは万能ではないことは今しがた彼が説明したとおりだ。となると原因は拓斗の内面、もしくはシステムが干渉しづらい場所にある。


(本当に情報は全部あらったのか? もう一度精査が必要か? ……やるとしてもシステムの情報を参照できるような仕組みが必要だ。そんな都合の良いことが……)


 拓斗は伏せ気味だった顔を勢いよく上げ、思わず手をパンと叩く。


「あった。エタペディアだ」


 静かに、だがはっきりと。

 その意味を理解できたものはほんのごくわずか。だがその場にいる全員が、盟主が言う奇妙な違和感とやらを解決する糸口が見えたことを確信する。


 エタペディア。

 それは拓斗の脳内に存在するエターナルネイションズの設定を確認するゲーム用語辞典だ。

 それはゲームにおける様々な事象が記録され、能力の詳細や戦闘力の数値まで確認することができる。

 また一部はショートノベル形式になっており、キャラクターや世界観を知る一助となったりもする。これらはファン必見でありエターナルネイションズを象徴するシステムとも言えた。

 そして重要なことは、この世界に来てからエタペディアは微妙にアップデートされているという事実だ。

 ゲームとは違って現実世界となったこの世界において、エターナルネイションズの設定をそのまま当てはめるには不都合が多い。そのため一部の要素は変更されていたのだが、合わせてエタペディアの記述も変わっていたのだ。

 拓斗はこのことをようやく思い出した。


 同時に、比較的世界の外側からシステムを認識できるこの機能を利用することを思いついたのだ。


(とんだ見落としだね。エタペディアの内容は基本的にほとんど丸暗記していたし、変更点も細かい部分だったから実際の国家運営を通して確認することに重きを置きすぎていた。あげくその存在もすっかり忘れていたとは……)


 答えもまだ出ていないが、拓斗は喉の奥に刺さった小骨が取れたような、僅かな爽快感を覚えつつ、早速エタペディアの精査に入る。

 もっともその量は膨大だ。これから時間がかかるやもしれぬので一旦会議は中断したほうが良いかもしれない。

 そんなことを感じながら、拓斗は久方ぶりのエタペディアをつらつらと眺める。


 だが、中断の必要はなかった。

 数秒を置いて、ダンッ! と勢いよく机が叩かれる。同時にギリィッと歯ぎしりの音が拓斗の口から漏れた。

 その膂力で机が破壊されなかったのはどこか冷静な部分が彼に存在していたからだ。

 だが周りの者はそうではない。ぎょっとした様子で拓斗に視線を向ける。


「た、拓斗さま、一体どうされたのですか!?」


 思わずアトゥが声をかけ、その言葉で冷静になった拓斗が静かに謝罪の言葉を参加者に述べる。

 だがこの場にいる者が聞きたいのはそんな言葉ではなかった。

 同時に、拓斗ももったいぶるつもりは無いらしい。むしろ聞いてくれとばかりに口を開く。


「やられた。ずいぶん巧妙で、調子に乗ったずるいチート行為だよ。繰腹くんのGMに負けずとも劣らないね」


「お、俺っ!?」


 突然話を振られた繰腹が、あたふたと慌てだす。

 だが一部のものは繰腹の姿よりも、その言葉の意味に戦慄していた。

 それは今まで頑なに沈黙を守り、拓斗の思考を尊重していたRPG勢力の優も同じだった。


「それは気になるなぁ。本当ならマズイ事態だけど、いい加減答えが欲しいぜ王さま。一体敵は何をやってきたんだ?」


 拓斗は静かに頷き、どのように説明するのが一番かと一瞬だけ思考を巡らせる。

 そしてやはり口で説明するよりも、実際の状況を確認させたほうが良いだろうと結論づける。


「単純に言えばイカサマさ、優。RPGのシステムでwikiは確認できる?」


 こちらはエタペディアで確認できた。

 ならば彼らのシステムにもその片鱗は記録されているだろう。その様な判断だ。

 しかし優の態度は少々微妙なものだった。


「あ~、wikiか~。システムの確認……ね、ちょっとなんていうか」


 珍しく言い淀む優に眉を顰める。

 何か事情があるというのか? お互い隠し事をしていることが前提ではあるが、この場で持ち出すのは少々場違いな気もする。

 だが拓斗が次の言葉を紡ぐ前に、優のすぐ隣から助け舟が出された。


「申し訳ございません。wikiは有志が作った外部サイトなので、ご主人様は確認できないんです……」

「そ、そうそう! そうなんだよ! いやぁ、説明まで頼んじゃって悪いなアイ!」

「大丈夫ですよご主人様っ! それで……wikiに何が?」


 ずいぶんと余裕のない主従だと拓斗はその隙を見逃さなかったが、とは言えそんなことに構っている場合でもない。

 すぐさまブレイブクエスタスをプレイしていた記憶を思い出した拓斗は、優ではなくアイに向かって代案を告げる。


「ではプレイ時間はどうかな? wikiは外部だけど、これなら設定なりなんなりからアクセスできるんじゃないかな? ちなみに総プレイ時間だ」


「それなら可能ですが……」


 アイの視線が虚空をさまよう。

 なぜか微妙にソワソワしている優と、同じく未だにソワソワしている繰腹を尻目に拓斗はアイの言葉を待つ。


「――ああ、そういう事。そういう事するんだ」


 やがて、今までの彼女からは到底想像できない、底冷えのするような怒りの籠った声が漏れ出る。

 ギリィと拳が握られ、その怒気はまるで辺りを燃やし尽くさんばかりだ。

 拓斗としてはある程度予想された結果だったが、一部の者達はその変容っぷりに驚愕している。もしくは怯えているのかもしれない。


「あの、あの、アイさん? えっと、ど、どういうこと?」


 優がどもりながらも、この状況でアイに突っ込んでいく。

 その姿を見た繰腹が「勇者だ……」と呟いて聖女に叱責を受けていたが、拓斗としては話が早い為ありがたい限りだ。


「……プレイ時間が実際のものよりも多いんです。十数年分、時間の差異がある……あります」


 誰かが息を呑む音が聞こえた。

 沈黙がやけに耳に痛い。その言葉が意味するところを理解できたものは、その事実を受け止めるのに必死だ。


「え、全然意味わかんねぇんだけど。まぁいいや、《理解》」


 繰腹があっさりと出し惜しみすべき手札を切ると、瞬時にして顔を青ざめさせる。


「マジかよ……つまり、やり直しってこと?」


 拓斗は静かに頷いた。


 セーブ&ロード。

 アドベンチャーゲームであれば、いや古今東西を問わずデジタルゲームと呼ばれるものにはたいてい実装されている基本機能だ。

 だがことアドベンチャーゲームはその関連性が強い。

 特に選択肢で物語の結末が変わるゲームでは選択肢の前にセーブ、失敗すればロードといった行動がプレイヤーの基本動作として備わっている。

 その性質をそのまま持ってきたとしたら?

 ヴァギアたちサキュバス陣営がセーブ&ロードを多用していたとしたら?

 在る時点でセーブし、戦いに失敗すればロードし過去に戻る。

 そうして得た情報や教訓をアドバンテージとして次の戦いに挑んでいたとしたら?

 勝てるまでやれば勝つ。そんな当たり前のことを当たり前のように押し付けてきたとしたら?

 そして同時に、自分たちがもぎ取った数多の勝利が、たった一つのロードという機能で全て無に帰していたとしたら?


「あの……売女どもがぁっ! 優くんを誘惑するだけじゃ飽き足らず、アタシの人生すら邪魔しようってのかぁ!?」


 抑えきれなかった怒気が魔力となって周囲に溢れ出す。

 今まで見たこと無いそれは、だがその怒りとは裏腹にどこまでも清く澄んでいる。

 まるで彼女こそが…………であると言わんばかりの力だった。

 優すら止められず慌てふためくしか無いこの状況で、拓斗は構わずアイに問う。


「隠さなくていいのかい? 素がでちゃってるよ? 情報もね」


 ピクリとアイが止まる。ギロリと拓斗を睨むが、どこか理性の光が見える辺りどうすべきか計算しているのだろう。人間的に好ましいタイプだと拓斗は思った。

 いつもならここでイニシアチブをとって、引き出せるだけ譲歩を引き出すのだが、横で優が必死に頭を下げているので黙っている。

 拓斗としても一番の問題は彼らではなく、セーブ&ロードの方だ。

 そちらに関して解決することが何よりも先決だった。


「失礼しました。少し……動揺してましたので」

「ああ、気にしないで。そういうこともある」


 静かに座り、そのまま黙りこくるアイ。

 優が小声で必死にフォローしているのを横目に、拓斗は思考の海に潜る。


(しかしだ……困ったことになった)


 拓斗が憂いげにため息を吐き思考を巡らせる。

 どう対処したものか。おそらくほとんどの能力はばれているだろう。

 セーブとロードのタイミング的にはどの辺りだろうか? 少なくとも大戦争前だな。だが大儀式の前ということはないだろう。であればもっと早い段階で詰んでいる。


(こちらの戦法は全てバレていると思ったほうがいいね。今が何回目かわからないけど、エタペディアの記載やブレイブクエスタスの時間を見る限り相当繰り返しているようだ)


 拓斗は考える。何か無いかと。相手の予想を裏切るような。分かっていてもどうしようもないような。

 自分たちがこの事実に気が付かなければ思いつかないような、そして相手にとって取り返しのつかないような……。

 そんな、法外で、めちゃくちゃな作戦が。


「あっ、そうだ!」


 素っ頓狂な声を上げ、拓斗がぽんと手を叩く。

 その姿があまりにもいつも通りだったので、先程までの重苦しい空気がなかったかのように一同は虚をつかれ、ぽかんとしてしまう。


 ある意味で注目が集まったとも言える状況のなか、拓斗が視線を向けるのは引き続きアイ、そして優だった。


「そういえば、君たちの陣営って強制イベントの押しつけが出来たよね?」


 突然の質問に驚く二人。だが理由はわからずとも、何か重要な意味があるのだろうとごく自然に応える。


「あ、ああ。俺たちっていうより実際には魔王軍とかの能力だけどな」


「正確には人に理不尽を押しつける能力です。ブレイブクエスタスというゲームの枠内で強制される逃れられぬ事象なら、強制的かつ限定的にイベントとして押しつけることができます。けど、知られてしまえば発動条件そのものを回避されますよ?」


「なるほど。ちょっと詳しく教えてくれる? 奥の手かもしれないけど、緊急事態ということで」


「まぁ……、仕方ありませんね」


 アイが情報開示に関して優の確認を取らずに了承したことを頭の隅に入れつつ、拓斗はより詳しい発動条件を聞いていく。無論ここに他意はない。後でどうなるかはわからないが……。

 もっとも、この場ではあまり関係ないことだった。

 そのようなことが些事とも思えるほどに冴えた作戦が浮かんだからだ。


「じゃあ例えば、これはできるかな?」


 拓斗は不敵な笑みを浮かべ問う。


「それ……マジで言ってます?」


 珍しく、アイが心底驚いた表情を見せる。

 その内容は、おおよそ凡人には思いつかぬ、理不尽でどうしようもないものであった。


=Eterpedia============

【連鎖イベント】終末の訪れ:大戦争


 大戦争は正統大陸と暗黒大陸を二分する大陸規模の戦争を指します。

 この期間中、別のイベントシナリオは発生せず、全勢力は戦争の勝利に注力することとなります。

 また、これは一連の大規模イベント「終末の訪れ」の一つとして存在しており、このイベントをトリガーとして複数のイベントが発生します。

=Message=============

〈!〉エラー番号1ad(システムへの干渉が見つかりました)


〈!〉時系列に意図的な繰り返しが発生しています

〈!〉システムによる特定勢力への過度な加担が見られます

〈!〉大戦争におけるゲームバランスが【致命的】レベルです


 ――気づくのが遅かったね。少しヒヤヒヤしたよ

―――――――――――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
オートセーブの強制、やり直し不可イベントとか強制イベント系はいくらでもあるしね
Eterpediaさん?!
セーブデータをロードするならセーブデータを壊すようなバグか矛盾をセーブデータにぶつけてロードできないようにすればいいんじゃないか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。