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模倣

 城の脱出路の地下道を抜けると城下の東にある教会に出た。教会の裏口から外へ出ると目の前にサンドガーデンから出られる小さな扉が隠されていた。

 その扉から外へ出て、まっすぐ東へと進むと砂漠から岩肌の露出した山岳へと行きついた。

 そこにはいつもの認識阻害の迷彩魔法が掛けられ洞窟の避難所が隠されていた。

 避難所には城のおもだった高い地位のもの、兵士、魔法士と城下の住民の一部が避難していた。

 避難所へ着くとセイラたちは簡易的に設置された診療所へと向かった。

 冬華たちも特に知り合いもいないため、後に続いて行った。王族か軍幹部に取り次いでもらうにもセイラにお願いする方が早そうだと思ったからだ。

 診療所には怪我人が多くいたが、中にはそうでない者もいた。

 セイラは怪我ではない者が集まる箇所へと向かうと、他の魔法士へ城から見つけてきた書物を渡した。

「父ちゃん!」

 突如セイムの声が洞窟内に響いた。

 冬華たちは急いでセイムのもとへと向かった。

 冬華はセイムが駆け寄った人物を見て驚きの声を漏らした。

「え? この人がセイムのお父さん? 城の兵士だって言ってたよね?」

 横たわっている兵士は痩せ細って衰弱していた。とてもじゃないが兵士とは思えない体格をしていたため、冬華は困惑の表情を見せる。

 その兵士、セイムの父は苦しそうに唸っている。

「母ちゃん! 父ちゃんどうしちゃったんだよ?」

 セイムは悲愴な表情でセイラへ訊ねた。

 セイラはセイムの頭を撫でると口を開いた。

「お父さんは戻ってきた際にミイラとなった彼らに襲われたの。それで生気を吸い取られてこんな……」

「父ちゃんがあんな奴らにやられるわけないだろ!?」

 セイムは納得いかないようすで声を上げる。

 セイムの声が響き、看護をしている者たちの視線が集まる。

『何があったのか詳しく話してもらえますか?』

 シルフィはセイムを落ち着かせるように冷静に訊ねた。

 セイラは冬華たちの方へ向き直ると語り出した。

 話の内容はこうだ。

 サンドガーデンで召喚の儀を執り行ったが、なぜだか失敗した。その直後二つの報告が入った。

 一つは魔物が襲ってきたこと。そしてもう一つは封印の石碑が破壊されたこと。

 その時にはまだ結界は張られていた為、魔物が侵入してきたということはない。となれば内部の犯行と言うことになる。

 しかし召喚の儀の後ということもあり、犯人を突き止める間もなく結界は破られ魔物の侵入を許してしまった。

 何とか住民の避難、誘導の時間を稼ごうと兵たちは奮闘した。

 しかし、敵は魔物だけではなかった。

 破壊された石碑から瘴気が噴き出し、周辺にいた住民や兵士が変貌していった。彼らはミイラ化したのだ。

 兵士たちは魔物のみならず、ミイラと化した住民とも戦わなければならなかった。

 その一瞬の迷いの為判断が遅れた者たちは逃げ遅れ瘴気を浴び、変貌していった。

 セイムの父は城下に戻り住民たちが普通に歩いている様子から住民たちが無事だったと思い油断し、声を掛けた際に彼らに襲われた。

 そこを丁度偵察に来ていた兵に助けられたのだが、すでに遅くミイラ化がはじまっていた。そして、今もなお徐々にミイラ化は進行している。

 セイラは過去の同じように封印が解かれたときのことが記された文献を思い出した。その文献にならミイラ化を止める手段が記されているのではないかと考えた。そして文献を探しに城へ戻ったところで冬華たちと出会ったそうだ。

『なるほど、すべてが計算されているような流れですね』

「どういうこと?」

 冬華は納得したように頷くシルフィに訊ねた。

『召喚の儀では膨大な魔力が消費されます。それは結界にも影響が及ぶほどにです。何者かはその時を狙い石碑を破壊した。封印の石碑もまた召喚の儀に影響を及ぼすほどの封印術です。破壊することにより召喚の儀で制御されている魔力を乱し召喚を失敗させた。そして、召喚の儀で魔力を使用したため結界は弱まり、そこを突かれ結界は破られ魔物が侵入してきた』

「たしかに、タイミングさえ合わせれば石碑を破壊するだけですべてを破壊することができますね」

 サラが納得して頷く。

「でもそれって、召喚の儀をいつやるのか知ってないとできないよね。石碑の近くで待ってないといけないんだし」

 冬華が指摘する。

『そうです。だから内部の犯行の線が濃厚なのです』

 シルフィがそう告げるとセイラが口を開いた。

「あの、皆さんいろいろと詳しいようですが、一体何者なのですか?」

 普通の人が召喚の儀や封印についてここまで知っているはおかしいと感じたのだろう。セイラは警戒心を持って訊ねた。

「はい! 私はローズブルグで召喚されました!」

 冬華は手を上げて答えた。

「え!? では冬華さんは異世界人なのですか?」

 セイラは驚きの声を上げる。

「イエス!」

 冬華はブイサインを決め、相変わらず軽く答える。

「異世界人?」

 セイムは小首を傾げて冬華を見ていた。

「で、でで、では冬華さんは勇者様であらせられますか!?」

 セイラはえらく動揺したように言ったが、逆に冬華はえらくドン引きしていた。

「ええ~違いますから~それ私じゃないですから~」

『そんなに嫌がらなくてもいいでしょう。アキだったら大喜びですよ』

 シルフィはせっかく敬意をはらってくれているのだからそれに乗っかるのも手だと思っていた。

「そりゃ、お兄ちゃんだもん」

 冬華はその言葉だけで片付けた。

「アキは真面目で謙虚ですから、違ったら違うと言いますよ」

 サラは間違った認識を持っていた。

 冬華とシルフィは目線で会話をする。

(お兄ちゃんが謙虚!? んなわけあるかい!)

(ないよね~)

(サラさん城から離れてもおかしいままだね)

(もう美化し過ぎちゃって後戻りできないんじゃない?)

(それあるは~って違うでしょ!)

(やっぱり、強力な暗示にでも掛かってるのかな?)

(かもねぇ)

 二人が見つめ合ったまま動かないのを不審に思いサラは口を開いた。

「なんですか?」

「え!? なんでもないよ~ちょっと考え事してただけ~」

 と冬華は誤魔化した。そして誤魔化したことを疑われないため、セイラに訊ねた。

「でもさ、サンドガーデンってなかなか召喚の儀やんなかったじゃん。なんで今だったの?」

「それは、準備ができたから、じゃないですか? 私にはわかりかねますが、姫様なら知っているかもしれません」

「なんで姫様が? 予見士の人じゃないの?」

「いえ、姫様が我が国の予見士なのですよ」

「マジで!? 姫様スペック高すぎない? これはあれだね、きっと見た目がちょっと残念な感じなんだね」

 冬華はひがみ根性を恥ずかしげもなく表に出した。しかしセイラは姫がいかに素晴らしいかを言い含める。

「いえ、姫様はお綺麗な方ですよ。いったい何人の殿方を虜にしていることか」

「じゃ、じゃあ、性格は?」

「誰に対しても分け隔てなくお優しい方ですよ。しかし間違ていることは間違っているとハッキリ指摘する、とてもできた方です」

「じゃ、じゃあ……」

 冬華はなんとしてでも欠点を見つけようと意地になりはじめる。

『冬華、みじめになるだけですよ』

 シルフィはそんな冬華が不憫に見えた。

「はぅ!?」

 冬華は胸を押さえ肩を落した。

 シルフィは冬華の頭を撫で慰めるとセイラへ頼みごとをする。

『姫にそのことを聞きたいのですが取り次いでもらえますか?』

「ん~今の現状でよその人を取り次ぐのは難しいですね。代わりに私が聞いておきましょうか?」

『それでも構いません。お願いします』

「わかりました」

 会話が途切れたところへ、先ほどセイラが書物を渡した魔法士がやってきた。

「セイラさん、文献にミイラ化についてではないのですが封印が解かれたことは記されていました」

「なんと書かれていたのですか?」

「はい、封印が解かれるとき災厄が蘇り死神が解き放たれる、と」

 魔法士の言葉に一同は驚き、考え込みはじめる。

「死神ですか……どういうことでしょう?」

 サラは首を傾げる。

『文字通りの意味ではないでしょう。比喩的な表現をしているんでしょうね』

 シルフィが考えながら、答える。

「比喩か……死神、死を与える神? 死の力? 呪い?」

 冬華が連想ゲームのように思いついた単語を言っていく。

『呪いかどうかはわかりませんが、事実、瘴気が噴き出しそれによりここの人たちはミイラ化しているのです。死神というのは瘴気のことじゃないですか?』

「じゃあ、レイクブルグは? あそこは湖が穢れただけだったじゃん。それにモルデニアは?」

 冬華が疑問を口にした。

『レイクブルグに関してはレオニール陛下のファインプレーですね。人々に影響が出る前に麻土香に石化してもらったのが幸いしたのでしょう。モルデニアは前にも言いましたが、植物に異常が出てその植物が人を襲い苗床としました。封印によって違う形で現れるのかもしれませんね』

 シルフィは淡々と説明する。

「なるほど、麻土香ちゃんグッジョブだね。サンドガーデンは召喚ができなかったからこうなったわけか」

『そう一概には言えませんがね』

 黙って二人の話を聞いていたセイラが魔法士に訊ねる。

「それで、ミイラ化を抑える方法は?」

 魔法士は黙って首を振る。

「そんな……」

「書かれていたのは死神は召喚されし4戦士に倒されたとしか」

「それではミイラ化したものは倒すしかないと、そういうことですか……」

 セイラは震える手で夫の頬に触れる。

 セイムも父に縋るようにしている。

「(…………)」

『(…………)』

「どうしたんですか?」

 二人がこそこそ話しているのが気になりサラは訊ねた。

 冬華はニッコリ微笑むと、おもむろにダガーを抜いた。

「冬華さん!? 何をするつもりですか!」

 サラは冬華の行動に嫌なものを感じ声を上げた。

 サラの声に振り向いたセイムたちは冬華を見ると驚愕の表情を見せる。

「な、なにを!?」

 セイラは困惑の声を漏らすと夫を庇うように立つ。

「と、冬華……父ちゃんをどうするつもりだよ!」

 セイムが声を荒げる。

 父を殺そうとしているのは明白だったが、嘘であってほしいと願ったのだ。

 しかし、その願いは脆くも崩れ去る。

「どのみちこのままじゃミイラになって人を襲うよ?」

 冬華はいつものように軽く言った。

 その軽さが恐怖を駆り立てる。セイムは冬華の本性を見た気がし、背筋が凍り付いた。

「そんなことはさせません!」

 サラは剣を抜いて冬華の前に立ちふさがる。

「サラねぇちゃん!」

 セイムはサラが味方してくれることに心強さを感じた。

「サラさん、邪魔しないでよ~」

 冬華は悪い顔をして言う。

『冬華、顔が悪いですよ』

 不細工と言われた気がして冬華は顔を顰める。

 サラは冬華の顔を見てゾクリとした。

「こ、こんなことアキがいたら絶対に許しません! だから!」

 サラは気圧されないように声を上げる。

「だから邪魔するの? 何言ってんの? お兄ちゃんなら私と同じことするよ? サラさんは何もわかってないねお兄ちゃんの事。サラさんは一体お兄ちゃんの何を知ってるの?」

 冬華は冷たく言い放った。

「私は……アキの事なら何でも知っています! アキに代わってあなたたちを止めます!」

 サラは声を上げると前に出た。

「サラさんにできるかな?」

 冬華は楽しそうに言う。

『楽しそうですね』

 シルフィは呆れたように呟いた。

「ふっ!」

 サラは冬華のダガーを弾き落とそうと剣を振り下ろす。

「ダメダメそんなんじゃ!」

 冬華は軽くダガーでいなし体をずらし、サラの肩をトンと押し横に流す。

「クッ!?」

「殺す気で来ないと私は止められないよ~」

 冬華は楽しそうに言う。

 サラにはそれが戦闘狂のように見えた。

「はぁぁぁぁっ!」

 サラはそのつもりで連撃を振るった。

 しかし冬華はそのすべてをダガーで受け止め、鍔迫り合いをしながら声を掛ける。

「サラさんの力はこんなものなの? だからお兄ちゃんはサラさんを置いていったんだよ!」

「なにを!」

「サラさんは弱いんだよ! 力も、心も!」

 冬華はサラを押し退け逆袈裟で斬り上げるとサラの剣を弾き飛ばす。

 剣は洞窟の天井に突き刺さる。

「ッ!?」

 冬華は地に倒れたサラへダガーを向ける。

「邪魔しないで、こんなことしてる時間はないの」

 冬華はサラを見下ろし冷たく言い放つ。

「何事だ!」

 騒ぎを聞きつけた兵士たちが剣に手を掛け駆けつけてきた。

「その二人が主人たちを殺そうと!」

 セイラが声を上げた。

「なんだと!」

 兵士たちが剣を抜いて冬華たちへと向ける。

『はぁ、冬華がのんびりしているから増援が来たじゃないですか』

 シルフィは溜息を漏らす。

「のんびり!?」

 サラはバカにされたと思い下唇を噛みしめる。

「別にのんびりしてなかったよね?」

 冬華に反省は見られない。

「キサマら何をごちゃごちゃと、捕らえろ!」

 兵士の声が掛かると、他の兵士たちが冬華たちへと斬りかかってくる。

『はい、邪魔しないでくださいね』

 シルフィは手をクルクルと回し、風の魔法で兵士たちを縛り上げ拘束していく。

『ほら、冬華、今のうちに』

「は~い」

 冬華は軽く返事をし、サラに背を向けミイラ化が進む人たちへと向かう。

ジャキン

「なに? 邪魔する気?」

 冬華は微笑んで訊ねる。

 冬華の前にはショートソードを構えたセイムが立ちふさがった。

「信じてたのに! 冬華のこと信じてたのに! みんなを助けてくれると思ったのに!」

 セイムは感情に任せ声を張り上げた。

「だいじょぶだいじょぶ、今から助けるから」

 冬華は「やだよ、あんたは~」みたいな感じに右手をプラプラさせて言う。

「うるさい! この剣があれば俺だって!」

 セイムは剣を振り上げ、勢いよく振り下ろした。

「はぁぁぁぁ!」

ブンッ

「あ、あれ?」

ブンブンッ

 何も起こらない。

「なんで? なんで出ないんだよ!」

 セイムは本気でこのショートソードに力があると思っていたようだ。

 黙って見ていた冬華はガッカリしたように呟く。

「セイム、ありもしない力に縋っちゃダメだよ」

 冬華は一歩近づく。

「ヒッ!?」

 セイムは小さく悲鳴を上げる。

「風よ!」

 背後から風の刃が襲い掛かってくる。

 サラがセイムを守ろうと魔法を放っていた。

水の刃(ウォーターカッター)

 冬華は右手で振り払うように魔法を放つ。

 風の刃を水の刃で相殺する。

水の束縛(ウォーターバインド)

 冬華は続けざまに魔法を放ちサラを拘束した。

「クッ!?」

「もう、そこでおとなしくしててよ~」

 冬華は困ったなぁといったテンションで言った。

「うわぁぁぁぁぁ!」

「セイム!」

 余所見をする冬華へセイムが斬りかかっていく。その無謀な行動にセイラが声を上げる。

「ん?」

 冬華はダガーで受けるとセイムの手を掴み、お留守になっている足を払って転ばせる。

「うわぁぁぁっ!?」

 冬華はセイムからショートソードを取り上げる。

「お母さんは無事だったんだしこれは返してね」

 冬華は微笑んで見せる。

「ヒッ!?」

 セイムは完全に怯えていたため、その微笑みすら恐怖に映った。

「む~」

 冬華は心外だと言いたげに不満そうな顔をする。

 セイラが魔法を放とうとしているのを目の端で捉え、その手を塞ごうとセイムをセイラへと(ほう)った。

「はい! キャッチして」

「え!? セイム!」

 セイラはセイムを抱きしめてキャッチした。

「ナイスキャッチ!」

 冬華は親指を立ててウィンクする。

「さてと」

 冬華は両手に持つショートソードとダガーを水の剣に変えると駆け出した。

「やめろぉぉぉぉ!」

 セイムが叫び声を上げる。

 冬華はその声を気にも留めず、横たわるミイラ化の進む者たちを剣の水で斬りつけていく。

 斬られた人々は絶叫を上げもがき苦しむと、やがてピタリと止まり静かになった。

「あ、あ……」

 セイムは放心したように声を漏らしていた。

 セイラはセイムに無残な父の姿を見せまいと抱きしめた。

『お疲れ様。どうでしたか?』

 シルフィが労いの言葉を冬華に掛ける。

「うん、たぶん大丈夫」

 冬華は静かになった人たちを見下ろす。

「なんてことを……」

 サラが俯き冬華を睨みつける。

「あ、今ほどくね」

 冬華はパチンと指を鳴らしサラを解放する。

「なんでこんなことができるんですか!」

 サラは怒りを堪えきれず声を張り上げた。

「こんなことって……」

 冬華は視線を感じまわりを見た。

 サラ、セイムをはじめ、まわりから憎悪の籠った視線を冬華は向けられていた。

「……そっか、お兄ちゃんはこんな気持ちだったんだ……」

 冬華は当時のアキを思い辛くなった。

『冬華、気はすみましたか?』

 シルフィは冬華の肩に手を添え訊ねた。

「うん、もういいよ」

 冬華は悲しそうに頷いた。

『セイラさん、その人たちの容態を見てください。ミイラ化は止まっているはずです』

 シルフィはセイラへ向けて言った。

「え!?」

 セイラは夫の様子を窺った。

「……!? い、息をしてる。顔色もよくなって……あなた!」

 セイラは涙を流し夫へと抱きつく。

「父ちゃん!」

 セイムも父が無事だとわかり同じように抱きついた。

 他の魔法士たちも他の者たちの容態を見て、驚きの声を上げていた。

「全員ミイラ化が止まってます! 一体なぜ? 斬り殺したはずでは?」

 魔法士はシルフィへ訊ねた。

『冬華は彼らを浄化したのですよ。ミイラ化は瘴気によって起こされています。ミイラ化の原因となる元の浄化は冬華ではどうすることもできませんが、ミイラ化が進んでいても生きている者ならば冬華でも浄化し助けるが可能だったのです』

 シルフィは淡々と説明する。

「なぜ、それを教えてくれなかったんですか?」

 サラが疑問に思い訊ねた。

『自分はアキのように行動できるのか。誰からも信じてもらえなくても自分の行動を曲げずにいられるのか。それを試したかったのだそうです。アキの時よりも甘いですが』

 シルフィは目を伏せる。

「あはは、それでも結構キツイものがあったよ! ホントバカだよね、お兄ちゃん」

 冬華は悲しそうに笑う。

「サラさん、私もお兄ちゃんが何を考えてたのかなんてわかんないよ、でも理解したいと思ってる。私、妹だもん。だからサラさんにもちゃんと理解してあげてほしいの、お兄ちゃんの事を」

 冬華はいつまでもアキの幻影に囚われないでほしいと言いたかった。

 サラは黙って(うつむ)いた。

「冬華……」

 セイムが伏し目がちに冬華へ声を掛けた。

「セイム……ゴメンね、怖い思いさせちゃって」

 冬華は申し訳なさそうに笑う。

「ううん、オレこそ、信じられなくてゴメン……ゴメンよ!」

 セイムは泣きながら冬華へ抱きついた。

「冬華、父ちゃんをみんなを助けてくれてありがと」

 セイムは冬華の胸の中で礼を言った。

「うん。約束したからね、手伝うって」

 冬華はセイムの頭を撫でながら呟いた。


夜中に帰ってきたから昨日投稿できなかったです。

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