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嵐三とマーサとアキの決断?

「五十嵐嵐三さんですね」

 学校を出ようと校門まで来ると突然呼び止められた。

 校門の外には数人の黒いスーツに身を包んだ男たちが道を塞ぐように立っていた。

「確かにわしは嵐三じゃが?」

 嵐三は訝し気に黒服たちを見る。

「一緒に来ていただけますか? そちらの空雄君もご一緒に」

 黒服たちはアキの事も知っているようだ。

「ん? じいちゃんの知り合い?」

 アキは嵐三に訊ねた。

「誰の命令じゃ?」

 嵐三はアキを無視すると黒服のリーダーらしき人物に訊ねた。

武藤(むとう)様の命です。来ていただけますね」

「あやつか……断ると言ったら?」

「力づくでもお連れしろと言われております」

 黒服リーダーは視線を鋭くするとそう言った。

 嵐三は溜息を吐くとアキへと視線を向ける。

「空雄、稽古がしたいようじゃ。相手をしてやれ」

「は? じいちゃんの知り合いじゃねぇの? 行かなくていいのか?」

 アキは意味がわからず訊ねた。

「うむ、いいんじゃ。今はそんな事をしておる場合でもないしの」

 嵐三は目を閉じてそう言った。

「ふ~ん、まあいいけど。後でちゃんと教えろよな」

 アキは武藤とやらの事が気になっていた。嵐三と関係があり、このタイミングで来たということは今回の件とも関係がありそうだとアキは思っていた。

 アキは前に出ると黒服たちを見据える。

「よろしいのですか? お孫さんが怪我をすることになりますよ」

 黒服リーダーが物騒なことを口にすると黒服たちはアキの方へ向き身構える。

 アキは普通に聞き流して、黒服たちの武装に気がいっているようだ。

「怪我のぅ、そんなことができるのかのぅ?」

 嵐三は挑発するように言う。

「道場にはずいぶんと通っていなかったと情報を得ています」

 黒服リーダーは情報はすでに得ている怪我をしたくなければあきらめて同行しろ、と言っているようだ。

「古い情報じゃな」

 嵐三はバカにした風に言う。

「仕方ありませんね」

 黒服リーダーがそういうと他の黒服たち同様に身構える。

「おじいさんが頑固なのがいけないのです。恨むならおじいさんを恨んでください」

 黒服リーダーはそういうと、警棒をギャキンと伸ばす。

 他の黒服も警棒を構える。

 アキは黒服たちの様子を目を細めて見ると口を開いた。

「ん~やる気はあるんだよね? でも()る気はないと……」

 黒服リーダーはアキが何を言っているのかわからず首を傾げる。

「何を言って……」

 黒服リーダーが言い終わる前にアキは動いていた。

「がはっ」 

 一番端の黒服の鳩尾に膝を入れると警棒を奪い、その隣の黒服の警棒を持つ腕を殴りつける。

ゴキンッ

「ぐわっ」

「なっ、小僧!?」

 黒服リーダーは表情を変え怒りの表情を見せる。

「警棒って意外と威力あるな……あぶなっ」

 アキは黒服リーダーを無視して呟くと警棒を捨て、腕を押さえている黒服に蹴りを入れた。

 黒服は勢いよく飛んで行き校門へぶつかると気を失った。

 黒服リーダーがアキへと迫り、警棒を振り下ろす。

 アキの姿は掻き消え、警棒は(くう)を斬り空振る。

 黒服リーダーが驚愕で硬直している間にアキは他の黒服たちを手刀で眠らせていく。

 黒服リーダーがふり向いた時には誰も立っていなかった。

「ど、どういうことだ……」

 黒服リーダーは立ち尽くしそう呟いた。

「どうって、生き残るためにはこのくらいできないと向こうじゃすぐ死ぬよ」

 アキは高校生らしくない視線を向けて言った。それには少し殺気が込められていた。無意識であったが、向こうの世界での戦いを思い出していたのかもしれない。

 黒服リーダーはジリジリと精神力を削られ、無意識に後ろに下がって行く。

「もういいじゃろ。お前さんじゃ空雄には勝てんよ」

 嵐三はそういうと黒服の前に歩いて行く。

「そ、そういうわけにはいかんのだ!」

 黒服リ-ダ―は警棒を捨て、懐に手を突っ込んだ。

「!?」

「はい、それ以上はダメだよ。ホントに殺しちゃうよ?」

 いつの間にか黒服リーダーの背後に回っていたアキが首に手刀を当てて軽い口調で言った。

 黒服リーダーは背筋に冷たいものが走り、力なくその場に崩れ落ちた。

「空雄……お前向こうで何してきたんじゃ」

 嵐三はアキのあまりに堂に入った悪者ぶりに呆れた声を漏らした。

「何って、影の仕事人、的な?」

 アキはドヤ顔でそう言った。

「アホじゃな」

 嵐三はそう呟くと黒服リーダーへと視線を向けた。

零治(れいじ)に伝えてくれ、もうしばらく待てとな」

 嵐三はそういうと校門を出て行く。

「やっぱり知ってるヤツじゃねぇか」

 アキは文句をいうとその後に続いて行った。

「(ていうか武藤零治ってどっかで聞いたことあるような……)」



「で、どこに向かってるんだよ。道場に行くんじゃなかったのかよ」

「誰がそんな事言ったんじゃ?」

「……」

 アキが勝手に思い込んでいた為ぐうの音も出なかった。

 アキたちは学校の外に待たせていた車に乗り山奥に通じる道を走っている。途中までは舗装されている道で人もいたが、今は舗装もされていない人っ子一人いないような道を走っている。

 怪しい、怪しすぎる。この後アキの姿を見たものはなかった……とかなるんじゃないだろうな! などとアキは考えていた。

 しばらく進むと刑務所のような建物が見えてきた。あくまでもアキの主観を言ったのだが、アキは刑務所など見たことはない。そんな感じに見えただけである。

 建物の玄関に横付けすると運転手はすぐに降り左後ろのドアを開いた。

「うむ、ありがとうのう、白木君」

「いえ」

「ほれ、空雄も早く降りんか」

「あ、うん」

 建物内に入りエレベーターで地下一階へ向かうとそこには近代的な光景が広がっていた。

「なんじゃこりゃ! 外はボロイのに地下がなんでこんなに近代チックなんだよ!?」

 アキが声を上げると非難の視線が向けられた。静かにしろと責められているようだ。

 アキは年上お姉さん職員の視線を受け恥ずかしそうに身をよじる。

「変態じゃな」

 嵐三がボソリと呟いた。

 アキたちは隣の応接室に入るとソファに腰掛けた。

 すると、後に続いてもう一人男が入ってきた。

「遅かったですね、何かあったんですか?」

 男が嵐三に訊ねた。

「うむ、空雄が、家におらんかったのでな。それに零治の手の者がやってきてのう」

「そうでしたか」

 嵐三の話を聞いて男は呆れたように納得していた。

 アキは男の顔を見て誰なのか思い出した。

「あ、光輝の親父さん! ども、お久しぶりです」

 男は光輝の父剛輝(ごうき)だった。

「ああ、久しぶり。空雄君が無事帰ってよかったよ」

 剛輝は挨拶をすると、嵐三へと視線を向ける。

「それで話はこれから?」

「うむ、先に向こうの状況を聞いておこうと思っとる」

「わかりました」

 アキは小首を傾げたまま二人の会話を聞いていた。

 嵐三と剛輝ははアキに視線を向ける。

「お前も聞きたいことがあると思うが、先に向こうでなにがあったのかを話してくれんか」

「あ、うん」

 アキは見聞きし、体験してきたことを話した。

「なるほどのう、すでに二つも封印が解けていようとは……それにしてもアギトとはのう、中二病か? カッコイイとでも思ったのか?」

 嵐三はからかうように言う。

「違うわ! 丁度いいから使っただけだって行っただろうが!」

 アキは声を荒げて言う。

「それよりも思い切ったことをしたものだな。敵側についていたとは」

 剛輝は驚きというより呆れ気味に言った。

「いや~その方が都合がよかったんで」

「その作戦は成功したのか?」

 嵐三は真剣な表情で訊ねた。

「さあ? 黒い女の子はシルフィが確保したけど……」

 アキは小首を傾げて言う。

「なんじゃ覚えとらんのか? ひょっとしてどうやって戻ってきたのかも覚えとらんのか?」

「え? ……ちょっと待って、今思い出すから」

 アキはこめかみを押さえて記憶を掘り起こす。

「(黒い女の子を助けて、モルガナを救おうと戦って、ゴーレムから落ちて……)串刺し!? そうそう串刺しにされたんだよ、それからサラとキスして……あれ? 俺、死んだ?」

 嵐三と剛輝は途中まで、串刺しってなんだ? キスって戦場でか? と呆れながら聞いていたが、最後の単語を聞き表情が強張った。

「死んだとはどういうことじゃ! 継守(つぐもり)に会ったのではないのか!?」

 嵐三は怒鳴るように声を上げた。

「継守? 誰それ?」

 アキは小首を傾げ言う。

 今の返事で確定した。アキは一度死んだのだと。

「ん? どゆこと?」

 アキは顔中にはてなマークを張り付けて言った。

「こちらに帰還する方法は二つある、一つは4大精霊の力を借りること。これは継守がすでに成しておるからヤツに会えばいい」

「だからそれ誰?」

四道継守(しどうつぐもり)、ヤツはかつてのわしらの仲間じゃ。ヤツは結界術が得意でのう、精霊の力を借りて、召喚の儀を応用させゲートを開くことができるようになったのじゃ」

 嵐三は自分の事のように得意げに話した。

「でもその人、もうじいさんだよな? 生きてんの?」

 アキはさらっと訊ねた。

 盲点だった。嵐三は自分がぴんぴんしているから継守も生きていると思い込んでいた。向こうはいつ魔物に襲われるかもわからない異世界だ、死んでいてもおかしくない。

「……お、おそらく。で、でじゃ、もう一つが死ぬことじゃ」

 嵐三は明らかに誤魔化すと、衝撃的なことを言った。

「死ねば遺体だけが還される。はずなのじゃが……」

 嵐三はアキを見て口ごもる。

「生きてるよなぁ俺」

 嵐三はしばらく考え込むと何かを思い出したように口を開いた。

「空雄、お前何かアイテムを持っておらんかったか?」

「なにかって?」

「そうじゃな、身に着ける物で、こっちに戻ったらなくなっておった物じゃな」

 アキはすぐにそれに思いいたった。昨日持ち物チェックをしたばかりだからだ。

「ばあちゃんに借りてた指輪」

「ばあちゃんの指輪?」

 嵐三は訊ねた。

「マーサっていうばあちゃん。俺に魔力制御の方法を教えてくれたばあちゃんだよ。そのばあちゃんが回復用にって貸してくれてたんだよ」

「回復用……それは簡単な回復魔法が使えるだけの指輪じゃ。人が生き返ったりはせんよ」

 嵐三は何かを思い出したように、そしてどこか懐かしむような表情で言った。

「そうなの? じゃあ……」

 アキは首に掛けているネックレスを見た。

「あれ?」

 アキはネックレスをよく見てみた。

「……ない!? ここに嵌まってた宝石が無くなってる! せっかくサラがくれたのにどこで落としたんだ? やっぱりあの戦いのときか!?」

 アキは取り乱して言う。

「落ち着かんかバカ者。おそらくそこに嵌まっておったのは宝石ではなく魔石じゃな。それがお前を生き返らせたのじゃろう。詳しくはわしもわからんが、そういう効果のある魔石もあると聞いたことがある」

「あ~、ばあちゃんに借りた書物にも書いてあった気がする」

 書物は魔法の収納箱に入れてシルフィに預けてあるから確認のしようはないのだが。

「そのサラって娘に感謝するんじゃな。命の恩人じゃから」

「そっかぁ、またサラに助けられたのかぁ」

 アキは嬉しそうな、そして少し申し訳なさそうな顔をし、サラの言葉を思い出していた。


「アキさんはわたしが守りますから!」


「(本当に守ってくれたよ)」

 アキはネックレスを握りしめ呟いた。

 その様子を見て嵐三は訊ねた。

「なんじゃ? お前その娘に惚れておるのか?」

「おうよ」

「どんな子なんじゃ?」

 嵐三はニヤニヤしながら訊ねた。

「どんなって、美人で可愛らしいところもあって、スタイルもよくて優しくて料理もうまくて、柔らかくていい匂いがするんだよ~」

 アキはサラを思い出しながら夢見心地と言った感じで答える。最後の方に怪しい単語が含まれていたがアキは気にしない。

「匂いって、変態じゃな。おまけに柔らかいとな! どこのことじゃ?」

 嵐三はイヤラシイ顔になり訊ねた。

「うっさいエロジジイめ、教えるか!」

 アキは拒否した。

「なんじゃい、孫の未来の嫁が気になるのは仕方ないじゃろうが……」

 嵐三は寂しそうな演技をする。

 アキはその演技に騙された。

「し、仕方ねぇなぁ……この子だよ」

 アキはスマホの画像を見せた。

「ほうほう、こりゃまたべっぴんさんじゃ……ハァ、お前には釣り合わんのう」

 嵐三は目を輝かせて見ていたが、すぐにガッカリしたように溜息を吐いた。「どうせお前が勝手に盛り上がっとるだけじゃろう」と目が言っている。

「ざっけんな! ふふん、俺とサラはキスだってしたんだぜ」

 アキはドヤ顔でそう言った。

「死に際の別れの接吻じゃろ? 情に流されただけじゃろ? 今頃後悔しとるんじゃないかのう。可哀想にのう」

 嵐三はサラが不憫でならなかった。

「このクソジジイが……」

 アキは握り拳を固め打ち震えている。

「それにこの画像、寝顔ってどういうことじゃ? まさか!? 柔らかいというのはこのときに……」

 嵐三はアキが性犯罪に手を染めたのかと愕然とした。

「するかボケ!」

 アキは声を張り上げた。

「冗談じゃよ」

 嵐三もアキがそんなことはできないチキン野郎だということはわかっていた。

 そんな戯れる二人を黙って見ていた剛輝が口を挟んだ。

「あの、だいぶ話が逸れているんだが……」

「ん? ハッハッハッ、そうじゃな。久々に空雄と話すもんじゃから嬉しくてのう」

 嵐三は本当に嬉しそうに笑った。

「ったく」

 アキもまんざらでもなさそうだ。照れ笑いを浮かべている。

「それで、空雄。敵側にいたのは黒い娘を救うためだけではなく、光輝たちの力を引き出すためだったのじゃな」

「ああ、他にも理由はあるけどその二つが大きな目的だな」

「なぜ、そう思ったのじゃ?」

「じいちゃんに真聖剣を教わったとき、基本の技だって言ってたし。総司が炎の能力に目覚めてたから」

 嵐三たちは黙ってアキの話を聞いている。

「昔じいちゃんに聞いたおとぎ話、勇者と4人の戦士の話を思い出したんだよ。あれって向こうの世界の話なんだろ?」

 アキは訊ねた。

「うむ、そうじゃ」

 嵐三は肯定する。

「じいちゃん言ってただろ? 勇者たちが魔王を倒さず封印したのは勇者に決定的に足りなものがあったから倒せなかったんじゃないかって。だから俺は真聖剣の先にあるモノがそれなんじゃないかって思って。だから光輝の力を引き出そうとしたんだ。まあ、俺の命も掛かってたし、嫌でもやるしかなかったんだよ」

「すまないな光輝の為に嫌な役回りをさせてしまって」

 話を聞いていた剛輝が申し訳なさそうに言う。

「いえ、黒い女の子も助けないといけなかったので。たぶんその子4人の戦士の内の一人だと思うし、助けられれば、その子と総司、冬華で3人揃う。あと一人、風使いでコンプリートだったんだけどなぁ」

 アキは頭を叩いて残念そうに言った。

「ゲーム感覚でものを言うでないわ」

 嵐三が苦言を言う。

「今だから言えるんだろ、当時は必死だったんだから……でも結局光輝の力は引き出せなかったかもなぁ、代わりに冬華がいけそうだったな、うん」

 アキは自分が死んだあとのことを知らない。みんなが無事であるのかさえも……

「こっちに戻されたんじゃもう何もできねぇんだけど」

 アキは憂いに満ちた目を天井に向ける。

「そうでもないぞ。まだ向こうに戻れる機会はある。まぁお前次第なんじゃがな」

 嵐三はアキを真っ直ぐに見て訊ねる。

「どうじゃ空雄。もう一度向こうへ行く気はあるか?」

 アキはしばらく考えた。いや答えは決まっている。アキはサラと共にいたかったのだ。

 だからこそ訊ねた。

「なあじいちゃん、じいちゃんもやっぱり向こうの世界に行ったことあるんだよな?」

「なんじゃ今更、とっくに気付いておろう?」

「うん、シルフィからも聞いてたし。じゃあ、ばあちゃんとはなんかあるわけ? 指輪の話した時ばあちゃんと同じような反応してたぞ」

 アキにしては鋭いところを突いてきた。

 嵐三は目を閉じ観念したように口を開いた。

「昔の話じゃ、ばあさんには内緒じゃぞ。……わしはマーサに惚れていたのじゃ」

 アキは得心いったような表情で聞いている。

「わしはマーサに召喚されたんじゃ。封印を守るため一緒に冒険もした。懐かしいのう」

 嵐三は遠い目で語る。そのまま逝ってしまいそうな勢いだ。

「活発な娘でな、わしは次第に惹かれていった。そういえば性格は少し冬華に似ておったな」

 だから冬華を溺愛してやがったのか、とアキは引いた。

「指輪は気持ちを伝えたときに送ったものじゃ」

 アキは眉をピクリと動かし黙って続きを聞く。

「指輪と気持ちは受け取ってくれたが、気持ちには応えられないと言われた。わかってはいたがな。わしらは住む世界が違う、まさに文字通りにな。マーサはわしを向こうの世界に縛り付けることを嫌ったんじゃよ。だから、わしもマーサの気持ちを酌んで身を引いたんじゃ。ただわしに覚悟がなかっただけなんじゃがな」

 嵐三は後悔していたのかもしれない。あの時、こちらの世界を捨て向こうに残る覚悟をしていればと。

「空雄、お前はどうじゃ? その娘のためにこちらの世界を捨てられるか?」

 アキは押し黙る。

「今決める必要はない。向こうに行ってその娘と過ごし、じっくり話し合うのもいいじゃろう。しかし決断の時は来る。後悔のない決断をしろ。わしはお前の決断ならば応援しよう。なにせお前のじいちゃんだからのう」

 嵐三は優しく微笑んで言った。

「じいちゃん……クサ過ぎだろ」

 アキはジト目で呟いた。

「なんじゃと! 今のはなかなかに感動的なセリフだったじゃろう!」

 嵐三はせっかくのいいセリフをバカにされて憤慨する。

「はいはい、いいセリフだったよ。感動したよ~」

 アキは軽い感じに言った。

「軽すぎるわ! 気持ちがこもっとらんじゃろ!」

 嵐三はビシッとアキに指を差し言い放った。

「冗談だよ、シリアス過ぎだったからさぁ。まあ、なに、ちゃんと考えるよ。ありがとな、じいちゃん。その為にももう一度向こうに行く」

 アキはそう告げた。

「そうか、わかった」

 嵐三はニヤリとし頷いた。

「ところでホントにばあちゃんとは何もないんだな? サラ、ばあちゃんの孫なんだけど」

 アキは念を押して訊ねた。

「安心せい、その娘がわしの孫ということはないわい」

 嵐三は呆れたように言った。


 このとき剛輝は思っていた。

(その娘をだしにして空雄君が向こうに行くように仕向けたな)と。


次話で少し謎が明かされるかもしれません。

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