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総司の力

 どうも、カレンです。

 わたしたちはリオル村から街道を東へと進んでいた。朝日がまぶしい。朝ということもあり空気も澄んでいて気持ちがいい。今のところ魔物も出てきていないからなお気分がいい。前で歩く包帯男がいなければ……なんか顔を左右に振りながら歩いてるんだけど、なにあれ? 時々手をのばしてる。キモッ


 わたしはキモイアギトを見て昨日の事を思い出した。

 昨日、わたしがついて行くと言って先生はあまり反対しなかった。総司さんの治療がまだ途中というのもあるんだろうな、誰かが付いて治療を続けないといけないのだけど……少し複雑だ。

 母さんに至っては、「がんばって」なんて応援する始末。それどころか「邪魔しないようにしなさいよ」とか言ってくるし。心配する方向が間違ってるよ! 娘の心配は? って言っても「大丈夫よ、アギトさんいるし」とか言ってくる。どれだけ信頼してるのよ! まったく……

 むしろ反対したのはアギトだった。

 最初は「魔物も出るぞ」、「危険だ」、「しばらく帰れないんだぞ」と心配してる風に言っていたけど、次第に「足手まといはいらない」とか、「邪魔だ」とか、ムカツク無遠慮な言葉に変っていた。そこまで反対するってことはやっぱり罠? わたしの勘が言ってる! 引き下がれないわ。

 

 そんな感じにうんうん唸っていると、隣を歩いている総司さんが心配そうに声を掛けてきた。

「カレンちゃん? どうしたの? そんなに唸って。心配事?」

 いやいや、心配でしょう! むしろ心配しかないでしょう! おかしなことを聞く人だ、総司さんは心配じゃないのかな? というかわたしより自分の心配しようよ!

「いえ、何でもないです」

 うん、あなたおかしいですよなんてわたしは言えない。

 ちなみに総司さんの出で立ちは革製の防具一式とローブ、腰には剣を挿している。昨日アギトが購入したものだ。買ってあげるなんて意外と太っ腹よね。わたしには買ってくれなかったけど。

 そこでわたしは黙って前を歩く包帯男へと声を掛けた。

「ねぇ、どこに向かってるの?」

「……」

 無視された……なによあいつ。

「ちょっと! 聞こえてるでしょ!」

「ふぅ、なんだ?」

 アギトは億劫そうに返事をする。

「だから、どこに向かってるのよ!」

「……東にある城だ」

「東の城って、たしかずいぶん前に滅びたんじゃ……」

 東の城って言ったらモルデニアバレーにあるモルデニア城のことだと思うんだけど、すいぶん前に滅んだって聞いた。今は魔物の巣になってるんじゃないかな? 近隣の街や村も残っていないらしい。どうして滅んだのかは伝わってきてないのよね。生存者がいなかったらしいから当然なんだけど……

 なんで滅んだことが伝わったかって? キャラバン隊がモルデニアに魔石を運んだ時にはすでに滅んでいたんだって。近隣も回って確認したらしいし本当なんじゃないかな?

 実際に見てないからこれからい行くとなると少し緊張してくる。ホントに魔物だらけだったらどうしよう。戦力的にどうなの?

 わたしは二人をちらっと見た。そういえばわたしこの二人の事全然知らないじゃない! どうしよう……

 総司さんは一応光輝さんたちの仲間だからいいけど、強さに関してはサッパリだ。

 アギトは……怪しさナンバーワンの包帯男。汐音さんに聞いた話だと、そこそこ強いんじゃないかってことだった。ホントのところはどうなんだろう?

 わたしに関しては戦力には入らないだろう。自分の身を守れる程度の強化魔法ができる程度、あとは回復魔法。

 戦力的に不安だ……

 そんなことを悩んでいるとアギトが足を止めた。

 ここは北のレインバーグへ向かう道、東のモルデニアへ向かう道との分かれ道だ。こんなところで止まってどうしたんだろう?

 アギトは総司さんへ振り向いて訊ねる。

「総司、君、キミはどのくらい戦える?」

「総司でいいよ。どのくらいと言われてもどう答えたらいい?」

「そうだな……よし」

 アギトは一つ頷くと森の方を凝視する。……何してるの?

 しばらくしてアギトは右手を森の方に向けると森の中に小さな竜巻ができた。……何やってんの?

 アギトはその竜巻を引き寄せるように手を動かすとわたしたちの後方にまで引き寄せて竜巻を解いた。

 そこに魔物、ゴブリンが2体落ちてきた。

グギャッ!?

「キャッ!?」

 わたしはかわいい声を上げてしまった。

「どういうつもりだ!」

 総司さんがアギトに訊ねる。

「総司、そいつらを倒せ。カレンはこっちにこい」

 アギトは命令する。ていうか呼び捨てってどういうこと!

「なんであんたに命令されなきゃいけないのよ! あんたが連れてきたんだからあんたが倒しなさいよ!」

「総司の力を見るためだ。やれ」

 見るためって、だからって魔物を相手にするの!? 頭おかしいんじゃないの!

 魔物たちはわたしが声を上げたせいでこちらに気付き、ナイフを握ってにじり寄ってくる。

「わかった」

 総司さんは剣を抜いて前に出た。

「総司さん!?」

「カレンちゃんはアギトのところへ」

「ちょっと! 待って」

 総司さんはわたしの呼びかけを無視して魔物へと向かっていく。

 斬り掛かってくるゴブリン1のナイフを剣で受けそのまま跳ね返す。その後ろからゴブリン2が飛び掛かってくるのを、すり抜けるように横薙ぎに斬り抜ける。

ギャァァァァ

 ゴブリンの絶叫が響く。

 ゴブリン1がナイフを突き刺そうと腕を伸ばして突っ込んでくる。それを横に躱しその腕を斬りおとす。

 振り下ろした剣をそのまま斬り上げ、ゴブリン1が声を上げる前に首を斬りおとした。

「……すごい」

 わたしはアギトの前でボーッと眺めて呟いていた。

「これでいいか?」

「剣技などはいい、私は力が見たいと言った」

「力?」

 総司さんが呟くのと同時に森の中からゴブリンの集団が出てきた。最初のゴブリンの絶叫を聞きつけてきたみたいだ。

「ど、どうするの? あんたも戦いなさいよ!」

 わたしは声を上げて言うけど。

「総司! 力を見せろ! キミならその程度敵ではないだろう?」

 アギトはこんなことを言う。その程度って、10体はいるんじゃない? 一人でなんて……

 総司さんは襲い掛かってくるゴブリンの攻撃を剣で捌いたり避けたりして凌いでいる。攻撃しようにもあとからあとからゴブリンが飛び込んで行くから、防戦一方となっている。

「ウッ、クゥッ!?」

「アギト! なんとかしてよ!」

「黙って見ていろ」

 アギトはわたしの言葉など聞いてくれない。アキならきっと聞いてくれたのに……

 わたしは下唇を噛みしめる。

 次第にゴブリンの攻撃が総司さんに掠り始める。

 そして、総司さんが二体のナイフを受けとめているところへ3体目がナイフを総司さんの脇腹へ突き刺そうとした瞬間、

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 総司さんの剣が横薙ぎに振り抜かれ3体のゴブリンはナイフ諸共真っ二つになった。総司さんの剣には炎が纏われていた。

「何あれ!?」

 総司さんも驚いているようだったけど、ゴブリンは仲間がやられたことで怒り、猛攻は激しくなる。

 しかし、たかがナイフ、総司さんの炎の剣の前では棒切れ同然にへし折られ、ゴブリンの体も切り裂かれる。ここまできたらもはや総司さんの独壇場だった。ゴブリンたちを切り裂き、薙ぎ払い、突き刺していく。その炎の剣の軌跡は目に残像を残し、炎が舞っているようで神秘的だった。

 わたしが見惚れていると最後の1体が切り裂かれていた。

「ハァハァハァ……」

 総司さんは燃え盛る魔物の死骸を見て息を切らしている。

 総司さんが炎の消えた剣で一振りすると、燃え盛っていた炎が消え不快な臭いが残る。

「治療をしてやれ」

 不意に後ろから声を掛けられた。

「わ、わかってるわよ!」

 わたしはアギトには目もくれず総司さんに駆け寄り回復魔法をかける。

「ありがとう」

「いえ、わたしの仕事ですし……それにしてもすごかったです。お強いんですね」

「いや、無我夢中で必至だったよ」

 総司さんは苦笑いをしながら言う。

 回復を終えアギトのもとへと行くと総司さんがアギトに訊ねる。

「今のが俺の力か? 知ってたのか?」

「キミの力だ。正しく使え」

 アギトはそういうと東へ向け歩き出す。質問には答えずに……

!?

 その先には何かに切り裂かれた魔物の死骸がいくつも転がっていた。

「……なにこれ?」

「アギトがやったんだろう。こちら側からも魔物が来ていたんだね」

「え!?」

「すごいものだな」

 総司さんは関心なのか驚きなのかわからない感想を漏らす。

 アギトずっとわたしの後ろにいたはずなのに……魔法でやったの? 全然気づかなかった。

 もしアギトが総司さんの加勢に行ってたら、わたし死んでた? わたしのこと守ってくれてたの? ……そ、そんなわけないよね。たまたま後ろから魔物が来たから倒しただけよね、うん。

 わたしたちはアギトの後を追い歩きはじめた。

 アギトを見ると先ほどと同じように顔を左右に振り……なにかを探してるのかな? 時折手を視線の先にのばしている。

「(意味わかんない。やっぱりキモイし……)」

 わたしは聞こえないように小さな声で呟いた。


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