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かわいい人2

 異世界人(呼び込まれてしまった者)を探しに出ていた人たちが戻り、すぐさま陛下への報告へ向かった。報告が終わると使いの者が僕たちを呼びに来て、マリアさんの研究室ではなく、執務室へと案内された。

 執務室へ入ると、マリアさんの他に、二人の人物がソファーに腰を掛けていて、他には誰もいなかった。

 僕たちが入ってくるのを目にしたマリアさんとソファーに腰を掛けていた一人、若い女性が立ち上がり柔らかな微笑みをこちらに向けお辞儀をした。一瞬双子かと思えるほど雰囲気が似ていた。

 マリアさんは僕たちに対面のソファーに掛けるよう勧める。上座の位置にマリアさんが座り、僕の正面、奥からローブを羽織ったおばあさんが、その隣に同じくローブを羽織ったブロンドヘアーをポニーテールに結った綺麗な女性が座っている。こちら側は奥から僕、汐音君、冬華ちゃんの順に座っている。

 僕たちが座るのを確認して、マリアさんがそれぞれ順に紹介してくれた。

 正面のおばあさんはマーサさんと言ってマリアさんのお母さんで以前は予見士としてこの城に仕えていた。そして今は、相談役のようなことをしているそうだ。たまに占いなどもしているらしい。

 隣の綺麗な女性はサラさんと言ってマリアさんの娘さんだった。マーサさんの下で予見士としての修行中で補佐的なこともしているそうだ。

 どこか面影があると思ったら、なるほど三人は家族だったか。

 次に僕たちを紹介していく。僕の紹介中、二人の目が僕を捉える。マーサさんはおばあさんとは思えない鋭い目で僕を見定めるように視線を向け小さな声で呟いた。

(ひじり)か……ふむ、あやつに少し似とるか。それにあのバカ者と違って誠実そうじゃな」

 懐かしそうな表情をしたと思ったら、何か思い出したように少し笑った? あやつって誰のことだろう? それにあのバカ者って……と思っていると隣のサラさんもこちらを見ていた。こんな綺麗な人に見られると気恥ずかしく目を逸らしそうになる。しかしその視線はどこか僕ではない他の誰かを見ているようだった。

 次に汐音君が紹介された。こちらも同じく見定めるように見られていたが、それが気に入らないようで汐音君の瞳が鋭くなるのがわかった。

 それに気づいたサラさんが口を開いた。

「すみません、不快な思いをさせてしまって。ただ、皆さんのことを知らないことにはこれからの対応に差し支えがありますので、ご容赦ください」

「そうですか、わかりました」

 それを聞いて、汐音君は渋々頷くと視線を和らげる。

 次に冬華ちゃんが紹介されたのだが、今までと明らかに違う反応が返された。

五十嵐(いがらし)じゃと!」

「っ!?」

 二人とも目を見開いて驚いていた。当然動揺した冬華ちゃんは疑問を口にする。

「え、え? なに? 私がどうしたの?」

 サラさんは沈んだ表情になると俯いて手を胸に当てる。いや、ネックレスを強く握っているのか?

 マーサさんは難しい顔で目を閉じた。

 五十嵐と聞いて驚くのはわかる。しかしその後の反応が気になりマリアさんは二人に訊ねた。

「お母さん、サラ、彼女がどうかしたのですか?」

 目を開いたマーサさんが重い口を開いた。

「おぬしたちは、五十嵐空雄(いがらしあきお)を知っておるか?」

 その言葉にサラさんはピクリと反応し、マリアさんはその様子を見て険しい表情になる。そして、僕たちは同時に声を上げた。

「アキがいたんですね!」

「五十嵐君!?」

「お兄ちゃん!?」

 その声を聞いて、隣の二人が僕の顔を凝視した。

「会長?」

「コウちゃんどういうこと?」

 僕は困惑気味な二人を手を上げて制止し、マーサさんに訊ねた。

「あいつがいたんですね? 今どこに? ここにいないんですか?」

 俯いていたサラさんが悲痛は表情を浮かべた顔を上げ謝罪する。

「すみません! 私では止められませんでした」

 今にも泣き出しそうな勢いで言うサラさんにマーサさんを除いたみんなが驚く。ここにいないのは今のでわかったけれど……

 詳しく聞くため僕はマーサさんに説明を求める。

「マーサさん、どういうことですか?」

 マーサさんはサラさんの肩に優しく触れると、話し出す。

「ワシらは確かにあやつを見つけた。しかし、他の者は見つけられなかったのじゃ」

「はい、それはマリアさんから伺っていました」

 横の二人は険しい表情になったが、マーサさんは話を続ける。

「うむ、その後気になることができたのでサラに調べてもらった。その結果、その者達の行方の手掛かりを見つけたのじゃ」

 後を引き継ぐかのようにサラさんが口を開いた。

「わたしがその話をするとアキさんは何かに気付いたようで確認してくると、そして友達を連れて戻ってくると言って行ってしまいました。一人で行くなんて……わたしは一緒に行きたかったのに、一人にしたくなかったのに!」

 サラさんは感情を露わにすると下唇を噛んで涙を浮かべていた。

「そうでしたか……」

 話しを黙って聞いていた冬華ちゃんが不満気味に立ち上がり声を上げた。

「もう、どういうこと! お兄ちゃんもこっちに来てるの? コウちゃん何か知ってたの!?」

 いきなりの声に驚いてしまった僕はしどろもどろになりながら答えた。

「あ、ああ、アキはあの時僕の目の前で消えたからね。それにあいつは特にその可能性が高いから……黙っていたのは謝るよ。二人に心配させたくなかったんだ。それにここに連れて帰ってもらえるみたいだったから会えばわかると思って……それよりも一人で行ってしまったのか……」

「お兄ちゃん、剣の腕は私より下だしね」

と冬華ちゃんは不安材料を提示した。そして黙っていた汐音君が澄ました顔でフォローなのかわからないフォローをする。

「逃げ足だけは早かったですけどね」

「だよね~」

と冬華ちゃんが茶化すように同意する。その反応にサラさんが声を荒げる。

「そんな甘い世界ではないんですよ! まわりには魔物だっているんです!」

 その剣幕に二人は黙り込んでしまった。

 見かねたマリアさんが口を挟む。

「サラ!」

「っ!? す、すみません」

 そしてマーサさんに視線を向け訊ねる。

「お母さん、アキさんに魔法は教えたのですよね?」

 それを聞いた女子二人はそれだ! と言わん勢いで顔を上げた。しかし僕を含めた他のものは険しい表情を作る。

「あやつは魔法が使えんのじゃ」

 それを聞いた二人は事の重大さに気づいたように声を上げた。

「それじゃあ、魔物のいる世界をほぼ丸腰で出て行ったのですか!?」

「お兄ちゃん一人で……」

「一応魔力の制御方法は教えられたから、複数の魔物に囲まれない限りは何とか逃げ切れるじゃろう」

 マーサさんはそう言い足すがそれでも表情はすぐれなかった。サラさんも手を強く握りこんで俯いたままだ。

「まだ、何かあるんですか?」

 僕はそれが気になり訊ねた。サラさんの肩がピクリと震えたのに気付いたマリアさんが何かを思い出した。

「まさか!? サラ、あなた何か見たの?」

 全員の視線がサラさんに集まる。

「……うん、わたし……アキさんが殺されるところを見たの。このままじゃお母さんの予見が当たっちゃう」

 それを聞いた僕たちは意味がわからず困惑した。

「え? サラさんが見たのって? それにマリアさんの予見ってなんですか?」

 僕の疑問にマリアさんが答えてくれた。

「わたしが視たのはサラのことです。内容は『運命の出会いと別れ』です。そしてサラが見たというのは予知夢です。わたし共は未来視の血統でして、余程強い力が働かない限り外れることはありません。ですので……」

 さすがに二人も魔法のある世界で未来視を疑うか迷っているようで黙っている。 しかし……

 僕は思ったことを口にする。

「だったら、まだ生きているかもしれませんね。実際に死ぬところを見たわけではないんでしょ? だったらアキの後を追って合流すればいい。必要な情報はアキが向かった先、サラさん、予知夢の内容から場所はわかりませんか?」

 サラさんは思い出しながら口を開く。

「たぶん城だと思います。男女がいて、その男性がアキさんを……」

 そこでサラさんは夢を振り払うように頭を振るとアキに話したことを思い出す。

「教会跡の話をしましたからアキさんはきっと北に向かうはず、だとすると……レイクブルグ城」

「レイクブルグ城か。目的地は決まりましたね。早い方がいいので明日にでも出発したいのですが」

 僕がそういうと、

「そうですね、先日光輝さんには話しましたが、サラを光輝さんに同行させます。お二人も同行なされるのでしたら準備もありますし、明日準備ができ次第出発ということでいかがでしょう?」

 二人から同行の件を聞いていたのかマリアさんはそう提案する。

「はい、それで構いません」

「サラもいいわね?」

「はい、みなさんよろしくお願いします」

 サラさんは沈む気持ちを押し殺して努めて微笑む。そんなサラさんの気持ちを解すかのように冬華ちゃんが茶化す。

「そういえば~、さっきは聞き流したけど~、運命の出会いって……サラさんってお兄ちゃんに?」

「え!?」

 その不意打ちに動揺を隠しきれないサラさん。そこに汐音君が追い打ちをかける。

「サラさんはあんなのがいいんですね、意外です。あれのどこがいいんですか?」

「ね~、どこどこ?」

「えっ、えっと、お友達想いで優しいところ……」

 サラさんは頬を赤く染めながら答える。

「友達想いですか? 要らぬお世話をしてるだけのような」

「ヤサシイ!? お兄ちゃん私に全然優しくないよ!」

 二人はそれぞれにアキの高評価に物申す。

「そんなことないです! アキさんは……」

 声を上げたサラさんに二人のニヤニヤした視線が集まる。

「アキさんは……なんです?」ニヤニヤ

「あ~お兄ちゃんが私の知らないところで大人の階段を上っていく~なんだか少し寂しい~」ニヤニヤ

 二人がサラさんをからかい始めると、サラさんは顔を真っ赤にして俯く。そして上目遣いで呟く。

「もう、やめてください」

 それを見た二人は、何かに打ち抜かれたように手で胸を押さえている。

「か、か、か、カワイイですね!」

「きゃーーー、サラさんカワイイ! こんな綺麗でカワイイ人を~お兄ちゃんやるわね」

 二人は我を忘れて興奮している。なにしてるのこの二人? 悪乗りし過ぎじゃないですか? 

 僕はジト目で見ているが、マーサさんとマリアさんは楽しそうに見ている。

「賑やかじゃのう」

「フフッ、そうですね」

 まぁ、打ち解けられたならいいんだけど……

 とにかく、いよいよ明日からだ。気を引き締めて行こう。


「きゃーーー、サラさーん!」

「きゃっ」

 サラさんに抱きつく冬華ちゃんを横目に、僕は溜息を一つ吐いた……


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