いざ、出発
……
……夢を見ていた
血の臭いが周囲を覆っている……
……ここは、城? 城下町?
結界は破られ魔物に侵入されている……
大きな魔物……
……!?
「サラ!!」
魔物の攻撃から庇うように立ちふさがり……
魔物の攻撃がその体を貫く……
誰?……ローブを纏った……
……
翌日、準備を整えた僕はみんなが来るのを中庭で待っていた。
汐音君と冬華ちゃんは装備品、特に防具がなかなか決まらないらしく、いまだに選定中みたいだ。可愛くないとかいう声が飛び交っていたのは聞かなかったことにしよう。
僕の装備は一般的な皮の防具一式にローブ、そして剣でまとめている。動作の妨げにならなければいいから、この際なくても問題ないんだけどね。一応着けているってだけで、邪魔になったら外すだけだ。
しばらくすると後ろから声が掛かった。
「会長、お待たせしました」
いや、会長じゃないからと思いながら振り向くと、もちろんそこには汐音君が立っていた。
「いや、僕も今来たところだよ」
汐音君はホットパンツ? ショートパンツかな? に膝上までのストッキング? そして上は丈が長めの茶系のコートのようなものに身を包んでいた。こんな装備もあるのか。
「ずいぶんと軽装だね」
「魔法で防御は強化しますし、あまり防具をつけると動けなくなってしまいますから。それに接近戦をするつもりはありませんし」
確かに弓で援護すると言っていたとおり、背中にはリュックの他に弓と矢が背負われていた。しかし一番気になる物が、足、太腿にベルトで固定されている。
「汐音君それって……警棒?」
「そうですよ」
汐音君はさも当たり前と言った感じで取り出すとジャキッっと伸ばして見せる。
「え、なんでそんなものがここに?」
僕が疑問を口にすると、汐音君は何を今更みたいな表情で小首を傾げている。
「これは元々私が持っていたものですよ。護身用に警棒術を習ったことがありまして、その時に購入したものを普段から持ち歩いているので、こちらの世界に持ち込んだ形になりますね。接近されたとき用です」
弓道部で慣らした弓の腕と、近接用の警棒術ですか。遠近ともにいけるってなかなかのスペックだね。
「わ~汐音ちゃんカッコイイね」
横から冬華ちゃんが駆けてくる。
冬華ちゃんはヒラヒラした短めのスカートにスパッツらしきものを穿き、純白の胸当てと、同じく純白の脛当てとアームカバーと言った、純白セットに身を包んでいる。武器はやはりショートソードとダガーの二刀流でいくようだ。
「真っ白だね」
僕は見たまんま言った。
「だって他はみんな地味なんだもん」
冬華ちゃんの発言に汐音君は呆れたように言う。
「戦場で目立つのはどうかと思いますが……」
「装備品管理の者が困っていましたよ」
冬華ちゃんの後ろにサラさんも付いてきていた。昨日はローブで気付かなかったけれど、これは目のやり場に困るな。胸元が出過ぎでは? と僕は目を逸らす。
「フフ~ん、サラさんセクシーでしょ~きっとこれでお兄ちゃんを悩殺したのね」
「もう、冬華さん!」
サラさんは頬を赤くしつつ頬をふくらまして抗議の視線を向ける。そして一つ咳払いすると冬華ちゃんの腰に挿している武器を見る。
「冬華さんは二刀使うのですか?」
「そうだよ。子供の頃お兄ちゃんと、剣士ならやっぱり二刀流だよねって言って、二人で稽古してたんだ~」
冬華ちゃんは昔を懐かしむように遠くを見つめながら手振りを付けて言う。
「じゃあ、五十嵐君も二刀流を? ……ん~イメージできませんが」
汐音君のアキのイメージの悪さが窺える反応だな。
「お兄ちゃん昔はかっこよかったんだよ。今じゃ見る影もないんだけど」
冬華ちゃんは最近のアキを思い出しため息交じりに言う。
考え込んでいたサラさんが口を開いた。
「アキさん、剣を一つしか持っていかなかったんですけど、一刀ではどうだったんですか?」
僕と冬華ちゃんは当時を思い出し黙り込んでしまった。汐音君が不思議に思い問い掛ける。
「どうなんです?」
「いや、二刀流以外は……最初の頃に少しやってたような……」
それを聞いた二人は、茫然としてしまっている。そこに軽い口調で冬華ちゃんが口を開いた。
「まぁ、普通の剣は重くてお兄ちゃんじゃ二刀は無理だから仕方ないよ。これくらいならいけると思うけどねぇ」
そういうと冬華ちゃんはダガーを抜いて素振りをする。そこに誰かを見つめながら……
「ここでアキを心配しててもはじまらない、そろそろ出発しようか」
僕たちは城門を抜け城下町の外へと足を向ける。
荒れ果てた部屋にある鏡に映し出されたのは城門を抜ける四人。
その鏡を見つめる二人の女。
絹糸のようなサラサラの白い髪、透き通るような白い肌、真っ白のドレスを着た鋭い眼光を男に向ける紅い瞳の女
艶やかな黒い髪、透き通るような白い肌、黒いワンピースを着た光を灯さない黒い瞳の女
白い女が鏡を見つめ呟く。
「ヤツめ城を離れるか……準備をしておけ……」
「……はい」
黒い女は一つ頷くと部屋を出ていく。
白い女は男に怨念の籠った瞳で見据える。




