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あの人は今・・・

 アキと別れて二日目。マーサとサラはあの小屋を出てここリーフ村へ来ている。

 城下への定期馬車が明日出るということなので今はすることもなく宿屋で待機している。

 とはいえ、ボーッとしているだけではなく、薬草などの薬に必要な材料の買い出しもしている。

 しかし、それでも時間が空いていまい、サラはある人のことを思い出してしまう。

 ある日、召喚に巻き込まれてこの世界に迷い込んでしまった人。五十嵐空雄さん。最初の印象はそれほどいいものではなかった。いきなりわたしの下着を見るんだもの。なんて人って思ったけれど、わたしが油断して魔物に襲われそうになったとき危険を顧みず飛び込んできて助けてくれた。

 ホントになんて人なんだろう、死んでしまったら元も子もないというのに。きっと目の前で誰かが傷つくのを見たくないんだと思う。それが心配でならない。いつかそれがもとで命を落としてしまうんじゃないかって。

 お友達が行方不明と聞いてすごく心配していたし、手掛かりが見つかるとすぐに旅立って行ってしまった。もう少し自分自身の心配もしてほしいと思う。

 だからなのかな、こんなにもアキさんのことが気になるのは。だからこそ不安が消えない。予知夢のこともあるけれど、今回の仕事の前にお母さんがわたしを視てくれた内容が……


「運命の出会いと……そして別れ」


 お母さんの予見はよく当たる。予見士をしているから当たり前なんだけれど。

 その予見を聞いてわたしに運命の出会いなんてって思っていたのだけれど、どこかドキドキしていたのも確かだった。どんな人かなぁって密かに思っていたところへ別れ宣告……そのときは何とも思わなかったのだけれど、今はアキさんを知ってしまった。失いたくないと思ってしまった。今のわたしのこの感情がなんなのか、ただ心配なだけなのか、好意なのかもしれない、それがわかるまで一緒にいたかった。


「やっぱり、ついて行きたかったなぁ……」


 わたしはある物を胸に抱いて思う。

 わたしがアキさんを守るって約束したのに一人にしてしまうなんて……

 ちなみにこのある物というのは、アキさんの部屋に残されていて、こっそり持ってきたアキさんの着ていた服なのだけれど……アキさんが知ったらどう思うだろう? 大丈夫、アキさんがちゃんと戻ってくるようにわたしが預かっているだけなんだから。

 そう自分を納得させて顔をうずめてしまう、アキさんの鼓動を思い出すかのように。

 サラが自分の中に入り込んでいると背後から声が掛かる。 


「なにをやっておるのじゃ?」


 サラは不意に声を掛けられ心臓が飛び出すんじゃないかってくらいに驚いて、むち打ちになる勢いで顔を上げた。

「な、な、な、何って……その、に、荷物整理よ!」

 サラは慌てて苦し紛れの答えをひねり出した。

 マーサはため息交じりにサラに歩み寄る。

「そうは見えなかったがのう」

「……」

 サラは気まずさのあまり赤くなった顔をまたアキの服にうずめて隠してしまう。

「ハァ~そんなに惚れておるのか?」

 マーサの突然の問いかけに硬直してしまったサラははコクリと一つ頷いた。

 サラは心の中で想いの丈をぶちまける。

 最初に長々と言い訳じみた事言っていたけれど、そうよ! 好きになりましたとも! ……仕方ないじゃない、男性に免疫のないわたしが短期間とはいえ一緒にいて、優しくされて、その人のことだけ考えてたら好きになってもおかしくないでしょ! だからこんなにも心配なんじゃない! 

 なんてことは恥ずかしくて言えないサラは頷くことしかできなかった。

 そんなサラを見かねてマーサが背中を押すように言う。

「アキが元の世界に還るとは言ってもいつになるかわからんのだし、むしろ還れない可能性の方が高いわけじゃからのう。もしその時が来ても後悔しないのであれば、その気持ちを貫けばよかろう」

 サラはマーサのその言葉に微かな希望を見て顔を上げ笑顔で頷いた。

「うん!」

 マーサはそんなサラを茶化すようにいやらしい顔でとんでもないことを言い出してきた。

「なんだったら子供でももうけてみてはどうじゃ? アキがいなくなっても淋しくなくなるじゃろ。なんたって二人の愛の結晶じゃからな。ハッハッハッ」

「こ、ここここ子供!?」

 サラはは顔を真っ赤にして放心してしまっていた。

「おまえの場合はまず想いを告げるところからじゃな」

 マーサは放心してアワアワいているサラを見て呆れたように言ったが、もはやサラの耳にはその言葉は入ってこなかった。

「……子供……わたしとアキさんの子供……」

 サラは感情と思考とがない交ぜとなり卒倒してしまった。


 アキが今、リオル村で死ぬ思いで戦っていることも知らずに……


 今回短いですね


 サラがなんだか怪しい方向に向かっているような……

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