四話、姉が来た
〔冒険者ギルド〕
アーリアとルミナが庭にある井戸で顔を洗っていると何者かが近付いて来る音に二人は気付き振り返る。
「アーリア!」
振り返った先にいた少女がアーリアに駆け寄ると抱きしめて来た。
「ネーリアお姉様!?」
抱きしめられたアーリアは姉である事を理解すると驚く。
「どうやってここに?」
アーリアは驚きつつ姉に何故自分の居場所が分かったのか質問する。
「あなたが生きていたらギルドに登録すると思って昨日のうちにギルドに行ってあなたが入ったのか聞いたのですわ、それであなたがここのギルドで活動しているのを知り馳せ参じたと言うわけですわ」
アーリアは…教えないでよ…と思う。
「なるほどね、お姉様がここに来た方法は分かったよ、それで?お姉様は何しに来たの?」
アーリアは姉の目的を質問した。
「現在私はお父様が調べていた事を引き継いで調べているのですわ」
アレンの調べ事はまずはこの数百年間の王族の魔の証に対する認識が間違っている事を証明する事。
そして何故魔の証を持つ者を庇ったら王位を剥奪するようになったのか?と言う事だ。
「お父様と私の調べではやはりこの数百年間の魔の証に関する認識は間違っていますわ」
「だって建国者であるご先祖様が言った言葉だもんね」
建国者の言葉が正しくないなら何が正しいのだ?と言う話だ。
「王位の剥奪についても裏で糸を引いている者がいますわね、魔王となる者である魔の証を持つ者を庇った場合投獄せよと差し向けた者が、そしてその者達は自分達の言う事を聞いた王族をグランデウスの王として新たに据えているようですわね」
この数百年間魔の証を持つ子が産まれた場合殺す王族もいたが愛しい子を殺せず生かしていた王族もいた。
しかし大抵はバレてしまい陰で動いている者達は自分達の傀儡とした王族に現王の王位剥奪をさせ更に魔の証を持つ者の追放もさせる。
そうして言う事を聞いた王族を王と据えるように動いていたのだ。
「魔の証を持つ者を庇った王にだけ罪があると言う考え方のようですわね、ですから今回他の兄弟もお母様も投獄される事などないのですわ」
「なるほどねぇ…ならその陰でお兄様をそそのかした奴らもぶん殴る対象だね!」
自分が追い出された原因である陰で操っている者達もアーリアにとって復讐の対象となった。
絶対に許さない。
「さて、伝える事は伝えましたわ、私はこれから更に陰の者達について調べてみますわ、アーリア、あなたの方でも調べてくださいまし、私達はこれから同志ですわよ」
つまり二つ歳上の姉ネーリアはアーリアの味方と言う事である。
「分かった、一緒に頑張ろうね!お姉様!」
話している間ずっと姉の腕の中にいたアーリアは姉を抱きしめ返した。
「ふふふ、後、他のお兄様やお姉様方にも話して見たのですが、味方をしてくれるお兄様やお姉様もいそうですわ」
現状兄や姉達は暫く考えさせてくれとネーリアに伝えている。
しかしアーリアから見ると四つ年上の姉ラーリアも好意的な反応を見せていたためラーリアも味方になってくれそうだ。
「それは心強いね」
アーリアはまだ幼いため持っていなかったが兄や姉達はそれぞれ軍を持っている。
それが味方してくれればアーリアの戦力はかなり増える。
「ええ、それではこれからあなたは依頼に行くのではなくて?私も行っても良いかしら?少し時間があるのですわ」
ネーリアはアーリアが冒険者として働く様子を見たいため一緒に仕事に行こうと言った。
「うん、良いよ」
「そうと決まれば善は急げ依頼を受けに行きますわよ!」
ちなみにネーリアは前日のうちに冒険者登録をしているため一緒に依頼に行けば報酬が貰える。
「うん!」
アーリアは特に何も言う事がないため黙っていたルミナと共にギルド内に入る。
ギルド内に入った三人はクエストボードの前に立つ。
「ドラゴン狩りの依頼がありますわね!」
「行こっか!」
「姉妹揃ってドラゴンに対する拘りはなんなの!?」
さっきから黙っていたルミナがついに口を開いた。
「だってドラゴンだよ!凄いレベルアップ出来そうだよ!?」
「勝てるわけないでしょ!ダーメ!」
ルミナはこんな事で死ぬわけにはいかないため全力で止めた。
「えー」
「えーじゃなーい!今日はステップアップしてリザードマンと戦う予定なの!」
「リザードマンって強いの?」
「強いですわよ、腕試しには持ってこいですわ」
「ほはう、それは楽しみだね」
自分の実力は間違いなく向上しているのがアーリアには分かっている向上した力を試せるとアーリアは喜ぶのであった。
〔グラガス荒野〕
アーリア達は荒野をリザードマンを探して歩いている。
この荒野にいるのはサンドリザードマン。
川辺ではなく地上生活をする事を選んだリザードマンだ。
「それにしてもアーリア、ツノと尻尾似合っていますわね?元から付いていたかのようですわ」
今のアーリアの姿はまるで産まれた時からツノと尻尾が生えているかのようにしっくり来る。
何故ならこの一族は元々がサキュバス一族でアルゲイドが滅びて持っている国がグランデウスのみになり人間との交配を進めて行った結果、一時的に人間としての姿になっていただけでアーリアの姿こそ一族としては正しい姿なのだ。
「うん、私的にもずっと違和感あったのがなくなった感じ」
アーリアは産まれてから最近まで何が己の身体に違和感を感じていたが魔族として覚醒してその違和感がなくなった。
そのおかげで現在はとても快適に日常を過ごせている。
「ツノが可愛いわよね、クロワッサン型で」
「ですわね…私もサキュバスになりましょうか…」
そう言ってアーリアを見るネーリア。
アーリアと言うかサキュバスには人間をサキュバス化させる能力がありアーリアならばネーリアをサキュバスにする事も可能なのだ。
ルミナのような吸血鬼をサキュバスに変える事は出来ない。
「…ねっ?ご先祖様、人間をサキュバスに変えるのってどうやるの?」
アーリアはゼーリアに人間をサキュバスにする方法を聞いた。
『ん?人間のピー!に尻尾をピー!てサキュバス化液を出せばサキュバスになるぞ』
「…」
アーリアはゼーリアからサキュバス化させる方法を聞いて頬を真っ赤に染めた。
とても十二歳の子供がやれる方法ではない。
「どうしましたの?アーリア?」
「お姉様をサキュバスにするのは私には無理!」
「えー?あなたとお揃いが良いですのにー」
「ダメ!」
無理なものは無理とアーリアは断った。
「あなたが無理と言うなら仕方ありませんわね…」
ネーリアは嫌だと言ってるのに強要は出来ないため諦めた。
アーリアは姉とそう言う事をしなくて済んでホッとする。
「二人ともリザードマンがいたわ」
サンドリザードマンをルミナが発見した。
「うふふ、早速戦いますわよ!」
発見するのと同時にネーリアが駆け出した。
「!」
リザードマンは反応して舌を突き出して来た。
ネーリアはその舌を剣で斬り飛ばす。
舌を斬られたリザードマンは絶命した。
「アーリア!行くわよ!」
「うん!」
まだ剣を教わり始めたばかりそれでも才能があるアーリアは夢の中での鍛錬で基礎はもう出来るようになっていた。
迫るリザードマンの攻撃を避けた少女は剣を突き出して刺し貫いて仕留めた。
「やりますわね!アーリア!」
ネーリアは可愛い妹に良いところを見せようと魔法を放とうとするがその前にアーリアが動く。
「ダークボム!」
闇の炎を込めた爆発攻撃をアーリアはばら撒く。
「ぎゃぁぁ!!」
「ふふっ、これで終わりだね」
一気にリザードマンを仕留めたアーリアは小悪魔な笑顔を見せた。
「…」
ネーリアはアーリアの様子を見て少し考える。
「どうかした?」
ルミナはそんなネーリアに話しかけた。
「魔族化の影響でしょうか?少し精神的に凶暴化してるのかもしれませんわ」
「あーやっぱり?ちょっと好戦的だなと思ってたわ、でも人間から吸血鬼になった人も暫くの間は肉体の変化が精神に影響が出てしまうから、そのうち元に戻るんじゃないかしら」
「それなら良いのですけれど…ルミナ、しっかりと様子を見ていてくださいね?」
「分かった」
ルミナにとってアーリアは友達だ。
その姉に様子をしっかりと見ていてくれと頼まれたため様子を見ると約束する意味で頷いた。
「二人ともどうしたの?」
アーリアはどうしたの?と二人に話しかけた。
「なんでもありませんわアーリア、さっ町に帰りましょう」
「うん」
アーリアは二人と共に歩いて町に帰る。
〔グラガスの町〕
町に戻り報酬をもらったアーリア達はネーリアの場所の前に立っている。
「それでは私は帰りますわ、あなた達はこれからどうしますの?」
「私達はそろそろこの町から出ようと思ってるの、次の目的地はサキュバスの国のサキュメアだね」
「なるほどサキュバスを軍門に加えようとしているわけですわね?」
「そっ、だから次会いに来る時はサキュメアまで来てね?」
「分かりましたわ、それではアーリア、愛していますわ」
ネーリアは最後にアーリアを抱きしめた。
「えへへ、私も愛してる、お姉様」
アーリアもネーリアの胸に顔を埋め姉に甘えてから別れる。
「明日旅立つとしましょう」
「そうだね」
明日この町から離れ旅立つ事を決めた二人。
しかしそんな二人に危機が迫っている事にこの二人はまだ気付いていなかった。
〔???〕
「素材が必要でね?適当な町を襲って手に入れて来てくれたまえ」
陰の者達の一人が素材を手に入れて来てくれと少女に頼む。
「分かりました、明日、入手して来ます」
少女はその言葉に頷き準備を始めた。
この少女が襲うことに決めた町はグラガスの町だ。




