二話、止まらない襲撃
〔グランデウス王国〕
アッシュは焦っていた次々と襲い来る魔物達に。
せっかく国を手に入れたと言うのに度重なる魔物の襲撃。
しかも原因が分からないのだ。
「何故だ!何故急激に魔物の襲撃がこんなに増えた!?」
アッシュは苛立つ。
「わ、分かりません…」
「…あの落ちこぼれの呪いだとでも言うのか?」
アッシュはアーリアが既に亡くなっていると思っている。
十二歳の少女が広い荒野を渡り切れるわけがないと思っているからだ。
「とにかくだ!私の国を守れ!絶対にだ!」
「はっ!」
兵達はアッシュの命を受けて敬礼し出撃して行く。
「魔物共め…絶対に根絶やしにしてくれる…」
一方。
一人の少女が看守がいない隙を狙ってアレンの元にやって来ていた。
第二王女ネーリアである。
「お父様」
「ネーリアか」
「はい、聞きたいことがありますわ」
「良い、なんでも聞くと良い」
アレンは娘の質問を快く引き受けると言った。
「この異常な魔物の襲撃、やはりあの子が追放されたからですの?」
「そうだ、あの子に刻まれていた魔の証は我が国にとっては忌むべき紋章ではない…何故ならあの証はあの子が魔王となる者である事を示す証、魔物は魔王を恐れるからな、あの子がいるだけで覚醒前でも魔物避けとなっていたのだ」
父の話を聞きネーリアは呟いた。
お兄様…なんと愚かな…と。
「ネーリア、お前は優しい子だ、アッシュにアーリアを戻すように進言しようとしているのだろうがやめておけ、魔物の襲撃に間違いなく苛ついているアッシュに今そんなことを言えばお前も追放される、今は時を待つのだ、そうすればいつかあの子自身が我が国に戻って来るはずだ」
今は耐える時。
アッシュはネーリアにそう伝えた。
「分かりましたわ、お兄様への進言は致しません、しかし私からアーリアに会いに行くのは構いませんわよね?」
「うむ、しかしバレんようにな、アーリアと会っていると分かっただけで追放されるやもしれぬ」
「分かりましたわ、時を見てあの子に会いに国を出ます」
「頼んだぞ」
「はい、お父様、この話、お兄様やお姉様にも話しますわ」
「うむ」
ネーリアは父に一礼すると去って行った。
〔冒険者ギルド〕
初めて外の宿屋で泊まると言う経験をしたアーリアは健やかな朝を迎えていた。
「無能とか落ちこぼれとか言ってくるお兄様がいない生活ってこんなに快適なんだね!」
んー!快適!と少女は背伸びをした。
『国を出て良かったな、アーリアよ』
「うん!」
アッシュはもし生き残ったとしてもアーリアには苦しみが待っていると思っていたが。
この少女寧ろ快適に過ごしている。
頭の中にいるご先祖と自身の覚醒した力のおかげで。
「でもね?ご先祖様、お兄様って単純に言って馬鹿なんだけど、そんなお兄様があんな急に私を追い出そうとするかな?って、何か糸を引いてる人がいるんじゃないかな?」
『糸を引いている者か…我が討たれた時もきな臭い噂が流れていた、戦争など起こらぬように我はアホどもを潰して回っていたが、それが気に食わぬ奴等がな、どう言う者達か分かるか?』
「分かんない」
『戦争をビジネスと捉えている者達だよ、そう言う者達にとって我は邪魔な存在だからあの時、我だけに効果を限定した魔封じの陣まで形成して我を討ったのだろう』
ゼーリアが討たれた時彼女だけに効果を限定した魔封じの陣が掲載されていた。
いくらゼーリアでも魔法が使えない状態では無数の敵を相手にするのは厳しい。
そのためかなり善戦はしたが最終的には討たれてしまった。
「卑怯だね」
『うむ、しかし厄介だ、お前の兄を唆したのだとしたらこの時代にも奴等は存在してるのやもしれんからな』
まだこの時代にゼーリアを討った者達の後継者達が生きているのかは分からないしかし生きているのだとしたら非常に厄介だ。
アーリアは自分の命を狙われるかもしれないため警戒しなくてはと思う。
〔???〕
「例の王子が国を手に入れたんだってね?」
「あぁしかし突然魔物の襲撃が増えたようで支援を求めて来ている」
黒服を着た者達が会話をしている。
「魔物の襲撃…どうしてだい?」
「フン、その答えはわかりきっている、王子が報告して来たよ、第三王女アーリアの腕に魔の証があったとな」
「!、なるほど…そのアーリアが本物の魔王となる者で魔物達はその子を恐れて近付かないようにしていたわけだ、でもアーリアがいなくなったから一斉にグランデウスに向かってきているんだね」
「あぁあの国は非常に豊かな土地を持つからな、魔物達は豊かな地に集まる傾向がある」
男は舌打ちをした。
過去に先代達が討った魔王の後継者が産まれていたと言う事実に対して。
「まっそのアーリアが生き残っている可能性は低い荒野に捨てさせたからな」
「あーあ、かわいそうに美しい姫が今頃は魔物の餌か」
「フン」
男はアーリアが魔王の後継者が死んでいるかもしれないと想像し鼻で笑う。
しかし彼等には誤算がある何故ならアーリアは生きているからだ。
彼等がそれに気付くのはまだ先の話である。
〔冒険者ギルド〕
アーリアが朝食を食べていると目の前から黒髪の少女が歩いて来た。
アーリアはやって来た少女を見上げて首を傾げる。
「何か?」
何か用でもあるのか聞いた途端少女はアーリアの隣で片膝を着いた。
「私はエルサミア家のルミナと申します!あなた様のお力が覚醒したのを我が家が感知し馳せ参じました!」
「……………」
アーリアはこんな場所で片膝を着くルミナを見て周囲を見渡す。
そしてあっこれどうにか誤魔化さないとヤバいやつだと思った。
「もー!ルミナったら演技が上手いんだからー!ほら!部屋で練習しよー!」
仕方ないので演技と言うことにしたアーリアはしっかりと食べ終わっている食器を片付けつつルミナを引っ張って借りている部屋に向かうのであった。
「ちょっと、あなた!あんな目立つ所で何のつもり!?」
「何とは?エルサミア家のあなた様のご先祖様の片腕であった者の子孫である私が馳せ参じた事を伝えただけですが?」
ルミナは何かおかしな事した?と言いた気である。
(ご先祖様?この子が言ってる事はほんと?)
『本当だぞ、エルサミア家の者は我の片腕を務めてくれたいた者だ、うむうむ!変わらぬ忠誠心!実に素晴らしいな!エルサミアの者は強く使えるから手元に落ちておいた方が良いぞ、アーリアよ』
(ええー…)
あんな場所で名乗りを上げるルミナを側に置くのか?とアーリアは思った。
「ねぇルミナ、私が何をしようとしてるのか知ってる?」
「いえ、知りません」
「復讐だよ、私を追い出したお兄様をぶん殴るために魔王軍を復活させようとしているの」
「万死に値しますね、アーリア様を追い出すなどと言う不敬過ぎる事をした愚か者は」
「…」
アーリアはルミナの愚か者と言う言葉を聞いてあらこの子分かってるじゃんと思う。
正直言って今の言葉だけで気に入った。
「今の言葉は百点だよルミナ、決めた!あなたを私の片腕に任命する!一緒にお兄様ぶん殴ろう!」
アーリア的百点満点を出したルミナをアーリアは片腕とすると決めた。
「はい!」
「あっでも目立つからさっきみたいな事しちゃダメだよ?次やったら怒るからね、良い?あと敬語じゃなくて良いから、だって今の私は何でもないただのアーリアだもん」
怒ると言ったアーリアは本気なのがルミナには分かった。
「分かったわ…なんて呼べば良いのかしら?」
「アーリアで良いよ、ふふっ一緒にいるって時点で私達友達になるって事だもん」
「分かった、よろしくね!アーリア!」
「うん!よろしく!それじゃあなたの事教えて?私の事は知ってるみたいだし良いよね?」
「ええ、さっきも言った通り私はエルサミア家のルミナよ、見た目じゃ分からないだろうけど吸血鬼なの」
「吸血鬼!強そうだね!」
吸血鬼には何となく強いと言うイメージがあるアーリアは強そうだと言った。
「あなたほどじゃないと思うけどね?」
「ん?あなたレベルは?」
自分ほどではないと言ったルミナに対してアーリアはレベルを尋ねた。
「25よ」
「ふふふ、ふふふふふふ」
ルミナのレベルを聞いたアーリアは肩を震わせ笑い始めた。
ルミナはそれを見てこの幼さで相当なレベルなのでは!?と思う。
「何を隠そう!私のレベルは7だ!どうだ!あなたより弱いだろう!フハハ!」
「…」
ルミナは思った私より弱いんかいと。
ここでルミナのステータスを開示する。
レベル25、HPは345、MPは1406、力は2049、防御力は276となっている。
「だって私ついこの間追放されたばかりだもん、弱いに決まってるじゃん」
「主人より強い部下…」
ただレベル差を考えても大きなステータス差があるわけではない。
その理由はアーリアはレベル1時点からステータスが高いのだ。
その差が出ている。
「後、武器すら持ってない、買うお金なんてない」
残金5000ゴールドだ武器なんて買えるわけもない。
「貧乏主人…」
ルミナは思う。
これは自分も相当に頑張らなくてはならないぞと。
「と言うわけでとりあえずの目標は武器を買う事だよ」
「買わないとまともに戦闘すら出来ないものね…」
「そゆこと、出来ればあなたが持ってる立派なやつ欲しい」
黒くてかっこいい欲しいとアーリアは思う。
「これは七万ゴールドしたから今のあなたじゃそう簡単には買えないんじゃないかしら…」
「んー無理、そういえばルミナはお金持ってないの?」
「お父様がアーリアと一から大きくなって行けって旅費しか渡してくれなかったの…」
恐らくルミナの父は初期が貧乏なのを読んでおり娘の成長のためにも旅費しか渡さなかったのだ。
そのためルミナ自身は一文なしである。
ここに貧乏魔族コンビが爆誕したと言うわけだ。
「…よし今すぐ依頼受けよう!あなたを泊めるお金がなーい!」
「ヤバい!」
アーリアが食べると泊まるお金はあるがルミナの食べると泊まるがない。
そのためお金を今すぐにでも稼がなくてはならないのだ。
「まずはあなたの冒険者登録からやろう」
「そうね」
アーリアとルミナは話を終えると部屋から出てまずはルミナの冒険者登録をするために一階に降りて行った。
〔冒険者ギルド〕
追放されてから二日目相棒が出来たアーリアはその相棒ルミナをまずは冒険者登録させた。
「大型新人ばかりねぇ…」
アーリアはレベル1時点からなんかステータスがヤバい大型新人。
ルミナは十二歳なのにレベルが高い大型新人だ。
お姉さんはこんな新人が来る時点で冒険者ギルドと言う組織は安泰だと思う。
「それじゃ依頼を受けるよ!」
「はい来た!」
美少女二人でクエストボードの前に立つ。
アーリアはとある依頼を見て目をキラン!とさせた。
「ドラゴンだって!面白そう!倒しに行こう!」
「いやいや…無理だから…私のレベルでも手も足も出ないから…あなたの魔力が多いて言ってもね…」
魔力量が多く威力も高いがドラゴンに効くほどではないと言うのがアーリアの現状の魔法である。
『そう言うのに勝てるように割れが寝ている間に毎日鍛えてやるから今は我慢せよ』
サキュバスの特性の一つで夢の中での修行が現実に反映されると言うものがある。
そのためアーリアは眠っている間に修行をして剣技や魔法を鍛える事が出来るのだ。
ちなみにこれで鍛えてもレベルは上がらないあくまでも腕が上がるだけだ。
「はぁい…」
アーリアは思う武器もないしねと。
「とりあえずはゴブリンにしておきましょう、お互いの実力を見るのにも丁度良い相手よ」
「分かった、受けて来るね」
アーリアが依頼書を取り受け付けに向けて走って行った。
ルミナは思う普通ならば自分がこう言うのもやるべきなのだがと。
しかしアーリアは自分でやりたがりしかも行動が早いタイプであるためやる暇がなかった。
「受けて来たよ!行こっ!」
「ええ!」
二人はギルドを出てグラガス荒野に向けて旅立った。
〔グラガス荒野〕
「そう言えばアーリア、伝えておく事があるわ」
荒野を歩きつつルミナはアーリアに伝えておく事があると言う。
「何?」
「あなたが覚醒した事により全吸血鬼があなたの軍門に入るわ」
「へっ?世界中の吸血鬼が私が覚醒しただけで?」
様々な魔族達に会いに行って自分の軍門に入ってもらう予定であったアーリアであるが。
いきなり全吸血鬼が自分の軍門に入ったと聞きアーリアは戸惑うしかない。
『吸血鬼は義理堅い種族だからな、お主が覚醒したと言うだけでも軍門に入るには奴等にとっては十分な理由だ』
吸血鬼が特別義理堅いだけで他の種族がこんな簡単に軍門に入るかどうかは会いに行ってみないと分からない。
「そう…」
「まっ全吸血鬼が部下になったくらいではグランデウスには勝てないわ、最低でも後二種族は配下に加えないとね」
「なるほど」
三種族を配下とすればかなりの軍勢となる。
グランデウスとやり合うには十分だろう。
『その二種族のうち一種族はアテがある、サキュバスだ、お主はサキュバスにとっては姫君だからな、快く手を貸してくれるだろう』
(サキュバスの国は確かサキュメアだったね)
『うむ、もう少し金を稼いでからサキュメアに向かうぞ、アーリアよ』
「分かった」
次の行き先はサキュバスと交渉するためサキュメアに行く事が決まった。
「もう少しお金を稼いだらね?サキュメアに行こうと思ってるんだけど良い?」
ゼーリアと決めた事をルミナにもアーリアは伝える。
「良いわよ、あなたの軍門に入ってくれそうな種族と言えばサキュバスだしね」
ルミナもサキュメアに行く事に同意してくれた。
「あっ、ゴブリンの住処があったわよ、それじゃ私の力見せてあげる!」
話しながらルミナは言っていたのだ自分の力を見せると。
「ぎゃぁ!」
「がぁ!」
ゴブリン達はアーリアとルミナを見つけたようで騒いでいる。
ルミナはそれを見て剣を引き抜くと駆け出した。
「ぎゃあ!」
ゴブリンは汚れた武器をルミナに向けて振るうが少女は余裕で避け斬り伏せる。
「当たらないわよ!」
投げて来た岩も避け蹴り飛ばして仕留め最後は電撃魔法で一掃した。
「おー!つよーい!」
アーリアはルミナの活躍を見て拍手をした。
ルミナはその拍手を受けて胸を張った。
「次はあなたの番ね」
「うん!見ててね!」
二人は暫く歩きまたゴブリンさん宅を見つけると頭上に魔力の塊を作り出す。
「へっ…?」
ルミナはその魔力の塊を見て思う。
これがレベル7が作り出す攻撃魔法か?と。
「そいや!」
アーリアはそいや!と軽い声で魔力の塊を放り投げ地面に着弾した塊は爆発してゴブリン達ごとお宅を消し去った。
「……………」
ルミナはその威力に硬直した。
レベル低くても魔王となる者は魔王らしさたっぷりなのだなと思いつつ。
「どう!?」
投げ終わったアーリアは私ってどうかな!?と振り返る。
「将来的にとんでもない強さになりそうだなって思ったわ」
レベル7でこの馬鹿威力なのだからレベルが上がればとんでもない事になりそうと思うのは当然である。
「やっぱりー?私ってすごいかなー!?」
「超凄いわ」
「いえー!」
超凄いと言われたアーリアは喜びつつゴブリンを倒した証拠を集めてゼーリアに教わった保管魔法で保存する。
「それじゃ帰ろう」
「ええ」
依頼を完遂した二人は報酬を貰うためギルドに帰ってゆく。




