一話、初めての町!
〔グランデウス王国〕
玉座に満足気に座るアッシュの元に一人の兵が慌てて走って来た。
「何事だ?」
アッシュは兵に慌てている理由を聞く。
「ど、ドラゴンです!ドラゴンがこの王都に向けて向かって来たあります!」
「なんだと!?」
アッシュは十二年前から突然魔物が減ったこの国の統治など簡単だと思っていた。
しかし蓋を開けるといきなりのドラゴンの襲来だ。
アッシュはこの事実に焦る。
(どう言う事だ…あの落ちこぼれを追い出した途端に何故こうなる…)
アッシュは理解出来ずに考える。
アーリアを追い出した途端にドラゴンが襲撃して来た理由を。
「ええい!とにかく!迎撃だ迎撃せよ!」
「はっ!」
アッシュの命を受けてドラゴンを迎撃するため兵達が出陣する。
その結果今回は事なきを得たがグランデウスは次々と強力な魔物の襲撃を受け続けるようになる。
〔グラガス荒野〕
走っていると遂に川が見えて来たアーリアは目を輝かせて近付く。
「やっと水が飲めるよー!」
『待て愛しき子孫よ、飲める水か分からぬぞ、どれ解析魔法で調べてみよ』
「魔法…私に使えるんだ!」
アーリアはこの十二年間全く使えずそのせいでアッシュに落ちこぼれと言わ続けた魔法を自分が使える!と目を再び輝かせた。
『うむ、覚醒したお主ならな!』
ゼーリアは今のアーリアなら使えると保証した。
「…でも何の魔法使ったら良いのか分かんないんだけど」
魔法が使えないのは分かっているためアーリアには魔法は教えられていない。
そのため何の魔法を使えば良いのか分からないのである。
『解析魔法だ、アナライズだ』
「分かった、アナライズ!」
アーリアがアナライズと唱えると水の成分表が出て来た。
どうやら悪い成分は入っていない水のようである。
「安全に飲めるみたい」
『よし、喉の渇きを癒すが良いぞ!』
「うん!」
アーリアは手で水を汲んで飲む。
するとサキュバス化で復活した身体が更に回復して行くのを感じた。
尻尾は嬉しそうにるんるんと揺れる。
「はー…生き返るぅ…」
アーリアはホッと胸に手を当てた。
『水筒があれば保存出来るのだがなぁ…』
「ないからね…よし!また走ろう!」
『元気が良いなぁ』
アーリアは大きな川をジャンプして飛び越えた。
「…私凄いね」
かなり大きな川なのに飛び越えれてしまった事にアーリアは自分で自分にビックリした。
『さっきも言ったがお主は我の正統後継者だ、十二歳と言う幼さでも強いに決まっておる』
「どこまで強くなれるのか自分でも楽しみ!」
アーリアはさて行くかとまた走り始めた。
暫く走ると町が見えて来た。
『そろそろ走るのをやめておけ、猛スピードで走ってくる者が見えたら魔法を撃たれるぞ』
「!」
アーリアはゼーリアの言葉を聞いてブレーキして止まった。
「町に着いたのは良いんだけどお金ないんだよね…何も出来ない…」
『うーむそれは困ったな…』
アーリアもゼーリアもどうにかお金を稼がなくては…と思う。
そう思っているうちに町に到着した。
「おや?君みたいな小さな子が一人で来たのかい?」
すると入り口で警備している兵が話しかけて来た。
そして兵はアーリアが魔族だからと警戒することはない。
昔は戦争をしていたものの今は人間と魔族は共存しており街中に魔族がいることは当たり前なのだ。
「あーえーと…」
私は王女で捨てられました!などとは言えないためアーリアはどうしたものかと思う。
「もしかして新米冒険者かい?ギルドはあそこにあるよ」
兵はギルドと言う建物を指差した。
『ほほう!この時代にもギルドがあるのか!なら稼げるぞ!アーリアよ!』
「ありがとう」
「あぁ頑張ってね」
アーリアは兵にお礼を言ってからゼーリアと話す。
「ギルドがあるのは知ってたけど十二歳の私でも入れるのかな?」
『それは聞いてみないと分からん、それとお主の情報を偽造しておこう、昔のシステムが変わらんのならお主がグランデウスの姫であるのがバレてしまうからな、改変魔法をお主の情報に施しておけ』
「改変、モディファイかな?」
『うむ、ステータスとまずは唱えるのだ…路地裏でな』
公の場でステータスの改変などしていたら兵に逮捕されるかもしれないそのため路地裏で行った方が良い。
「だよねー」
アーリアは言われた通りトコトコと路地裏に入るとステータスの改変を行うために表示させた。
「これが私のステータスなんだね、レベル1…」
アーリアのステータスはHPが56MPが3600力が574防御力が45となっている。
「MPナニコレ…」
『覚醒したお主は魔法が大得意と言うことだ』
「ほへー…」
良く見たら力もとんでもないなとアーリアは思う。
そりゃ大きな川を飛び越えられるはずだ。
「名前はあったここにモディファイ!」
名前に向けてモディファイと唱えると変更するかどうか表示された。
アーリアは変更すると押すと書き換え欄が出て来たため名前を打とうとするが手を止める。
「何にしよう?」
『アルゲイドで良いだろう』
「良いね、私魔王になるんだし」
アーリアは名前をアーリア・アルゲイドに変更した。
「これで準備完了!ギルドに行こう!」
『うむ!』
アーリアはワクワクしつつギルドに入って行った。
〔冒険者ギルド〕
ギルドに入ったアーリアはキョロキョロと見渡す。
姫君がこんなところにやって来て何をどうすれば良いのか分かるはずがないのである。
「おっ?冒険者登録かい?お嬢ちゃん」
するとどこのギルドにも一人はいる親切なおじさんが話しかけて来た。
「うん、どこに行けば良いの?」
「カウンターだ、そこで登録出来るぜ」
「ありがと」
アーリアは男に微笑みかけつつお礼を言いカウンターに行く。
「初めまして、冒険者登録ですね?」
「うんお願いします」
「はい!これに触れてください!」
受付嬢が渡して来たプレートにアーリアは手を触れる。
すると先程見たステータスが表示される。
「…やけにMPと力が強いですね」
お姉さんもアーリアのMPと力が気になったようである。
「あはは…」
「まっ問題ありませんから登録しますね」
「うん」
お姉さんが登録処理を行う。
すると数秒でアーリアのギルドカードが完成した。
「こちらがあなた様のギルドカードです、なくしても無料発行致しますから、その際はお申し付けください、それでは楽しい冒険者ライフを!」
「おー!」
アーリアはギルドカードを城を出た時に着させられた町娘風な服のポケットに入れクエストボードに向けて歩いて行く。
(メイド達が言ってたの最初は薬草集めをするべきだって)
人がいるところでは口に出さず脳内で会話する事にした。
『そうだな、まずは基本に慣れるべきだ、行って来い』
(うん)
アーリアは薬草採取の依頼書を取りもう一度お姉さんの元に向かうと依頼を受けた。
(出発!)
少女は元気良くグラガス荒野に向かって行った。
〔グラガス荒野〕
幼いサキュバスがポツンと荒野に立っている。
尻尾はお悩み中な動きをしていた。
「問題ですご先祖様」
アーリアは荒野を見ながら先祖に問題を出した。
『どうした?愛しき子孫よ』
子孫可愛い状態なゼーリアは即返答する。
「こんな荒野に薬草ってあるのでしょうか!」
『探知魔法を使ってみよ、教えくれる…かも…しれ…ん』
「教えてくれなくてないかもしれないって事じゃん!」
アーリアは見つかるかなぁ?と思いつつも探知魔法を使ってみた。
「あるんだ…」
頭の中でビビビと音がし薬草がある場所が分かるようになった。
「そう言えばご先祖様、気になってたんだけど私が使う魔法ってなんか全部高位っぽくない?」
『覚醒した時点でお主の魔導スキルは6になっておるようだな、最初から魔法に関しては強いな』
他のスキルは淫魔43、魅了10、剣術1、力35、+MP増強50、古代魔法3、闇魔法7となっている。
スキルはマックスで100となっており100に到達すると上位スキルに移行出来るスキルもある。
アーリアが持っているスキルの中ではMP増強が既に上位スキルだ。
「…淫魔、そう言えばご先祖様、私ってエッチなことしないと生きていけないの…?」
十二歳であるが将来王家の血筋を残すためにも既にそう言う知識は教わっているアーリアは頬を赤く染めつつゼーリアに淫魔の食事をしなくてはいけないのか薬草を集めつつ聞いた。
『別にしなくても生きて行けるぞ、昔は男から吸収せんと飢えて死んでたが、そんな不便な生物そのうち全滅するからな、種族で一丸となって克服した…が、お主が想像していないモノが我等淫魔にとって美味なのは変わっておらん、もう少し大人になってからお主も食してみると良いだろう』
「淫魔の食事かぁ…」
アーリアは頬を真っ赤に染めつつそれをするとしても彼氏が出来てからが良いなと思う。
『なんだ軟弱な奴め、我など何人の男を食したか…』
「私はそう言うんじゃないの!好きになった人とだけが良いの!」
『んーサキュバスらしくないのぅ…』
ゼーリアはアーリアがそうしたいならそうすれば良いと思う。
「うん!集まったね、帰ろっか」
依頼書に書いてある十束集まった。
アーリアはこれでゴールドが貰えてとりあえずは宿に泊まれそうだと思う。
『とりあえずは稼いで武器を買わねばならぬ、丸腰で歩き回るのは危ないからな』
「だね」
自分でも危ないと思っているとアーリアは何か察知して振り返る。
そこにはゴブリンがいた。
「魔物!」
アーリアはどうしよう!と焦る。
『落ち着くのだ愛しき子孫よ、お主の魔法は中々のものであると言ったであろう、ダークボム、これを撃ってみよ』
「う、うん!ダークボム!」
「!?」
幼いサキュバスが攻撃して来るとは思っていなかったゴブリンは迫るダークボムに直撃して放ったアーリア自身がええ…となる威力に巻き込まれて木っ端微塵になった。
ゴブリンを倒した事によりアーリアはレベルアップしレベル5、HP85、MP4600、力743、防御力60となった。
「ごせんぞーMPの上昇幅がこわーい…」
レベルアップウインドウを見つつアーリアはMPの上昇率にビビる。
『ちなみに生前の我のレベルは9637でMPは1432453117575あった』
「あっ、私って普通だね」
比較対象がおかしいせいでアーリアの認識は一瞬でバグった。
『安心せよお主は普通ではない』
「だよねー」
何故ならレベル1が出せる魔法の威力ではないのは素人であるアーリアにも分かったからである。
「それはそれとしてゴブリンくらいならやれるね!」
『うむ、さっきも言ったがとりあえず武器を買わねばならぬ、そのための資金稼ぎとして何匹か倒してから帰るぞ!ついでにレベルアップだ!』
「おー!」
アーリアは町に帰還しつつゴブリン狩りを行うのであった。
〔ギルド〕
「…………」
お姉さんは帰って来たアーリアがゴブリンの討伐までやってのけたのを把握しポカンとする。
冒険者になった当日の十二歳の少女が出来る戦果では明らかにない。
ちなみにゴブリン狩りでアーリアはレベル7になっている。
「大型新人ねアーリアちゃん!」
ポカンから戻って来たお姉さんは期待してるわ!と親指を立てた。
「えへへー」
アーリアは褒められて満更でもなさそうに後頭部を触った。
「それじゃゴブリンを十体倒して帰って来てくれたので報酬は8000ゴールドです、明日からも期待してるわね!」
「うん!がんばるー!」
その頑張りの先の目標には兄をぶん殴ってやる!があるのがアーリアである。
「あーそうそう、ギルドにも宿はあるのでここを拠点にしなさい、あなたみたいな幼くて一人で行動してる子はそれが良いから」
一人で宿に泊まらせたら何が起こるか分からないためギルドの目が届くここの宿に泊まるようにお姉さんは言った。
「うん、分かった」
アーリアも危ないのは分かっているため頷く。
「それじゃお姉さん、また明日!」
「はい、また明日」
お姉さんと手を振って別れたアーリアはレストランフロアに行く。
するとまた親切なおじさんが注文の仕方を教えてくれたため千ゴールドでハンバーグセットを頼んだ。
「美味しい!」
初めて自分で稼いだお金で食べるご飯。
アーリアにはいつも以上に美味しい食事に感じられた。
『アーリア、アーリア、体の主導権を我に移すことも出来るのだ、そのうち我にも食事をさせておくれ?』
(良いよ、明日の朝代わるね?)
『お主は優しいなぁ…』
(優しい子は復讐なんて企んでないと思うけどねー)
何せ今兄の顔を思い浮かべたらぶん殴りたくなる。
なので代わりにハンバーグにナイフをブッ刺した。
『どーどー』
ゼーリアはそれを見て落ち着け落ち着けと言う。
「ふー…」
ご先祖のその言葉で落ち着いたアーリアは食事を再開した。




