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プロローグ、追放された王女魔族に覚醒する

〔グランデウス王国〕


グランデウス王国。


グランデウス家が代々王を務める王国でこの世界。


アルドラース有数の国力を持つ王国だ。


その王国には二人の王子と三人の姫君がいた。


「ふぁ…」


三人の姫君のうち第三王女アーリア・フォン・グランデウスは朝の七時頃目を覚まして体を伸ばす。


その動きで半袖のパジャマの腕の裾が下がりとある紋章が見えた。


これこそこの少女アーリアの運命を左右する紋章。


魔の証であった。


「あっ!わっ!」


数日前十二歳になったばかりのアーリアは裾が下がっているのに気付くと慌てて直す。


父と母からこの紋章は誰にも見られてはいけないと言われていたのだ。


そのためアーリアは普段から右肩を隠したドレスを着て絶対に紋章が見えないように過ごしていたのだ。


「…大丈夫だよね?」


周囲を見渡すとアーリアの事情を知っている王から紋章のことを絶対に漏らすなと厳命を受けているメイド達が入って来る前。


アーリアは誰にも見られていないとホッと胸に手を当てた。


しかしアーリアは窓の外で影が動いたのに気付いていない。


その者が見たものが自身の運命を決定付けると言うのに。


「おはようございます、アーリア様」


伸びをしているとメイド達が入って来た。


王に厳命を受けている信頼が出来る者達。


アーリアもかなり良くしてくれている彼女達を信頼している。


「アーリア様、今日のスケジュールですが…」


メイドの一人が一日のスケジュールを話す。


日々一国の姫としてのレッスンをアーリアは毎日こなしているのだ。


「はい、完成です」


メイドは優しく微笑みながら少女の身支度が完了した事を知らせる。


「ありがとう」


アーリアも優しく微笑み返した。



先程アーリアの部屋の中を覗いていた者がとある人物の元にやって来た。


「アッシュ様、こちらを」


「ほほう?これはこれは…」


アッシュは口元を釣り上げる。


今すぐにでも王になりたいアッシュはアーリアの肩に刻まれている証を見てこれは使えると思ったのだ。


「アーリアはどこにいる?」


「中庭でナタリア様とお茶をしている時間かと」


「よろしい、父上もその場に呼べ、邪魔者を一掃するぞ」


「はっ」


男は王を呼びに向かい。


アッシュは先に中庭に向かった。




中庭にてアーリアが母ナタリアとお茶をしている。


「今日はとても暖かいわね、アーリア」


「そうだね、お母様」


アーリアはポカポカ陽気に気持ち良さそうに目を細める。


そこにアッシュがやって来た。


「やぁアーリア」


「あっ…お兄様…」


アーリアはアッシュが苦手だ。


何故なら魔法を使えない自分をいつも落ちこぼれだと言って来るからだ。


「アッシュ?何か?」


ナタリアはアッシュを見て首を傾げた。


「今から父上がここにいらっしゃります、しばしお待ちを」


アッシュが言い終わった後父アレンがやって来た。


「アッシュよ?何事だ?」


アレンは嫌な予感を感じつつもアッシュの要件を聞く。


「父上、この落ちこぼれの肩にある、これ!」


アッシュはここでアーリアの服を破り肩を露出させた。


「は一体どう言う事ですか?」


「…」


やはりバレてしまっていたか…とアレンは思う。


「過去に決まったはずです、魔の証が現れた場合即座に始末すると、我が国に危険を及ぼすかもしらないからと、それなのに何故この落ちこぼれは生きているのですか?」


「…その決まりが間違っていると分かったからだ、お前も知っておろう?魔の証が刻まれた子が産まれたら守れ、その者こそこの世界に平穏をもたらす者なりと」


このグランデウスを建国したゼーリアの言葉である。


「父上は実に愚かですね、そんな迷信を信じ禁則を破るとは、決まりは決まり、これを破った者は王位を剥奪し投獄する、これを父上は知っているはずでは?」


「私はゼーリア様の言葉を信じたいのだ」


「愚か者め、さて、あなたの処遇は投獄と決まった、落ちこぼれ、お前は国外追放だ、流石にここまで成長した王族を殺すのは問題となる、だからお前を追放する」


アッシュはアーリアを国外追放すると伝えた。


「そんな待って!お兄様!」


アーリアは焦り待って欲しいと言うがアッシュが手を挙げると彼の部下である兵達がアーリアを拘束した。


「よせ!アッシュ!」


愛しい娘に対する荒い扱いを見たアレンは怒りを見せる。


「生きているだけでも罪なこの娘を捕らえただけです、さてアーリアよ、来てもらうぞ」


「待て!アーリア!アーリア!!」


アレンも拘束され必死に娘に向けて手を向ける彼はアーリアから遠ざかって行った。


「ククク、アーリアよ、落ちこぼれのお前も最後に俺の役に立ってくれたな?これで俺がこの国の王だ」


アッシュはアーリアに向けて邪悪な笑みを向ける。


「なんて…なんて下劣な!あなただけは絶対に許さない!」


アーリアは父を投獄するアッシュに向けて怒りを向ける。


「フン、魔法すら使えないお前が何を言っている、さて連れて行け、国外の出来るだけ何もない場所に捨てるのだ」


アッシュはアーリアを荒野に捨てる事で野垂れ死にさせようとしているのだ。


「アッシュ!あなただけは…あなただけは許さない!!」


アーリアの声を聞いてもアッシュはお前に何が出来ると笑うだけ。


アーリアは兵に引きずられこの場から引き離されると馬車に放り投げられた。





〔サールマーレ王国〕


サールマーレの荒野に馬車がやって来た。


アッシュはここでドアを開けるとアーリアを蹴り飛ばして放り出した。


「それではさらばだ、落ちこぼれ、精々長生きしてみせる事だな?」


アッシュはドアを開けたまま馬車を発振させると聞こえるように高笑いしながら去って行った。


「…」


アーリアは離れて行く馬車を暫く睨み付けた後立ち上がる。


「絶対に復讐してやる…」


父と自分に非道な行いをしたアッシュ。


アーリアは彼を絶対に許さないそう思いながら立ち上がった。


「でも…これからどうしよう…本当に何もない…」


周囲を見渡しても何もない馬車の中で水を一滴も飲ませてくれなかったためアーリアは現在非常に喉が渇いている。


「…」


いきなり死の恐怖にアーリアは襲われた。


「私に魔法が使えれば…」


そう思いながら少女は歩き始めた。


が歩いても歩いても川すらないこのグラガス荒野はサールマーレとグランデウスの国境に面した大地で両国共に資源すらないため価値なしと判断している場所だ。


こんな場所だからこそ国境に選ばれた経緯がある。


「はぁ…はぁ…」


王女として育てられ非常に健康な体を持つものの十二歳の少女の体力である事は何も変わりないアーリアは限界が来て地面に倒れた。


「こんなところで死ねるか…」


そう思いながらも意識は遠のいて行く。


アーリアは悔しさを感じながら意識を閉じた。




〔アーリアの精神世界〕


アーリアは気付くと真っ暗な空間に立っていた。


「ここは…私死んだのかな…」


アーリアは何も出来ずに死んだのか…と思い落ち込む。


「何を言っておる?お前はまだ生きておるぞ?」


するとどこかから声がした。


「誰!?どこにいるの!?」


「ここだ」


「!」


背後からの声に振り返ると自分を成長させたような姿をした女性が立っていた。


しかし頭にはツノが生え尻からは尻尾が伸びている。


「あなたは?」


「我はゼーリア、お主の国グランデウスの建国者である」


「ゼーリア様!?」


アーリアは目の前にゼーリアがいる事に驚く。


「あの…ご先祖様、私は死んだの?」


「さっきも言ったが死んでおらん、ここはお主の精神世界だ、そして我はお主が産まれた時からここにいたのだよ」


「ずっと私と一緒にいたって事?」


「そうだ、愛しき我が子孫よ」


そう言ってゼーリアはアーリアを抱きしめた。


アーリアはご先祖様に抱きしめてもらえて嬉しそうな顔を見せる。


「さて我が愛しき子孫よ、いつの間に我が子孫共はあんな愚かになった?我はお前のような者が産まれたら守れと言っておいた筈なのだがな…」


「その言葉は知ってるけどどうして私のような子が産まれたら守らないといけないの?」


「ククク、何を隠そう我は魔神でな、リリスサキュバスの中でも最上位に属する者なのだ、そしてお主は我の力を引き継いで産まれた者、お主がいるだけで魔物は恐れ国に平穏をもたらすのだ」


アーリアはそう言えばと思う。


確か自分が産まれてから魔物が大人しくなったとメイド達が言っていた。


「しかしお主が国から離れた、グランデウスは豊かな地を選んで建国した国でな?魔物達はその地を常に狙っておる、それなのにお主がいなくなればどうなると思う?」


「まさか…」


「そう、魔物共が次々とグランデウスに現れるようになるであろう、アーリアよ、お主は兄に復讐したいと言っていたが、手始めの復讐はお主が国を離れるだけで成せるぞ」


「私が国から離れるだけで…」


アーリアは思う。


それは良いとならば国から出来るだけ離れてやろうと思った。


「でもお父様やお母様が国にいるの…私二人には死んでほしくない…」


「グランデウスの軍は強い、お主が強くなって兄に復讐するために戻る時まで持つだろう、だから暫くは大丈夫だ」


「…分かった」


アーリアは胸に手を当てて父や母そして他の兄や姉の無事を祈る。


「さてさて、アーリアよ、お主には魔王となってもらいたい」


「魔王?私が?でも私魔法すら使えないよ?」


「それはお前が魔族として覚醒していないからだ、その手助けは我がしてやろう」


ゼーリアはアーリアの頬に手を添えると唇を奪った。


「ふぅ!?」


まだ十二歳と幼いとは言えキスをされたら流石に驚く。


「んん!?」


暫くしてゼーリアが唇を離すとアーリアの体が一気に熱くなった。


「ふんん!?」


熱さが全身に広がると頭からツノが生え尻からは尻尾が生えた。


アーリアは通常のサキュバスとして覚醒したのである。


「はぁはぁ…私…本当に魔族なんだ…」


アーリアはツノと尻尾を確認して自分は魔族なのだと認識する。


「これから経験を積めばお主は進化し最終的には我と同じリリスサキュバスにへと至れる、その時こそ兄に復讐を果たす時だ、お主の軍、魔王軍と共にな?」


「魔王軍…」


「そうだ、我は国を二つ持っていてな、今は我が死した事でなくなっている魔帝国アルゲイドの軍はかつて魔王軍と呼ばれていた、お主にはその魔王軍を再建してもらう」


アーリアは思う兄を倒した後はその魔王軍で世界征服でもさせる気なのでは?と。


「ククク、安心せよ、魔王軍と言う名で勘違いしたようだが、我の先代の魔神共とは違ってな?我は人も魔族も愛する魔神なのだ、だから当時も魔王軍を使って愚か者共を懲らしめていた、まぁそれが原因で恨まれて討たれたのだがな…」


その結果グランデウスは残ったがアルゲイドは消えてしまったのである。


「それなら良いや、お兄様を倒した後は私、世界の平和を守る魔王になるよ!」


「うむ、それでこそ我の跡を継ぐ者だ、それではアーリアよ、面白いものが見れるから現実に戻るぞ」


「うん」


ゼーリアの言葉の後アーリアの意識は浮上して行く。




〔グラガス荒野〕


グラガス荒野にてアーリアは目を覚ます。


身を起こすと身体がやけに軽い事に気付いた。


「わっ!こっちでもツノと尻尾生えてる!」


アーリアはツノを触り尻尾をフリフリと動かして見せた。


『ククク、言ったであろう?お主は我の跡を継ぐ者なのだ、そんな事よりも、来たぞ』


「!」


「ガァァァ!!」


恐ろしい叫び声が空に響く。


その声の主は荒野にポツンと立つサキュバスの姿を見ると目の前に降りて来た。


「きゃあ!?」


アーリアはその風圧で押されて尻餅を着く。


「グルル…!?」


ドラゴンはアーリアを喰らおうとしたが突然何かに気付き慌てて飛び去って行った。


「な、なんで?」


『お主は魔の王となる者、お主の秘めた力に恐れを成したのだ』


「…私ってもしかして凄い?」


『うむ、凄いぞ』


「おおー…」


凄いんだ!と思うアーリアは軽くなった身体を活かして走り始める。


目指す先は進行方向にあるかもしれない街だ。


『おうおう元気が良いな?…進行方向に街があるか分からんぞ?』


「大丈夫だよ!体軽いし!跡喉が渇いてるから早くお水飲みたいの!」


とりあえずは川を見つけたいのである。


『ふむ、まぁ好きにするが良い、食料も水も我等サキュバスには必要な物、接種しなくては死ぬからな』


「だよね!だから出来るだけ早く見つけるよ!」


アーリアは水を見つけるため全力ダッシュをして猛烈な速さで荒野を通り抜けて行った。



こうして始まる。


アーリア・フォン・グランデウスによる物語が。

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