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第139話 女の勘ってやつか?

研究所を出たときには、もうかなり遅い時間になっていた。


僕は宿へ戻るため、美咲さんの車に乗った。


車が走り出してしばらくすると、美咲さんが尋ねた。


「でも、さっき私がコンビニから戻ったとき、二人とも少し様子が変でしたよね。」


女の勘ってやつか?


僕は少し考えてから言った。


「綾乃さんが僕の腕をつかんでたんですけど、ちょうど運転手さんと会ったんです。」


美咲さんが前を向いたまま尋ねた。


「腕をつかんでたんですか?」


「はい。ただ話してただけなんですけど。」


僕はもう少し説明しようとして、やめた。かえって変な誤解をされそうだった。


「それで二人とも、あんなに静かだったんですね。」


美咲さんがしばらく何も言わなかった。


僕も特に言うことがなく、窓の外を見た。


「綾乃さん、意外とけっこう積極的なんですね。」


「はい?」


「私がいない間に、そんなことまでして。」


僕は美咲さんを見た。


美咲さんが笑った。


「冗談です。」


「……はい。」


しばらくして、宿の近くに着いた。


「また明日。」


「はい。気をつけて帰ってください。」


車を降りてから、美咲さんの車が遠ざかっていくのを少し見ていた。


そのまま宿へ上がろうとしたが、近くのコンビニが目に入った。


急に缶コーヒーが飲みたくなった。


韓国で飲んでた缶コーヒーは……ないだろうな?


飲み物が並んでいる棚を見ていると、変わったデザインの缶コーヒーが目に入った。


BOSSという文字が英語で大きく書かれていて、缶にはパイプをくわえた男の横顔のような絵も描かれていた。


どういう意味でこんな名前をつけたんだろう。あの男がボスなのか?


少し眺めてから、一つ選んだ。


会計を済ませたあと、スマートフォンを確認した。


不在着信が一件あった。


イ・ジフンチーム長だった。


画面をしばらく見た。


なぜ電話してきたのかはわからなかった。


かけ直せばわかるだろうが、わざわざ声を聞きたいとは思わなかった。


僕はスマートフォンをポケットに入れた。


宿へ戻ってから、缶コーヒーを一口飲んだ。


「悪くないな。」


気軽に飲むにはちょうどよかった。


コンビニに寄ったら、種類ごとに一つずつ買ってみようと思った。


少し休んでから、母に電話をかけた。


何度か呼び出し音が鳴ったあと、母が電話に出た。


「何してたんですか?」


―何もしてないわよ。あんたは今帰ってきたの?


「はい。今日も少し遅くなりました。」


少し話をしているうちに、会社の話になった。


―会社、あんなふうに辞めちゃって大丈夫なの?


「大丈夫です。あまり心配しないでください。」


―心配しないでいられると思う?


「ちゃんと自分で何とかしますよ。」


母がしばらく黙ってから言った。


―韓国に帰ってきたら、紹介しようと思ってた人がいたのに、会社まで辞めちゃってどうするの。


僕はそれを聞いて、むしろよかったと思った。


「じゃあ、その話はなしにしてください。」


―どうして?


「今は誰かを紹介してもらうつもりはないです。」


そのとき、ふと思い出したことがあった。


「ところで、一つ聞きたいことがあります。」


―何?


「祖母の資料の中に、病院でもらったみたいな書類がいくつかあったんです。」


―病院?


「はい。祖母は体が悪かったんですか?」


母が少し考えてから言った。


―病院にはよく通ってたって聞いたことはあるわ。


「どこが悪かったんですか?」


―さあね。どこがどう悪かったのかは、私もよく知らないの。


母ともう少し話してから電話を切った。


僕はスマートフォンを置こうとして、LINEのグループを開いた。


[祖母が病院に行ったときの資料みたいなものもありましたけど、何かわかりましたか?]


遅い時間ではあったが、今日も遅くまで一緒に資料を確認していたので、聞いてみた。


しばらくして、綾乃さんから返事が来た。


[まだです。聞けそうな人が見つからなくて。]


すぐにもう一つメッセージが届いた。


[あ、それと、南宮さんが明日来るそうです。]


南宮熙(ナムグン・ヒ)。


綾乃さんが、祖母の読みにくい韓国語の資料の確認を頼んでいた人だった。


どんな人なんだろう。


僕はしばらく、その名前を見つめた。


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