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第114話 思ったより遠いです

僕たちは、インターネットで調べた店に着いた。


メニューには、アジア各地の料理が並んでいた。


「私は豚クッパにします。」


綾乃さんが先に言った。


「私も。」


美咲さんもメニューを閉じた。


「じゃあ、僕も同じものにします。」


それほど待たずに、器が三つテーブルに置かれた。


湯気が上がった。


スープの中には豚肉がたっぷり入っていて、横にはご飯とニラ、アミの塩辛が添えられていた。


綾乃さんが先にスープを一口すくって飲んだ。


「豚肉のスープだから、もう少し濃いと思ってましたけど、思ったよりあっさりしてますね。」


美咲さんもスープを一口飲んだ。


「そうですね。豚肉の臭みもあまりないですし。」


僕はアミの塩辛を指した。


「少し味が薄いと思ったら、これを入れてみてください。」


「どれくらい入れればいいですか?」


「最初は少しだけ入れてみてください。」


綾乃さんが少し取って、スープに入れた。


もう一口飲んだ綾乃さんが言った。


「あ、少し変わりましたね。」


美咲さんはニラも一緒に入れた。


僕もスープを飲んだ。


熱いスープが口の中に広がった。


豚肉は思ったより柔らかく、スープと一緒に食べても重たく感じなかった。


ご飯を少しずつスープに入れた。


スープを吸ったご飯と豚肉を一緒にすくって食べた。


「これ、おいしいですね。」


僕が言うと、美咲さんが笑った。


綾乃さんもご飯をスープに入れた。


「私も気に入りました。」


僕たちはしばらく、特に話もせずに食べた。


食事がある程度進んだところで、美咲さんがスプーンを置いて言った。


「これを食べてると、前に大洲で食べたとんくりまぶしを思い出します。」


綾乃さんが顔を上げた。


「とんくりまぶし?」


「愛媛県大洲のご当地グルメです。豚肉と栗を、ご飯と一緒に食べるんです。」


僕は美咲さんを見た。


「豚肉と栗ですか?」


「はい。最初はそのまま食べて、途中からだしをかけて食べます。お茶漬けみたいに。」


「珍しいですね。」


「思ったより合いますよ。」


美咲さんは、前に大洲へ行ったときに実際に食べたことがあると言った。


昔からある郷土料理というより、比較的新しく作られたご当地グルメだとも付け加えた。


綾乃さんが言った。


「じゃあ、次はそれを食べに行きましょう。」


美咲さんが笑った。


「それは大洲で直接食べたほうがいいと思います。ここから行くと、かなり遠いですよ。」


僕はスマートフォンで大洲の場所を調べてみた。


「食事だけしに、ちょっと行ける距離ではないですね。」


綾乃さんが僕のスマートフォンの画面を見て言った。


「そうなんですね。思ったより遠いです。」


僕たちはまた豚クッパを食べた。


スープは最初より少し冷めていたが、ご飯を入れて食べるにはむしろ食べやすかった。


僕は残った豚肉とご飯を一緒にすくって食べた。


「ごちそうさまでした。」


僕たちは店を出て、また研究所へ戻った。


一階へ入ったあと、僕はノートパソコンをもう一度立ち上げようとした。


そのとき、綾乃さんが言った。


「前にお預かりした資料なんですけど、南宮さんに送りました。」


僕は手を止めた。


「祖母の資料ですか?」


「はい。ただ、原本を送ったわけではありません。判読が難しかった韓国語の資料をデジタル化して送りました。全体の状態と細部の両方を確認できるように整理してあります。」


「それで少し時間がかかったんですか?」


「はい。送るだけならすぐできました。でも、確認する人が資料の状態をきちんと見られるようにしておく必要がありましたから。」


「手紙も送りました?」


「いいえ。」


綾乃さんがすぐに答えた。


「手紙はまだ私が持っています。貼りついている部分もありますし、先に保存処置が必要ですから。そちらは私が直接作業しないといけません。」


僕はうなずいた。


「あの銀色の装飾品は?」


「それは別の方に送りました。正確には、写真と寸法などの資料だけです。古い装身具に詳しい方です。」


「何て言ってました?」


「写真で見る限りでは、特別に珍しいものや、とても高価なものには見えないそうです。ただ、もう少し細部を見る必要があると言っていました。」


専門家ではない僕が見ても、高そうなものには見えなかった。


祖母はどうしてこれを保管していたのだろう。


綾乃さんが続けた。


「それと、南宮さんには、この資料を調べることになった事情までは話していません。」


「どうしてですか?」


「依頼者の個人的な事情を、私の判断で外部の人に話すことはできませんから。今は、資料を確認するために必要な範囲だけ伝えています。」


「そうなんですね。」


「ただ、今後、書いた人が誰なのか、資料が残った経緯などの情報が追加で必要になることはあるかもしれません。」


綾乃さんがファイルを一つ取り出した。


「それで、こちらもお願いします。」


「何ですか?」


「外部の専門家に資料を見てもらうとき、どこまで情報を開示していいかを決める同意書です。」


僕は書類を受け取った。


情報をどこまで開示するかによって、いくつかの項目に分かれていた。


「必要な場合も、この範囲内でだけ情報を開示します。それ以上が必要になったら、また確認します。」


僕は内容を一度読んでから署名した。


綾乃さんは書類を受け取り、もう一度確認してからファイルに入れた。


「ありがとうございます。」


「いえ。」


仕事のことになると、綾乃さんは本当に徹底していた。

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