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元妻がサキュバスになって敵側の弁護士!?人類の運命をかけた裁判で俺と戦うらしい  作者: アラベ幻灯


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3/5

『全員、壊れた。――“悪魔の関与ゼロ”が証明された瞬間、人類が発狂した』

これ、マジでヤバい回です。


今回はついに「証拠」が出ます。

しかも――悪魔の関与が完全に否定される証拠です。


その結果どうなるか?


安心とか納得じゃありません。


人類が壊れます。


裁判なのに、法廷なのに、

誰も止められません。


「もし本当に、誰のせいでもなかったら?」


その答えが、この回です。

 それは――証人などと呼んでいい存在ではなかった。


 法廷の扉が、音もなく開く。


 そこに“入ってきた”ものを見た瞬間、誰もが理解した。


 これは、生き物ではない。


 概念だ。


 トム・ピプキン。


 全知の神。


 人の姿をしているはずのその存在は、しかし完全には擬態しきれていなかった。


 その輪郭は揺らぎ、顔は定まらず、まるで「誰かの記憶の寄せ集め」のように歪んでいる。


 瞬きをするたびに、背後に“別の何か”が透けて見えた。


 巨大な二つの眼。


 無数の白い翼。


 そして、燃え続ける炎。


 それは一瞬で消える。


 だが、見た者の脳には焼き付いて離れない。


 人類側の席から、かすかな悲鳴が漏れた。


 誰もそれを責めなかった。


 責められるはずがない。


 理解が追いつかないのだから。


 ただ一人、リリスだけが微笑んでいた。


「ようこそ、トム・ピプキン。待っていたわ」


 その声に応じるように、トム・ピプキンは証言台へと歩み出る。


 その動きすら、どこか現実からズレていた。


 足音は遅れて響き、影は別の方向へ流れている。


 ゼンタイが静かに頷いた。


「証言を許可する」


 リリスは優雅に一礼し、言った。


「閣下。本証人は、ある映像を提出してくれました。

 教皇インノケンティウス八世――その在位中の観測記録です」


 ざわめきが広がる。


 人類側の何人かが、わずかに安堵の表情を浮かべた。


 ――教皇ならば。


 ――きっと、悪魔の関与があるはずだ。


 その空気を、アダムは確かに感じ取っていた。


 そして同じ期待を、彼自身も抱いていた。


「……上映を許可する」


 ゼンタイの一言で、法廷の光が落ちる。


 暗闇。


 そして――映像。


 スクリーンに映し出されたのは、確かに教皇インノケンティウス八世の姿だった。


 豪奢な衣装。


 威厳ある振る舞い。


 しかし。


 誰もがまず目にしたのは――その“色”だった。


 淡く、しかしはっきりと輝く。


 緑。


 人類の証。


 アダムは息を呑んだ。


 だが、まだだ。


 ここからだ。


 誰かが囁くはずだ。


 どこかで、赤が混じるはずだ。


 誘惑。


 堕落。


 悪魔の影。


 だが――


 時間が過ぎる。


 一分。


 二分。


 三分。


 映像の中で、教皇は腐敗していく。


 権力に溺れ、欲望に従い、堕ちていく。


 だがその全てが――


 緑のままだった。


「……赤が、ない……?」


 誰かが呟いた。


 その声は、やけに大きく響いた。


 誰も否定できなかった。


 どこにもない。


 悪魔の痕跡が。


 混じりすらしない。


 完全な、純粋な――人間の選択。


 アダムの手が、わずかに震えた。


 そのときだった。


 カン、と小さな音がした。


 誰かが椅子を動かしただけの音。


 だがそれが、引き金になった。


 一人の人間が立ち上がる。


 意味もなく。


 理由もなく。


 ただ、動かなければならないように。


 彼は近くの石材を掴んだ。


 そして――積み始めた。


 カン、カン、カン。


 誰も止めない。


 止められない。


 別の人間がそれを見て、同じことを始める。


 また一人。


 また一人。


 やがてそれは“作業”ではなくなった。


 衝動だった。


 人類は、建て始めた。


 法廷の中で。


 柱の間に。


 椅子の上に。


 床を突き破り、石を積み上げ、構造を無視して上へ上へと伸ばしていく。


 まるで、何かから逃げるように。


 理解から。


 現実から。


 あるいは――神から。


 アダムは動けなかった。


「……やめろ……」


 声が出ない。


 誰にも届かない。


 その間にも、建築は加速していく。


 いつの間にか、それは“都市”になっていた。


 そして頂点。


 最も高く積み上げられた場所に、一団が集まる。


 楽器を持っていた。


 いつの間に用意されたのかも分からない。


 彼らは演奏を始めた。


 ロックンロール。


 原始的で、衝動的で、どうしようもなく人間的な音。


 その音が、空間を震わせる。


 波が広がる。


 圧縮され。


 歪み。


 そして――弾けた。


 光。


 爆発。


 小さな宇宙が、そこに生まれた。


 星が瞬き、銀河が回転し、音楽とともに膨張していく。


 その中心で、彼らはまだ演奏していた。


 狂ったように。


 いや、むしろ正気のままで。


 だからこそ恐ろしかった。


 その下で。


 人類はさらに分裂する。


「これは我々のものだ!」


「いや、我々の都市だ!」


 誰もが正しい理由を持っていた。


 だからこそ、争いは止まらない。


 武器が生まれ、衝突が起き、戦争が始まる。


 すべて、法廷の中で。


 すべて、人間だけで。


 その光景を――


 悪魔たちは、静かに見ていた。


 誰一人として、動かない。


 やがて一人が、床に膝をついた。


 土などないはずの場所に、手を差し入れる。


 そこには、あった。


 いつの間にか。


 黒い土が。


 彼は種を撒いた。


 無言で。


 他の悪魔たちも、それに続く。


 耕し、植え、水を与える。


 規則的に。


 機械のように。


 やがて芽が出る。


 成長する。


 赤い光をわずかに帯びた――奇妙な麦。


 それは、戦争の振動にも、爆発にも、宇宙の誕生にも関係なく、


 ただ静かに、育ち続けた。


 まるで、最初から決まっていたかのように。


 アダムは、その全てを見ていた。


 理解できなかった。


 したくなかった。


 だが、目を逸らせなかった。


 そのとき。


 椅子が、きしむ音がした。


 リリスだった。


 彼女はゆっくりと腰を下ろし、足を組む。


 その表情には、勝利の色があった。


「……ねえ、ダーリン」


 彼女は、楽しげに微笑む。


 手に取ったのは、真っ赤なチェリー。


 指先で転がし、口元へと運ぶ。


 舌が、ゆっくりとそれをなぞる。


 わざとらしく。


 挑発的に。


 そして――


 くすり、と笑った。


「これでも、まだ……私たちのせいにするの?」


 その一言が、何よりも鋭く、アダムの胸に突き刺さった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。


この章で起きたことはシンプルです。


“他人のせいにできなくなった瞬間、人は壊れる”


アダムはまだ壊れていません。

でも――時間の問題かもしれません。


そして次は、逆です。


今度は悪魔側が揺らぎます。


ここからが本番です。


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