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「神の子」  作者: 新竹芳
98/100

第98話 融合

この話を入れて、あと3話となりました。

やっと着地点が見えてきました。

是非、読んでみてください


(聞こえるか、ジョーカー)

(……)

(聞こえているんだろう?もう、あまり時間がない。)

(…………)

(命令する、わが従属の魔獣・ジョーカー。すぐに返事をしろ!)

(はい、ディッセンドルフ様。ですが、わたくしは従属の見にも拘らず、ご主人様に叛意し、あまつさえその体を、噛み砕き傷つけてしまいました。もう、お話しすることさえ、許されざることなのです。)

(あの行為はは、お前の叛意ではない。クソッたれの「神」に弄ばれた結果だ。わかっているだろう?)

(そうですが、しかし……)

(傷などすぐに治る。俺は今、お前を失う事の方が恐ろしい)

(私は私が許せないのです)

(我が許す)

(ご主人様。しかし…)

(「神の子」ディッセンドルフの使い魔であり、従僕であるジョーカーに命じる。我と共に「神」と戦え‼)

(御意‼)









 凄まじい量の光が一瞬、この世界を白く染め上げ、そして一気に消えた。


 そこには大きな剣を携えた上半身裸のディッセンドルフが立っていた。

 あれ程周りに溢れていたジョーカーたちは完全に消滅している。


 ジョーカーがいなくなり、持っていなかったはずの大きな剣がディッセンドルフの右手に握られている。

 ジョーカーに壊された右肩や背中の爪痕は綺麗に修復されているようだ。


「大将、無事か?」

「ああ、問題ない。」


 そう言うと岩の前の老人にその瞳を向ける。

 老人はそんなディッセンドルフを見て片頬をあげるような笑みを見せた。

 そして、そのディッセンドルフの瞳が吸い込むような漆黒の色を見た。


「宇宙を見る目に変わったか、「神の子」よ。」


 そう告げた一瞬、ディッセンドルフの身体が駆け抜けた。

 その後には老人の足元にその老人の首が転がっていた。

 が、一切血が出ない。

 その切断面は暗黒の靄のようなものがたゆっていた。


 神獣の構成要素で作られた大いなる神剣の威力であった。


「うむ、判断も間違ってはいないな、ディッセンドルフ。では連れて行こう、我が世界へ。」


 転がっている老人の口からそんな言葉がそこに居る者たちに伝えられた。

 さらに首のない老人の身体が動き、いつの間にかその左手に杖が握られていた。

 その杖を高々と上げる。


 セノビックがその杖に気付いた。


「魔術誘導杖?いつのまに?」

「では、あの上部にある球体に魔導構成数式図が組まれているという事ですか、セノビック殿。」

「おそらく。だが、ここは「神」が作り出した世界、のはずです。そのようなものが必要なのでしょうか?」


 オオジコバの問いかけに、セノビックがそう応じた。

 そしてさらなつ質問を自分たちの元に戻ったディッセンドルフに向けた。


「皆は気にしなくていい。ただの様式美だと思え。我を誘うための行動だ。」


 セノビックもオオジコバも、そしてアンドリューもディッセンドルフが変わり始めていることを痛感した。

 言葉も、態度も。

 それが、より「神」に近づき、その「神」を葬るための変化であることも。


「奴は逃げるわけではない。ただ我を、そして皆を誘ってるだけだ。」


 ニシムロがディッセンドルフのもとに歩み寄り、声を掛ける。


「ついていく決心は出来た、という事でいいんだな。」

「最初からそのつもりだ、始祖よ」

「その呼び名は止めてくれ。俺はただの傭兵、ニシムロだ。」


 そのニシムロの言葉にディッセンドルフは瞳を向けるだけで、了解の意を込めた。


 5人が集まったことに対して、転がっている老人の首の表情が笑っていた。


「全力で来い!「神の子」ディッセンドルフ。」


 老人の高く上げた杖鈍く光を放ち始めた。

 そのまま、その杖がすぐそばの岩に叩きつけられた。


 重い音がこの草原に響く。

 岩が綺麗に直線のひびが入る。

 数拍を置いて割れた。

 その表面には白い闇の中に靄が漂う「神の世界」が現れた。


「待っているぞ、「神の子」。」


 老人はそう言って自分の首を拾い上げ、その岩の中に飛び込んだ。


「相変わらず、拙速な奴だ。」


 ニシムロの独り言は、明らかに「神」と近い立場であることを示唆していることを示していた。

 オオジコバは、しかし、もうそのことには触れない。

 ディッセンドルフが何も言わない以上、もう従うだけだ。

 自分に与えられた「神殺し」という【言霊】は、「神の子」ディッセンドルフのためのものであることを、自覚していた。


 セノビックもまた、「正義の目」がディッセンドルフにとって、なくてはならないものであることが分かっていた。

 この「神の世界」という精神世界で、確実に「神」の所在を知るための羅針盤として必要だった。


 二人とも、先のジョーカーとの闘いから、その神獣へと昇華した「心」をディッセンドルフが吸収したことを理解していた。

 上半身の筋肉は、明らかに今までのディッセンドルフのものではなかったのだから。


「先輩、俺は最後まで一緒だぜ。」

「わたくしもディッセンドルフさもと共にまいります。」


 オオジコバとセノビックがディッセンドルフに跪き、そう誓った。


 ディッセンドルフはその二人を静かに見下ろした。


「ともに新しい世界を目指してくれるのだな、オオジコバ、セノビック殿。」

「「御意‼」」


 その瞬間二人の身体が細かい光の粒子に分解され、そのままオオジコバが右手に、セノビックが左目に吸い込まれて行った。

 ディッセンドルフがそのまま崩れ落ちるように膝をつき、両手を地に着いた。

 そして荒い息が繰り返された。


「大丈夫ですか、旦那様。」


 アンドリューが駆け寄り、ディッセンドルフの逞しい上半身を背中から抱きしめた。


 その状態で数回深呼吸をする。


「ああ、アンドリュー、大丈夫だ。二人とも我の身体の一部になった。問題ない。」


 そう言って立ち上がり、そのままアンドリューを抱きしめた。


「わ、わたくしも…。」


 アンドリューが抱かれながらディッセンドルフの耳元に呟く。


 しばらく抱きしめながら目を閉じていたディッセンドルフが、アンドリューからその身を離した。

 そしてアンドリューの下腹部に手をかざす。


 その柔らかな接触にアンドリューの身体が微かに震えた。


「元気そうだな、我の子は。」


 そう言ってほほ笑み、アンドリューの目を見た。


「我は大丈夫だ。この子らのためにも、そなたとの「融合」はしない。してしまえば皆我になってしまう。それは避けたい。」


 アンドリューが言っている意味を理解するのに、若干の間があった。


「いいのか、大将?「神」はそれほど弱くはないぞ。」


 ニシムロがディッセンドルフの真意を確認する。

「問題ない。我は「神」を打ち砕き、アンドリューと子供たちの元に戻る。ただ、ニシムロ、彼女を頼む。」

「いや、待て!俺を入れなくていいのか?本当に。」

「問題ない。状況によってはアンドリューに害が向くやもしれん。守ってくれ。」


 ディッセンドルフをしばし凝視した。

 その視線の圧を真正面から受け止める。


 やがて、軽くため息をつく。


「了解だ。ディッセンドルフ。確実に「神」の息の根を止めてくれ。」

「当然だ。」


 そう言ってニシムロが差し出した右の拳に、ディッセンドルフも拳を軽く当てた。


「行こう。」


 ディッセンドルフが踵を返し、岩の割れ目に進む。

 その後を不安そうなアンドリューとニシムロが続く。


 「神」の作った通路を越え、決戦場へと向かった。









 その空間に入った瞬間、強烈な光の奔流に晒された。


 ディッセンドルフは全くその流れに逆らわずに、うまくその流れに乗っていた。


 ニシムロはすぐに結界を発動。

 自分とアンドリューを光の強烈な圧から守りに入った。


≪さあ、遊ぼう、「神の子」≫


 「神」の言葉が様々な方向から届く。

 この世界は言うなれば「神」そのもの。

 当然、意思伝達の方向から、敵を正確にとらえることが出来るはずがなかった。


 「神」そのものでありながら、その存在には濃淡があった。

 その濃淡を正確に炙り出し、その一番濃い場所の中心を目指す。

 光の強力な流れも一方向に進んでいるのではない。

 タイミングを計って乗り換え、その濃い場所を目指す。


 だが、この光の流れは「神」の作り出したもである。

 ディッセンドルフの身体を確実に削りに行っていた。

 ディッセンドルフの体表は確実に傷が増え、さらに内臓や、精神にも干渉を加えてくる。

 ディッセンドルフの魔導力は今の所、無尽蔵だ。

 体内、精神に向かって来る力は同じ力のマイナスエネルギーで消去し、体表面は深く傷つく前に修復をかける。


 そう、「神」が本気でディッセンドルフを消し去る気なら、この魔導力の供給を断てば済むのだ。

 結局はこの供給されている魔導力は「神」が与えしものである。

 それを断つことなく、こうやって戦いの場にいる。

 その真意はディッセンドルフにも正確には解らない。


 そして「神の言葉」が伝えた、この世界に来て自分を殺せと言う意味。


 だが、今はそのようなことを考えている時でないことは承知していた。


 セノビックの「正義の目」が目的方向を正確に示す。


 流れに逆らわず、そしてこの流れを利用して、「神」の存在の濃くなっていく場所を目指す。

 極力自らの魔導力は使わずに、貯めていく。


 だが、存在が濃くなっていけばいくほど、ディッセンドルフに対する攻撃の度合いは強くなる。

 光の奔流はうねり、そして強くなる。体の傷は増え、精神への負荷も大きくなる。


 それでもその流れの予測をしながら、徐々に中心に近づいたと思った。

 微かにその中心辺りに強い重力と魔導力を確かに見た。


 そこか!


 光の流れを無視してその位置に跳ぼうとしたその時。


お付き合いありがとうございます。

あと2話で完結を迎えます。

もし、この作品を気に入っていただけましたら、ブックマークをお願いします。作者の書いていこうという気持ちを高めるのに、非常に効果的です。よろしくお願いします。

またいい点、悪い点を感じたところがあれば、是非是非感想をお願いします。

この作品が、少しでも皆様の心に残ることを、切に希望していおります。

よろしければ、次回も呼んでいただけると嬉しいです。


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