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「神の子」  作者: 新竹芳
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第96話 「神」

 「神」が何者か?正直に言えば私にもわからないことが多い。

 ただ、分かっていることがあるとすれば、世代交代をしている。

 正確には私の前に「神」がいて、そしていま「神」が私だ。


 この「神」の最大の特徴は、この世界の法則を決めること。

 それに尽きる。


 既にこの宇宙全体の法則を、「神」になった時の初期に決定した。

 そこから派生する様々な事象は、そのまま自然に決定することもあれば、私が手を加えたこともある。


 私自身、この作り上げた世界にどれほどの生命が溢れてるのかは、全ては把握してない。


 だが、法則の中でそのまま何もしていないと星が生まれてても、生命誕生まで行くのは難しかった。

 そこで私は数種類の法則をこの宇宙に導入し、生命が誕生せることに成功したんだ。

 さらに、その遺伝子や、環境で多くの生物が生まれ、淘汰されている。

 君たちのような知能を持つ生命体も、数か所の惑星で生まれてはいるよ。


 それほど多いわけではない。

 私はその中で、今回は重点的にこの惑星を観察していた。


 「神」が、一体何のために設定されたのか?

 これまでどのくらいの「神」がいたのか?


 この問いには答えられない。

 それは私にもわからないからだ。


 この世界の一番重要な法則は、質量保存、等価交換、そしてエネルギー量一定という法則だ。


 枝葉に関して、私はかなり細かい法則を組み立ててはいるが、重要な法則は前述のモノさ。


 つまり「神」、私はただの法則、ルールでしかない。


 だが、私自身がこの状態に飽きてきている。

 私は自分の分身を各地に配置し、観察を行い、状況に応じて最小限の介入をしている。


 考えている通りだ。

 「神の言葉」。

 それが私の介入であることは認める。


 この星の法則(ルール)は、他の星とは違う設定をした。


 先程、私はこの世界の観察者であることに飽きてきていると言った。

 だから、知的生命体が発生した、もしくは発生する可能性の高い星に対して、それぞれの特徴的な法則を作っている。

 これが枝葉に関する細かい干渉さ。


 さて、私は君たちの星の法則、これが何か。

 そう、魔法だ。


 と言っても、そんなに他の星と条件を大きく変えたわけではない。


 この魔法という全能ともいえる能力。

 だが、当然のことながら規制がある。

 これは、この世界の根幹にかかわる規制であり、法則だよ。


 エネルギー量一定。

 この意味が解るかな。


 ああ、そう言えば、そのことについて、ディッセンドルフはニシムロの能力で知っていたね。

 体の一部をエネルギーとして使用して、魔法をくり出しているという事に。


 一般の人類は、その神経や筋肉を活動させるために、食事により摂取した糖分や脂肪を燃焼させてエネルギーを作り、筋肉を動かし、神経を活性化して考えるわけだ。

 だが、魔法は、人体外にその力を及ぼさねばならない。

 食事で得られる栄養素を、それだけ膨大な運動量に変換は出来ない、ということだ。

 そこは理解して欲しい。


 それを前提に話を進める。


 魔法、思考により、自分の体の外にその力の影響を与えるためにはどうすればいいか。

 言い換えれば、その膨大なエネルギーをどこから得ることが出来るか。


 E=mc2。


 君たちの世界では、まだ到達していないかもしれないけど、これは、物質がエネルギーに変換された時の量を規定する意味がある。


 そう簡単に物質がエネルギーに変換可能かというと、そういう事ではないんだが、この星では、その変換を簡単にできるように設定し、魔法のエネルギー源とした。

 だから、「神の言葉」のない魔導士が魔法を使おうとすると、自分の身体の構成成分をエネルギーに変えるか、体外にあるモノを一時的に取り込み、エネルギーに変換しないと魔法は使えない。


 そう、ディッセンドルフの友人のサーマル・テラノが可哀想な少女、サーシャネル・ハーマスの精神を支配していたラスプーチンの闇をはぎ取るために使った魔法のエネルギー源は、サーマルの体そのものだったはずだ。

 もっともそれだけでは、その後の生活に支障が出ていたよね、ディッセンドルフ。


 そこで、「神の言葉」を得た者たちとの違いだ。

 もう理解はしていると思う。

 君たち「神の言葉」を持っている者たちには「神」から特別な力が与えられている。

 それは「言葉」に込められた能力とそのエネルギー源。

 だが、当然なのだが、この世界は私が初期設定を行った大法則から逃れられない。


 エネルギー量一定の法則。


 そう、私が与えているエネルギーはその対価を必要とするんだよ。


 そうだね、普通のと言っていいのか、「神の言葉」では惑星1個分を消費してエネルギーとしてる、かな。


 そう、地球クラスの星をそのままエネルギーに変換してその対象の「神の言葉」持ちに与えている。

 通常、一生に渡っても使いきれないほどの量だと思ってくれていい。


 実感なんか湧かないだろうが、ね。


 「神の子」ディッセンドルフに関しては、桁違いさ。

 恒星、そう太陽がそのままエネルギー源だよ。

 だからこそ、空間転移による核融合なんて無茶なエネルギーをぶつけることが出来たという訳だ。


 それでも、この私を殺すとすれば、エネルギー量だけでは歯が立たない。


 そのためには違う能力を集めなければならなかったわけだ。

 それが君たちなんだよ。

 そしてそれをまとめる能力をラスプーチンから奪う事にも成功している。


 この、私がいる世界、「神の世界」にようこそ。


 私、「神」は、君たちを歓迎するよ。

 その持てるすべての力で、私に挑んで欲しい。











 一通りの説明が終わった。


 それでも納得できないことは多い。

 そして、ディッセンドルフに「自分を殺せ」と命じた意味については全く語られていない。


 老人は無表情でディッセンドルフ達を見ている。

 だが、この姿はあくまでも、便宜上のモノだと語った。

 では、本体は、あの捉えどころのない靄という事か?

 だとすれば、あの精神世界の全てが「神」という事に……。


「あなたが「神」様という事は信じましょう。その上であなたに問いたい。貴方がこの世界の法則を決めた。この世界が出来るときの初期設定を。では、その前の「神」様が作った世界は、どこに行ったのですか?」


 アンドリューが、その無表情の老人、「神」に向かって、全く目を逸らさずに、疑問を口にした。

 この質問に、ディッセンドルフは少し違和感を覚えた。

 アンドリューが祈るような、必死な形相を見せている。

 その質問の答えが、何故気になるのか?


「わたしにも、前の世界、私が一生命体であった時の世界がどうなったかは、認識していない。これは憶測だが、私が新しい世界の初期設定の法則決定時に、この世界の創造のための原料になったのだと思う。」

「この世界の原料?」

「そう、この世界の土台を作る際の、エネルギーに変換された。別の言い方にすれば、前の世界は滅び、エネルギーとして私に取り込まれた。そう考えている。」


 アンドリューは、その言葉に対して、ほんの一瞬、恐ろしいほどの憤怒の表情を晒した。

 が、すぐにその表所は消え、穏やかな表情に戻った。

 目をつぶり、何かを考えている風ではあるが。


「さて、こんな話は君たちにとっては面白くはないであろう。それに、私の本体との戦い方も、いまだにその方法すら思い浮かばぬようだな。私は、その前哨戦を用意した。それで身体を慣らしてくれ。まずはこの神獣である飛虎となったジョーカーを倒してもらおうか。」


 その言葉に呼応するように、「神」の足元で体を伸ばしていたジョーカーが立ち上がり、その口を開け、ディッセンドルフらに向け吠えた。


「では、ジョーカー、神命を与える。「神の子」ディッセンドルフを、狩れ。」


 そう「神」が言った直後、凄まじいスピードで地を蹴り、ディッセンドルフにその体を、強力な咢を、向けた。


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