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「神の子」  作者: 新竹芳
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第92話 残された教皇

 見送るような形になってしまったが、最後まで「神の子」達に抵抗すべきだったのか?


 フシテルム・ヨハネⅢ世教皇は自問自答を繰り返していた。

 だが、これだけの魔導士を動員し、彼らの文字通り「命」を動力源として、「神の子」殲滅作戦を行って、このざまだった。

 後は、「神」の奇跡を信じるしかない。


 「神の子」ディッセンドルフの目的がこの世界の「神」を殺すことだった。

 そんなことをすぐには信じられなかった。


 ディッセンドルフの魔導力、そしてその操作は我々を軽々と超えていた。


 「神の子」ディッセンドルフ一人にしても、結局ここにある強化守護神では太刀打ちできなかった。

 そんなディッセンドルフをこの教会の始祖ジーニアス・ソウラングと思われるニシムロと名乗る傭兵、奇跡を相次いで起こした「聖女」アンドリュー・ビューテリウム。

 さらに「神殺し」の【言霊】を持つオオジコバ・ゴルネイエフ、「正義の目」のセノビック・マハイルが付き従っている。

 中堅都市、バーニンガウを巻き込み、おそらく多数の関係ない人々を殺傷したことであろう。


 「神の言葉」教は、その名の通り神の言葉を聞き、人類の幸福のために魔導力を適正に管理するために設立された教会のはずだった。

 それが大量の罪のない一般人を死においやった。


 許されるはずもない。


 例え、「神の子」ディッセンドルフが、神を殺しこの世界を滅ぼそうとしているとしても、そんなものは言い訳に過ぎない。


 「神の言葉」を授ける「神」が、この世界の創生者とは限らないが、絶大な力を持っていることに変わりはない。


 ディッセンドルフとの会話で魔導力の源には触れ得たが、今ならはっきりとわかっている。

 それは、ディッセンドルフ達と共に行動する、魔獣のはずの舞虎


 が自分に思念波を送ってきたことにより、鮮明になった。


 あの舞虎は魔獣から神獣へと昇華していた。


 ディッセンドルフとの邂逅がその進化を促したようだが、フシテルム・ヨハネⅢ世教皇にあるメッセージを託した。

 それは、ここと地上で生死を彷徨うものへの救援方法だった。


 フシテルム・ヨハネⅢ世教皇自身、「生命の輝きの手」という「神の言葉」を聞いた者である。

 それと別に教皇の地位を認める「神の言葉」である「教え導きの光」も持っている。


 神獣はこの二つの特別な力に、さらに魔導力を送ると言ったのだ。


 何故、「神の子」の使い魔となった舞虎がそのようなことが出来るのか?


 もともと魔導力は、自らの身体を構成する部分の質量をエネルギー変換により魔導力にしている。

 だからこそ、行き過ぎた魔導は自分の命をも奪うのだ。


 だが、「神の言葉」を賜った者は、別経路で魔導力が供給される。

 その量は人によって、そして「神の言葉」の内容により異なる。

 だが、魔導力を限界まで使用しても、死ぬことはまれであった。


 そして、神獣との接触で、フシテルム・ヨハネⅢ世教皇はその供給元を朧げに理解した。

 「神の言葉」はその名の通り、「神」の息吹が注ぎ込まれているのだ。


 「神の子」勢力により、今回の抵抗戦に参加した信徒である魔導士の大半は既に生命活動を停止している。

 だが、まだ持ちこたえている者もいる。

 死人を蘇らせることはできないが、生きていれば魔導力を用いて、安定状態まで引き上げることが出来る。

 そのための魔導力を授けると、あの舞虎の状態を保っている神獣が教皇に持ち掛けたのだ。


 フシテルム・ヨハネⅢ世教皇にそれを拒否することはできなかった。


 幸か不幸か、自分は生きて、そして歩くことが出来るまでに回復していた。


 両脇に座っていた、自分より年の若い法王も枢機卿もすでにこと切れており、復活させることは会できない。

 だが、神の部屋への転移場所に来る間、間違いなく生きている者たちがいたのだ。


 フシテルム・ヨハネⅢ世教皇は一人でも救える命を復活させたかった。


 先程「神の子」達を見送った強化守護神の魔導人形に近づいた。

 この魔導人形は3回目の攻撃のために「聖櫃」を守る位置から外したものである。

 見送る際に自ら動きを見せた。

 つまり呼び魔導力があるか、または「神」から魔導力を供給されているらしい。

 神獣はこの魔導人形の魔導力の使い方を教えてくれた。

 そしてその魔導力と、「生命の輝きのお手」を用いて、生き残っている者の救助をの仕方を示したのである。


 フシテルム・ヨハネⅢ世教皇は擱座して7つの目の光が消えている魔導人形の足にそっと手を触れた。


 その瞬間、触れた手が異常に熱くなり、そしてその熱の流れが体内に吹き込まれてくる感覚が、フシテルム・ヨハネⅢ世教皇の身体を突き抜け、自分を中心に拡散されていくのがわかった。


 これは魔導力ではない。


 まさに、「神の息吹」だった。


 その息吹が横に、そして上に非常な速さで拡散していく。


 そして、何かにあたり、その当たった物が何らかのアクションを起こすと、そこに力が注ぎ込まれていった。


 それはまさしく生命の微弱な信号に息吹を与えて、その力を向上させていった。


 微弱な信号が、徐々に活性化されていく。

 それはこの地下にいるものだけでなく、地上でサポートしていて、魔導力の逆流の荒しに晒された者たちも、息を吹き返しつつあった。


 どのくらいの者が生きているかは、流石につかめなかったが、何とか命に別状のない状態に引き上げることは出来たようだ。


 であれば、何とか死んでしまったこの者たちを埋葬したい。

 その想いが込み上げてきた。


 「神の子」達が戻ってくることを、教皇は願い始めていた。


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