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「神の子」  作者: 新竹芳
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第88話 魔導人形との闘い Ⅴ

 魔導人形が微かに動いた。


「操縦している魔導士の交換が終わったようだな。」

「はい。魔導遠隔術が再接続されたようです。今、かなりの魔導力が失われた右腕の部分に注がれていますね。」


 セノビックがディッセンドルフの言葉に応えた。


 3人の「聖女」の守護を務めた者たちがバーニンガウ守備騎士団に向かっていくのを見送っていた他の3人も、ディッセンドルフの声に魔導人形にその顔を向けた。


 魔導人形の各関節球の回転が始まっている。


 砕けて亡くなった右腕の所に靄のような光が漂い、周りに砕けていた右腕のパーツや、石畳を吸引するかのようにその光に集まっていく。


「この魔導人形は自動修復の術も持っているのか?」

「ああ、大将。この魔導人形や魔導構成数式図の様な古代魔術は、魔導力を相当使用する。だから紋様を定着させるまでは、教会の供給する魔導力だけでは足りなくて、出現した時に周りの物質を吸収し、そのままエネルギーに変換したんだ。バルトロマイを捕食したのは余計な情報を俺たちに与える前に殺す必要があったのと、純粋に奴の身体と魔導力を吸収する意味があったと思う。」


 ニシムロは魔導人形、魔導構成数式図などの古代魔術ともいうべき、始祖ジーニアス・ソウラングの頃の失われた魔術について語った。


「今、この魔導人形が行っている術式は、損傷部の修復さ。周りの物質をエネルギーと使用パーツの生成を行っている。ここまでこいつを動かすことが出来ていることに、俺は感動してんだよ、大将。」


 その言葉を聞きながら、ディッセンドルフはニシムロが詳しすぎると思っていた。

 ラスプーチンとの戦いで、このニシムロが見た目よりもはるかに年齢を重ねていることには気づいてはいた。

 その魂の根幹で、共鳴することも多い。

 信用できる人物であることは間違いないのだが、この事象に対する理解の深さはどこから来ているのか?

 急に気になり始めていた。


「皆さん、この場から一旦退いてください。魔導人形、動き始めます。」


 セノビックが大声でそう言うと、その場の5人が後方に飛び退いた。


 グオオオオオオオーーーーー。


 大地を響かせるような轟音が街を包んだ。

 右手までは修復できなかったようだが、肘から手首までを修復した魔導人形が立ち上がった。

 同時に、7つの目の上方にさらに2つの光が浮かび上がった。

 首が回転し、ディッセンドルフとアンドリューを捉える。


 そこから瞬間的に光が迸った。


 正確に二人に向かって突き進む。

 その刹那、大きな光が辺りを覆った。

 明らかに魔導人形の狙いは「神の子」と「聖女」であった。


 だが、二人の異常な魔導力の障壁はその2本の破壊的な光を真っ向から遮断した。


 その光で視界を失った中で、大きな斧が魔導人形の首関節球に振り下ろされていた。


 オオジコバの腕が変形し、斧となって襲ったのである。


 視界を封じられていた魔導人形の操縦士と、状況の報告者。


 だがそのオオジコバの斧は、幾何学的な文様が受け止めており、関節球に触れさせることを拒んでいた。


 オオジコバはそのまま魔導人形の肩に飛び乗り、もう一度斧を揮う。


 当然のように幾何学文様がその斧を受け止めたが、その斧の後ろから小石大の礫がその幾何学文様に衝突した。

 一度はその礫を受け止めたが、すぐにその幾何学文様が消失。

 オオジコバの斧が高速で回転する首の関節球に打ち込まれた。


 火花が散った。

 そののち、爆発音が鳴り響く。


 魔導人形の頭部が、本体から分断された。ゆっくりと、頭部が地上に落下した。


 続いてニシムロが右足首に、自分の大剣を薙ぎ払うように、打ち込んだ。

 ここにも幾何学文様が出現したが、やはり礫がその障壁を打ち破り、右足首の関節球が破壊される。


「大将、今、何やったんだ!」

「さっきの魔導人形の撃った物体を再現して、対魔導弾を撃ってみたのさ。」

「本当に「神の子」は何でもできるんだな。」


 ニシムロの声が発せられた時に、バランスを失った魔導人形が魔導構成数式図から離れるように倒れた。


「おかしい。いくらなんでも簡単すぎる。」


 ディッセンドルフがそう呟いたときに、セノビックの「正義の目」がその理由を明確に表した。


「いけません!そいつは(オトリ)です!」


 セノビックの警告が終わるかどうかというタイミングで、巨大な影が魔導構成数式図から現れ、いきなり膨大な光の束が倒れた魔導人形にぶつけられた。


 魔導人形が膨らみ、轟音とともに四散した。

 大量の破片と土ぼこりを周囲に拡散させ、その場に居た者の視界を奪った。


「二射目が来ます!」


 悲鳴のような絶叫がセノビックの口から発せられた。


 正確に、宙を飛ぶ「神の子」ディッセンドルフと「聖女」アンドリューに向かって放たれた高出力の光の束。

 二人はそれぞれ防御障壁、結界を張った。


 土埃が、その2回目の光の束によって瞬時に消失し、その魔導構成数式図から2体目の魔導人形が出現している事を認識できた。


 強大な光の束は、超人的な魔導力を有する二人によって、何とか封じ込めることに成功した。

 だが、今の衝撃に多大な魔導力を使用したため、瞬間的にディッセンドルフの体力が低下し、ゆっくりと二人は地上に降りたつしかなかった。


「まずいぞ、大将‼3射目を撃つ気だ!」


 「神の言葉」教の総本部は総力戦に打って出た。


 そこにいる上級魔導士の魔導力全てを、この魔導人形の「魔導砲」に賭けたのだ。


 最初の魔導人形の転送、そして「魔導砲」の使用でかなりの魔導力を使用した。

 しかし、その後の抑えた戦い方では「神の子」達には到底及ばないと知った。


 魔導人形が一度動かなくなったのは、この作戦のための魔導力の集中にあった。


 既にこの法務庁地下の戦闘指揮所の大半が命を絶っている。

 それでも「門」と魔導人形、その兵器に魔導力を供給していた。

 どのみち、この闘いに負ければ、おそらく「神の子」がこの場所を蹂躙することになるだろう。

 もう、退くことはできないのだ。


「第3射目、撃て!続いて第4射目、魔導力充填せよ!」


 教皇の言葉が響いた。


 教皇の言葉により、12チーム目がそのトリガーを引く詠唱を開始した。


 2体目の魔導人形が、地に伏せるディッセンドルフとアンドリューに照準を合わせていた。

 慌てて、ニシムロとオオジコバがその射線上に懸命に向かう。


 だが、僅かに間に合いそうにない。

 ニシムロが二人に向けての遠隔結界を張ろうとした時だった。


 発射体制の魔導人形の空間が揺れた。


「空間転移‼」


 ニシムロの叫びに呼応するかのようにそこに実態が出現する。


(遅れてすみません、ご主人様(マイ・マスター)‼)

「「ジョーカー!」」


 そこには魔獣である舞虎「ジョーカー」が姿を現した。

 そして空中からその大きな爪を持つ前脚を、魔導人形の背中の空間を引き裂くように振り下ろした。


 その直後、魔導人形の7つの目のかすかな光が消えた。

 各関節球の回転が止まり、そのまま前のめりに倒れたのだ。


「空間の断裂‼しかし、それで遠隔術と魔導力の供給が分断できるのか?」


 倒れた魔導人形の横に降り立ったニシムロが疑問を呈した。


「私の「正義の目」には、この魔導人形の背中から、この大きな通路に太いパイプのような影が見えました。今はそのような影はありません。「ジョーカー」の攻撃が有効だった証拠です。しかし、空間転移からの空間断裂とは。魔獣たちがここまで魔導を使えるとすると、今後の魔獣との闘いは対策を検討する必要がありますね。」


 当の「ジョーカー」はそのままディッセンドルフの所まで行き、その顔を嘗め始めていた。


「この魔獣「ジョーカー」は俺に忠誠を誓った。だから俺と思念波のつながりが出来て、俺の魔導力を制限付きで使用できるようになった。」

「制限付きですか、大将。その制限とは?」

「何のことはない。俺とアンドリューの命の危険の回避に限り使用可能、というもんだ。」

「なるほど。」


 納得した表情でニシムロはそう言った。


「ディッセンドルフ様、時間がありません。あちらさんがこの「門」を閉める気です。急ぎませんと‼」

「大敗したからな。時間稼ぎか。そうはさせんよ。全員、あの魔導構成数式図から「神の言葉」教総本部に急行する。付いて来い!」


 ディッセンドルフはアンドリューを抱え、その後ろを「ジョーカー」が、続いてニシムロ、セノビック、殿をオオジコバが務めた。

 そして、その光が弱くなり始めた魔導構成数式図に飛び込んだ。


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