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バレンタインデーはいつもより登校している三年生が明らかに多い。
皆バレンタインデーに期待しているのだ。
男子生徒も、女子生徒も甘い香りに包まれてソワソワと落ち着かない。
その中で瑠璃花も同じようにソワソワと視線を動かした。
鞄の中にはチョコが3つ。
一つは笹本へ、もう一つはペットボトルのお礼に雄大へ。
最後の一つはご所望通り皐月へと届ける予定だ。
その瑠璃花は廊下から後輩に呼び出された。
「るり先輩、これ貰って下さい」
ニコニコと彼女は笑う。仲の良かった後輩の一人で昨年もくれた筈だ。
「ありがとう。またホワイトデーにお返しするね」
「はーい。楽しみにしてまーす」
にこやかに後輩は去っていく。
ああやって爽やかにチョコが渡せれば苦労しないのに、と瑠璃花は羨ましく思う。
瑠璃花のチョコはまだ誰にも渡せていない。
タイミングが掴めなくてどうしようと悩んでいるのだ。
やっぱり渡さずに持ち帰ろうかと30回くらい考えている。
でもその度にせっかく用意したチョコだからと、気持ちを奮い立たせるのだが、未だに誰にも渡せていなかった。
一人廊下で立ち尽くす瑠璃花の目に複数の女子生徒達が雄大へチョコを渡す姿が写った。
あの中に混じってなら簡単に渡せるかもしれない。
そう考えた瑠璃花は小走りに教室に戻り、鞄からチョコを取り出した。
急いで廊下に戻ると、先程の女子生徒達は既におらず、雄大が一人チョコを両手に抱えているところだった。
「…あぁ、間に合わなかった…」
残念そうに呟く声が聞こえたのか、雄大は振り返った。
その顔を見て瑠璃花は思わず苦笑した。
「…大畑くん、モテるんだね」
「いや、これは…友達からっス…」
ぶんぶんと雄大は首を振る。その拍子に手に抱えていたチョコが溢れ落ちた。
笑ってそれを拾い上げて、瑠璃花は申し訳なさそうに自身のチョコも雄大に渡した。
「…あの、これ。この前のペットボトルのお礼なんだけど、嫌じゃなきゃ貰って」
「え!くれるんスか!?」
「いっぱい貰ってるし胃もたれしなかったら食べて。…手作りじゃないから安心してね」
にこりと瑠璃花は笑った。
少し複雑そうな顔をした雄大はすぐに、その表情を打ち消すように笑った。
「ありがとう」
「どういたしまして」
じゃあね、と雄大に手を振り、瑠璃花は足取り軽く教室へと戻って行った。
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