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教室から見える校庭に笹本先生がいる。
そう気づいた瑠璃花はほのぼのとした気分で笹本を眺めた。
笹本はいつかのように生徒達とサッカーをしている。
その姿は穏やかであり、爽やかな笑顔が年よりも若く見える。
ぼーっと眺めていた瑠璃花の背後から人の気配がした。
「…ああいう爽やかな笑顔がいいの?だから笹本先生は好かれるの?…ねぇ?」
ほのぼのと眺めていた瑠璃花は後ろから聞こえた声に嫌そうに振り返った。
「…皐月ちゃん、まだ言ってるの?そんなに女子高生からモテたいの?」
「別にモテたくないことはない」
真顔で答える皐月に瑠璃花は呆れた顔をする。
瑠璃花だって別に教師が聖人君子であると信じている訳ではないのだが、そんな風に明け透けに言われても…と思うのだ。
瑠璃花の視線を無視して、皐月はまたも昨日の質問を繰り返した。
「それで、笹本先生のどこが好きなの?」
「…それ、まだ引っ張るの?」
「答えてくれるまで何度でも」
全く嬉しくない返答に瑠璃花はため息をついた。
どうせ瑠璃花の気持ちはバレているのだし、遠慮することもないかと昨日の夜開き直って考えた。
だから瑠璃花は口を開いた。
「…優しいとこ」
小さな呟きに似た声に皐月は更に追い討ちをかける。
「女の子って大体そういうよね。優しいって何?例えばどういう優しさなわけ?」
瑠璃花の答えはお気に召さなかったらしく、皐月は頬杖をついて瑠璃花の前の椅子に股がった。
「…例えば、大きい荷物持ってくれたりとか、気にして声かけてくれたりとか…」
「……それだけ?それであの爽やかな笑顔にコロッと落ちちゃったんだ?」
責めるような皐月の物言いに瑠璃花は困惑した視線を向ける。
そこで瑠璃花と皐月の視線が絡み合う。
じっとこちらを見つめる眼鏡越しの瞳は深く探るように瑠璃花を写している。
居心地の悪さを感じて瑠璃花はガタンと机から勢いよく立ち上がった。
「皐月ちゃん見すぎ!もうこの話、おしまいでいいでしょ!」
「まだ終わってない」
立ち去ろうとする瑠璃花の腕を皐月は掴む。
それに驚いて腕を離そうとした瑠璃花はその勢いで体勢を崩した。
大した動きでもないのに転びそうになった瑠璃花は、自身の動きのトロさに一瞬の内に歯噛みした。
日頃の運動不足に加えて生来の鈍さが拍車をかけている。
教室の中だから転んでも大怪我はしないが、恥ずかしさは教室の方が上だろうか。
一瞬の内に頭で様々なことを考えた瑠璃花は、けれど、次の衝撃に首を傾げた。
ぎゅっと目を瞑った瑠璃花の顔は何か暖かいものに触れる。
柔らかな弾力のあるニットの腕は瑠璃花の脇の下を支え、瑠璃花の顔は皐月の肩口にぶつかった。
「…一ノ瀬、危ない」
むっとした口調の声に顔を上げて瑠璃花はパッと飛び退こうとする。
「だから、急に動かない。危ないから」
少し諭すように皐月は耳元で囁き、そっと瑠璃花から離れた。
「…ねぇ、これで俺のことも好きになる?」
じっと瑠璃花を見つめながら皐月は首を捻った。
瑠璃花はその視線にびくりと肩を震わせる。
見られている、そのことに言い様のない重圧を感じ、全身が火を吹くように熱くなる。
「な、らない!」
殆ど叫ぶように言って瑠璃花は大急ぎで教室を飛び出して行った。
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