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使役魔獣 4

(これはっ…まるで生きている竜に乗っているみたいですわ…!)


ヘリに乗り込んだアヤを待っていたのは驚きの連続であった。

ヘリコプターは人が作り出した乗り物であり、アメリカ合衆国は同じ型のヘリコプターだけでも数千機を保有しているという。

その生産力と、これほどまでに成熟した技術を取得できるのに王国はどのくらいかかるだろうか?

明らかに数世紀レベルで技術力の差があり過ぎる。


魔法を使えない代わりに技術力に特化した異世界人。

それがアメリカ合衆国の場合は経済力にものを言わせて行動できるだけの物量がある。

おまけに軍事力は世界一だ。

経済・物量・軍事力…どれを比較しても王国に勝る部分は殆どない。


(おとぎ話にしか聞いたことが無い国ですけど…もし本当にこの乗り物が彼らの国で作られたのだとしたら…相当お強いですわ…)


唯一サルーヴァ王国が勝てる部門は魔法と魔術ぐらいだろうか。

国勢調査官として逆にそれしか誇れるものがないと分かると、アヤは少々情けなくなってしまう。

ヘリコプターに乗っている人員やヘリに積まれている精密機材、そしてこれだけの大きさの乗り物を空に飛ばせるだけの科学力・技術力を有している国家とは是非とも結びつきを深めなければならない。


成り行きのままヘリに乗ってしまったが、出世するチャンスでもある。

おまけに彼らによって命まで救ってくれたのだ。

断るよりもむしろ彼らの差し出した手に乗るべきだ。

気が付けばアヤはヘリに乗っていた。


こうなったらやってやる。

アヤはできるだけアメリカ合衆国の前線基地について知る必要が出てくる。

自分が得た知識を上層部に報告する。

そうすれば信じて貰えるだろう。

政府職員に過ぎないが、事の次第によっては高官に成り上がることもできる可能性がある。

ならば、しっかりと目に焼き付けよう。



「お待たせしました。ようこそ我がアメリカ合衆国の異世界領レーオーへ、基地司令官がお待ちしております」


ヘリが基地に到着すると、現地語を流暢に話す身長が2メートル近い黒人の兵士がアヤを案内する。

ドワーフ人であるアヤの身長は1メートル40センチ程度だ。

これでもドワーフ人の中では身長が高い方である。

アヤからみれば兵士は巨人に見えるだろう。


彼の後ろを歩きながら基地の中に案内されるとアヤは色々なものを見つめる。

建物の性質。

見慣れない乗り物。

廊下ですれ違うとすぐに敬礼する兵士…。

その中でもアヤが驚いたのは首都でも豪邸や城など一部の建物でしか見られないガラスの窓が建物の至る所に張られている事であった。


ガラスは王国では貴重品だ。

作れる工房や人材も限られているため、目にする事はほとんどない。

前線基地でガラス窓を張っているなんて話は聞いたことが無い。

国勢調査官として国内の色んな場所に出向いているが、ガラス窓を使っている軍事施設など見たことすらない。


(ガラスは高価な上に脆い…そのようなものをこうして基地の窓に使っている軍隊なんて聞いたことが無いですわ…!)


「着きました。こちらに基地司令官がお待ちしております。では、私はこれで失礼いたします」


黒人の兵士はアヤに規律正しい敬礼を行ってからその場を後にする。

ドアの前には銃を構えて待機している兵士がいる。

すぐに兵士がドアを開けてくれた。

腹をくくる時だ。


(…ここまできたのですもの…やってやりますわ!)


国勢調査官として培ってきた社交辞令を生かす。

部屋に入ってから一礼すると自分の所属と氏名を明かす。


「サルーヴァ王国国勢調査官のアヤと申します…この度は危ないところを貴国の兵士に助けて頂きました事、大変深く感謝申し上げます」


一礼すると、相手も挨拶を交わす。


「アメリカ合衆国…異世界アメリカ統合軍最高司令官のエリック・ハドソン中将です」


そしてアヤの目線の先で気になる相手がいた。

ローブを着てフードを被っている魔術師の女性。

見た限りではシャドーエルフ人の特徴を有しているが、シャドーエルフ人は大陸同胞会の民族浄化によってその大半が死亡している。

生き残っている大陸のシャドーエルフ人の統計情報は殆ど残っていない。


第二首都の国立魔術研究大学の学長がシャドーエルフ人であるが、彼を含めても数家族いるかいないかぐらいの数しか知らない。

女性のようなシャドーエルフ人が生きていると分かれば国はすっ飛んで調査するレベルだ。

シャドーエルフの女性が魔術師のフードを取ってアヤに挨拶を行う。


「初めて…私はテルーラ・オルテシア…大陸北東部のオヅービ村出身…アメリカ合衆国でかれこれ80年以上世話になっている居候の身ですわ。どうかよろしくお願いいたします」


「テルーラさん、よろしくお願いいたします。えっと…80年以上お世話になっているという事は…つまり…」


「ええ、この時代に伝わっている伝承のアメリアのおとぎ話に登場する異世界の船と共に旅立った8種族16人のうちの一人…それが私ですよ」


「ほ、本当ですか?!」


「ええ、証拠もありますよ。ささっ、お話したいことも沢山ある事ですし、ゆっくりとテーブルに座って話しましょう」


おとぎ話に登場する異世界人と共に旅立ったうちの一人。

それが目の前にいるということに驚きを隠せないアヤ。

しかしテルーラの話にも信憑性はある。


シャドーエルフ人が大陸同胞会によって殺されてしまい、第二首都以外で生き残っている人を見たことが無い事。

おまけにシャドーエルフ人が多くいたのは大陸の北東地域であり、オヅービ村も博学多才なシャドーエルフ人を生み出している学術出身者の村としても有名だ。


その村の出身者は両耳に魔力の籠った宝石で装飾された珍しい赤い耳飾りを付けているという伝承が残っている。

最も、その伝承によればシャドーエルフ人の身に着けている宝石類は全て高価であり、オヅービ村に大陸同胞会が侵攻した際には伝承を信じた大陸同胞会の構成員によって多くのシャドーエルフ人の耳や指などが宝石ごと斬り落とされたという恐ろしい記録が残されている。


今目の前にいいるテルーラも赤い宝石の耳飾りをしているのには魔力が込められているのをアヤは感じ取る。

ドワーフ人はエルフ人同様に魔力に関して敏感な種族だ。

シャドーエルフ人…それもオヅービ村出身という彼女の説明も間違いではないかもしれない。


アヤとテルーラ、そしてエリック中将を交えた会話が始まった。

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