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使役魔獣 3

ハンスが機体から降りると、早速女性のほうから感謝の言葉が述べられた。

どうやら大陸同胞会に狙われていたらしい。


「ありがとうございます!本当に…本当にありがとうございます!」


手を合わせてハンスに礼を言う女性。

ハンスは女性の話している言葉を理解しつつ、女性が何処からやってきたのか尋ねた。

若干イントネーションがたどたどしいが、これでも異世界の現地語を話せるようにしているのでどうということはない。


「失礼ですが、どこからきたのです?あなたは?」


「私はサルーヴァ王国第二首都オビリアーノから派遣されてきたドワーフ人の国勢調査官アヤです…あなた達はどこの国の衛士なのでしょうか…見た限り見知らぬ竜を乗ってらっしゃるみたいですが…これは魔術兵器ですか?」


サルーヴァ王国の国勢調査官を名乗るアヤはOV-10を指さす。

羽ばたかない竜など見たことが無い。

しかし、竜と同じかそれ以上の速度で飛行し、後ろからやってきた大陸同胞会の連中を倒してくれた。

聖遺物として残されている魔術兵器の類なのだろうか。

しかし、これは竜や魔術兵器ではないとハンスは否定する。


「これは竜や魔獣兵器ではない、飛行機です…私達、アメリカ合衆国からやってきました…」


「アメリカ合衆国…?六大陸の大国でもないようですし…おとぎ話でアメリアという国ならありますけど…」


「我々は調査の為に飛行機を飛ばしてきた。私達の国、アメリカ合衆国は異世界の国です。異世界からやってきてこの世界を調査してます」


「い、異世界の国のアメリカ合衆国ですか?!」


アヤは大変驚いた顔をしてハンス達を見た。

異世界。

そしてアメリカ合衆国…。

今から数十年前に異世界人の船が流れつくも、自力で帰っていった魔法を使わない未知の文明人。

その伝説は今なお語り継がれている。


世界を巻き込んだ戦争の末、神の逆鱗に触れてしまう実験の結果飛ばされた鉄の戦艦。

戦艦に乗っていた兵士たちの半数は熱病にやられてたり、好戦的な原住民によって殺されたりするも、魔法や魔術を習わない代わりに強力な武器・兵器を使いこなす。

その力は勇敢であり、当時の首長たちが彼らが異世界に戻る際に知識を学ばされるために8種族16人を派遣し、二度と戻ってこなかったと伝えられている。


いわゆるおとぎ話の世界として語られている。

アメリアもアメリカ合衆国をなじった言葉だ。

当時を知る者も殆どおらず、迫害の末に山岳地帯に籠っているエルフ人なら知っているかもしれないが、世代交代の早い人間はそうした話は()()としてとらえられている。


だが、目の前にいる者は異世界からやってきた人間だと話している。

それもアメリカ合衆国からやってきたと。

羽ばたかない鋼鉄の翼を持つ乗り物を実用化している国家は現在存在していない。

つまり目の前にいるのはおとぎ話に登場するアメリカ合衆国の軍人の特徴に一致している。


「では…近頃国境付近に謎の野営場が作られているというのは…」


「それが私達の基地です…私達は王国側の人、できれば政府側のコンタクトをとれる人間と話がしたいと思ってます。それは司令官かも言われております」


「…つまり、私を助けたのはそれが理由ですか?」


「それもありますが、大陸同胞会は民間人を大量虐殺した無差別殺人主義者…いわゆるテロリストです。空から見た時、貴女は襲われそうになっていた。だから助けたんです」


「…攻撃される危険を承知で?」


「アメリカ合衆国軍は正義と自由を重んじる軍、弱い者を救うのもアメリカです。独裁的で共産主義者や過激な原理主義を打ち砕くのも民主主義を守るアメリカに課せられた使命です」


ハンスは堂々と胸を張っていった。

アメリカは正義の国であると。

そのために大陸同胞会の戦闘員に躊躇なく引き金を引いて殺したことも。

中東で台頭したイスラム原理主義者達を掃討する際にも用意されたフレーズ。

それは『自由』と『民主主義』だ。


第二次世界大戦の時からこのフレーズは変わっていない。

自由と民主主義を守る。

これだけでアメリカは大量生産と民主主義を守る砦となって動いていた。


21世紀最初の年に起こった9・11同時多発テロ事件以来、アメリカは世界中の紛争に介入し世界警察を自称するまでに強大な軍隊を手に入れた。

それは今後も変わらないだろう。


「…私の為にそんな危険を冒してまで…本当に…なんとお礼を申しあげたらよいか…」


「いえ、貴女には是非とも合衆国と王国の架け橋になってほしいのですよ、先程見た光景を上層部にありのまま報告して頂きたい。よろしければこちらも基地までご案内いたしますよ」


「えっ、ですが…あの竜に乗ってもよろしいのですか?」


「ええ、あと数分もすれば別の()が迎えに来ますよ…ほら、向こうから来ました。あれがわが軍のもう一つの乗り物です」


指を指す方向には大きなプロペラを回しながらやってくる機体の姿が見えてくる。

聞きなれない音をたてながら近づいてくる。

ゆっくりと近くに降りていく。

そしてハンスはアヤをヘリに乗るか尋ねた。


「さぁ、ヘリに乗りますか?わが軍は貴女を歓迎します。ミス・アヤ…!」


かっこよく登場したのはMH-60Sナイトホーク。

アメリカ海軍が保有しているSH-60シーホークを基本設計にしながらも、救難作業や輸送任務に役立てられるように改良した海軍の輸送ヘリコプターである。

ハンスのポイント稼ぎもさることながら、統合軍…特に元海軍側が利することになった。


そしてアヤは成り行きのままアメリカ軍基地に行くことを決めて、サルーヴァ王国政府関係者として初めてアメリカの領土に足を運び入れる事になる。


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