使役魔獣 1
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20XX年6月26日。
村での戦闘が行われてから4日あまりが経過した。
現在異世界のアメリカ軍基地が予定よりも早く増強されている真っ只中だ。
移民が入植しやすいように設備を整えているが、トンネルが完成する8月まではちまちまとやってくる増援部隊を減らさないように行動するしかない。
それは新しい任務を任された偵察部隊にとっても同じことであった。
ナイトホーク隊の面々が、新しく導入された新兵器の解説を読んでいる。
これまでは偵察のみを主眼している航空偵察部隊であったが、新たに近接航空支援用として空軍から納入された最新鋭の兵器を取り付けるというものであった。
「M23ガンポットを取り付けて出撃するんですか?このガンポットって元々空軍のでしょう?我々海軍が使用するのもなんだか妙な気分ですね…」
「ああ、なんでもあの村を襲っていた連中はこの大陸の大半を奪い取っている蛮族らしいからな。もし偵察中に見かけたら攻撃してもいいとさ…ま、早い話がこいつを使ったデータが欲しいんだろうよ」
「それでこれを取り付けたってわけですね…」
格納庫に収納されているOV-10DXに近接航空支援用のM23ガンポットが両翼の下に取り付けられている。
彼ら偵察部隊は必要最低限の武装しかないが、この世界には魔法というものが存在し、それが強力な酸や炎による攻撃も可能であるという報告を受けたことで、急遽火力の強化が優先されたのだ。
ナイトホーク隊もその中の一つだ。
彼らが保有しているOV-10DXには自動対象追尾型カメラが導入されており、これによって瞬時に敵味方を判別することが出来る優れものだ。
おまけにガンポットが連動して味方への誤射を無くすべく、攻撃対象者のみに攻撃が行えるようにしているので誤射率は極めて低い。
次世代型の近接航空支援火器として去年軍で選定が始まったのだ。
選定を競ったのはアメリカ陸軍と空軍だ。
陸軍は価格を安く抑えて高性能な次世代攻撃ヘリコプターの開発を進めており、ヘリコプターに搭載する支援火器として従来のM18ガンポットに改良を加えたM19Cガンポットに注目した。
一方の空軍はMQ-1プレデターやMQ-9リーパーなどの無人航空機を、より重武装化して歩兵の近接航空支援機として活躍できる機体に改良できるとして、次期近接航空支援火器の争奪戦が起こった。
数か月の諜報や非合法的な手段によって空軍のM23ガンポットに採用が決定された。
しかしやっとの思いで採用を勝ち取った空軍だが、新規に使用する機体が無かった。
旧式機として派遣が予定されているF-111では機体が古すぎる上に、F-16戦闘機では安定した地上への攻撃が行えないという結論が蠢いていた。
そんな中、異世界派遣軍のことを受けて異世界に派遣されているOV-10DXに搭載することになり、初の実戦投入が決まったのだ。
ジェット戦闘機でもなければ戦闘ヘリでもないが、異世界に派遣されているアメリカ統合軍のM23ガンポットと互換性がある機体が現時点ではコストや軍の利害関係など政治的な思想も絡んだ結果、OV-10しかなかった。
「空軍のメンツを立たせたいってことなんですかねぇ…採用決まっても取り付ける機体が無いんじゃ…意味がないというものです」
「そうだなロバート。昔から何かと空軍は意地を張るからな…でも、こいつの性能はお墨付きだぞ。陸軍でもM19Cより高性能で信頼性が高いと書いているぐらいだ。そう簡単に壊れるような代物ではないさ」
M23ガンポットはアメリカの兵器製造メーカー「シムライン」を中心にイスラエルやイタリア、そして日本など複数の企業の協力で誕生した最新鋭の兵器だ。
信頼性においては抜群だろう。
「さーて、おしゃべりはここまでにして出撃するぞ。今回は北西方面に飛行しろとのことだ…400キロほど空撮をしたのちに帰還しろか…いい加減空中給油機が欲しいぜ」
「そうですね…改良を加えられたとはいえ、この機体の航続距離は増槽を付けても1200km…往復距離を考えると600kmまでしか飛ばせませんからね…」
「もしかしたらこの異世界特有の現象かもしれないが、高高度はかなり気流が激しい。あまり高度を上げずに600メートル程度で飛行しよう」
OV-10DXのエンジンを始動して、二人は機体に乗り込んだ。
何度も改良を加えられて最新鋭の機材が積まれている。
そして、OV-10Aだったころの面影はコックピットの座席ぐらいだろうか。
ある程度整えられた滑走路に進入し、管制塔とのやり取りを始める。
「こちらナイトホーク1、離陸の許可は出ているか?」
『管制塔よりナイトホーク1、離陸許可は出ている。じきにCH-47輸送ヘリが旋回する。あと40秒ほど待て』
「ナイトホーク1了解…なるべく早めに頼むよ」
2機のCH-47輸送ヘリが旋回している。
どうやら大陸同胞会に追われていた避難民を救出してきたらしい。
ヘリが旋回し終えて着陸すると、ヘリの中からぞろぞろと異種族が出てくる。
やはりここは異世界なんだとハンスは再認識させられる。
『…よし、ナイトホーク1…離陸を許可する』
「あいよ、ちょっくら写真とってくるわ」
『お気を付けて、お色気の写真も撮れそうか?』
「流石にそれは無理そうだな、じゃあ基地を頼むよ」
ナイトホーク1のOV-10DXは上空に上がると車輪を収納し、北西方面への空撮を開始する。




