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制圧 4


20XX年6月22日、午後1時 ホワイトハウス


トーマス大統領が閣僚並びに閣僚級高官を集めて会議を行っている。

アメリカ合衆国大統領顧問団の面々が最も強固なセキュリティーで囲まれた部屋で会議を行っている。

全員が携帯電話やスマートフォンを外して金属探知機までかざして会話が持ち出されないようにする徹底ぷりである。


それだけ重要な会議をするのだ。

会議内容は「異世界合衆国領における情勢」であった。

現地に駐留しているアメリカ異世界統合軍からの情報を受け取った国防長官のマッキンゼーが、幾つかの視覚化されたグラフを用意して、異世界で起こった戦闘について詳細のレポートが提出された。


レポートには異世界における世界情勢についても事細かに記されており、貴重な資料であると同時に今後の合衆国側の行動を示す上で重要なファクターとなる現地人とのデータも記されていた。

まずは良い事から報告する。


悪い事から報告するとトーマス大統領はかなり不機嫌になる。

これは大統領になる前から言われていたことだ。


トーマス大統領は良い成果があれば先に報告し、次に課題や悪いニュースがあればそれに対してじっくりと話をするという人間だ。

悪いニュースや報告があればあるほど、部下や閣僚は真っ先に良い事を報告する。


報告したのは現地に駐留しているアメリカ軍が初の異世界での戦闘を行った事だ。

現地で勢力を拡大している過激な宗教・種別排他主義の『大陸同胞会』が占拠していた村をグリーンベレーを中心とした特殊部隊が制圧し、異世界において少数ながら現地人の信頼関係が結ばれた点だ。

米軍側には死者だけでなく負傷者すら出なかったので圧倒的な戦力を見せつけることができた。

これにはトーマス大統領もニッコリと笑みを浮かべて彼らを称えた。


「とても良いニュースだな!それにしても圧倒的ではないか、我が合衆国軍は…異世界において過激派テロリストを殲滅&拘束し、住民を救ったのだ。大々的にマスメディアに発表するべきではないかね?」


閣僚たちに尋ねると、副大統領と国務長官が大統領の発言に賛同する。


「ええ、それがよろしいかと存じます。村の人々を救ったのは我々合衆国の精鋭、そして救い出された人達は女性と子供たちです。メディアからの印象も良くなるでしょう!」


「隊員たちが付けているヘッドセットによる隊員目線の映像もありますが、これは我々が加工しなくても我々の正当性を示すことができます。彼らは実に良い働きをしてくれました」


「よし、軍事機密やショッキングに関わるような箇所だけモザイクで加工してから公表しよう。今日の記者会見で発表する。調整は任せた」


トーマス大統領はこの映像を最後まで確認したうえで午後8時の記者会見の場で公開することを決めたのだ。

世界最強ともいえる米軍の中でも更に精鋭の部隊。

グリーンベレーによる戦闘を公開する決定をしたのだ。

軍機に関わる情報以外は可能な限り公開する。


ベトナム戦争やイラク戦争の際に、アメリカは大義名分を掲げて戦争に参加したがベトナムでは中国・ソビエトが支援する北ベトナム相手に苦戦し国内の反戦運動に押されて撤退。


イラク戦争ではフセイン政権を倒したまではいいが、宣戦布告した際に大量破壊兵器があるという情報を元に戦争をしたが大量破壊兵器はなく、イラク国民の感情悪化を招いてしまった反省に基づいて行動することを心掛けている。


現在ロサンゼルスに拠点を置いていた反トーマス大統領派のメディアはドラゴンの攻撃で壊滅しており、国内の世論は保守系メディアの先導もあってかトーマス大統領を支持している。

異世界に関する情報は合衆国だけでなく、世界から見ても最も知りたい情報だ。


しかしながら、良いニュースはここまでだ。

次に悪いニュースを報告しなければならない。

それも、とびっきり悪いニュースだ。

マッキンゼー長官が異世界統合軍から送られてきた資料を基に作成した現地の地図と勢力図である。


「…では、次に異世界における基地周辺に関する事ですが…我々アメリカ軍が召喚場として固定された異世界合衆国領レーオーは大陸北西部に位置しております。森が多く、小型の攻撃的生物も複数いて安全圏を確保するにはまだ時間が足りません」


「では予定よりも移民による入植に関しては遅れるかもしれない…という事か?」


「はい、入植者の安全を考えれば期間を少しばかり延ばすしかありません。わが軍の圧倒的な火力によって5キロ四方の安全は確保されていますが、入植には最低でも10キロ四方は確保したいです。これは住宅都市開発省(日本の国土交通省に該当する)と国土安全保障省が作成した『異世界入植プラン』においても絶対的に必要な範囲なのです」


異世界とアメリカを繋いでいる場所は立地としては少々悪かったのだ。

密林に近く、平原や運河があり開発すれば交通網は発達するが現地の動物から攻撃を度々受けているため、これらの不安要素を排除してから入植を開始する手筈となっている。


しかし、予想以上に密林での安全確保に苦戦しているので入植計画は当初よりも三ヶ月以上は遅れる見通しだ。

トーマス大統領は少しだけ眉を寄せるも、その安全さえ確保できれば入植はできるという事で了承を得た。


「…うむ、仕方ないが入植者の安全を考えればやむを得ないな。各異世界参入予定企業に関しても通知はちゃんと徹底しておくように。後になって私へのネガティブキャンペーンに使われたらたまったものじゃないからな」


「はい、次に…大陸における勢力図なのですが…こちらの資料をご覧ください」


渡された資料には現地人が所有していた大雑把な大陸の地図と勢力図が記されている。

この勢力図は現地人が大雑把ならが最新の勢力図を記した大陸地図…。

大陸の東西にそれぞれ一つずつ国家があるが、それ以外は塗りつぶされたように巨大な勢力が存在している。

この大陸における巨大勢力こそ異種族・異教徒を弾圧・粛清している大陸同胞会なのだ。


「…どうやら、米軍の増援と新たな予算を計上する必要がありそうだな…」


大統領はその図をみながらポツリと呟いた。

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