制圧 3
閃光音響手榴弾。
フラッシュバングともよばれているこの兵器は密室で立てこもっている相手の動きを封じ込めるために使われる非致死性兵器だ。
強烈な閃光で視力を一時的に奪い、更に170デシベルもの音が響き渡るので相手は反射的に身を守ろうとして屈んでしまう。
その隙を見計らい、室内への突入を図る。
各居住区画でこのフラッシュバングが使用された。
室内戦闘を想定してか大陸同胞会の構成員たちはドアの前で槍や剣を握って待ち構えていたが、突然の眩しい光と耳鳴りが響き渡るほどの音で待ち伏せは完全に破綻してしまう。
「動くな!!!抵抗する者は射殺する!!!」
居住区画の入り口から迷彩服の男たちが突入する。
先頭に立っている者は防弾盾を左手に構えて、右手に弾倉を拡張したM1911を握りしめて入ってきた。
それに続くようにM16を構えた兵士たちが居住区画に乗り込んでいく。
「くそっ、頭がいてぇ……ぐわぁっ!!」
「なんだよこいつら…ぎぇぇ!!」
床にうずくまっている白衣を着ている者たちを片っ端から銃床の部分で頭を殴ってから縛り上げる。
グリーンベレーということもあってか、僅か20秒で一階部分を制圧してしまう。
居住区画の入り口付近にいた大陸同胞会の構成員はぞろぞろとやってきた男たちに手足を縛られて、呪文を喋らせないように猿ぐつわをはめさせる。
味方と連携して遮蔽物に敵がいないか確認する。
「右よし!、左よし!」
「一階はこれで全て制圧したな!次、二階にいくぞ!」
敵に反撃を与える隙を作らせないように素早く移動を開始する。
下の騒ぎを聞きつけた大陸同胞会の魔術師が魔法を使ってグリーンベレーの行く手を妨害しようとするが、魔法が発動するまでの時間の間に阻止されてしまう。
「あいつは魔術師だ!あの本を撃て!」
そう、魔術師は魔本と呼ばれる魔力が込められた特殊な本を使って魔法を発動させるのだ。
呪文とは違って魔法は呪文より強力な攻撃を行えるが、その分発動には時間が掛かる。
熟練の魔術師であれば5秒で魔法を展開できるらしいが、人がとっさの判断で銃を撃てるのは2秒前後だ。
つまり魔法を発動させるよりも反射的に銃で撃ち抜くほうが早いのだ。
―バァン!!!
隊員が咄嗟に魔術師の魔本を撃ち抜く、すると魔本から紫色の液体がこぼれ落ちていく。
こぼれ落ちた液体が魔術師の身体に掛かる。
すると魔術師の身体から白い蒸気と共に悲鳴をあげる。
「ぎゃああああああ!!!熱い!!!!熱い!!!!」
どうやら強力な酸を使った攻撃をするつもりだったようだが、攻撃が無効化された上に魔本から漏れ出した酸によって魔術師の身体が溶けていく。
魔術師は最後の悪足掻きとばかりに力を振り絞って隊員たちに捨て身の突撃を敢行する。
「このぉぉぉぉ!!!畜生がああああああああ!!!!」
―バァン!!!バァン!!!
銃を持った相手に生身で勝てる奴はいない。
それに、抵抗する者は射殺しても良い事になっている。
銃弾二発が魔術師の頭部と腹部に命中し、絶命する。
それを見ていた他の構成員たちは次々と降伏する。
魔術師やスキル持ちの戦闘員は階級も地位も高い。
自分達の上位者があっさりと死ぬところを見せつけられたらどうなるか。
それは降伏して助命を乞うしか生き残る術はない。
「た、頼む…殺さないでくれ!」
「ど、どうかご慈悲を!」
「武器を捨てて両手を頭に乗せて地面に伏せろ!降伏者は助命してやる。それから下手な真似をしたら容赦なく射殺する!これは戦時国際法に則り処罰されるものである。分かったか!」
隊員の指示で次々と武器を捨てて降伏する構成員たち。
グリーンベレーは現地の言葉を話せる訓練を受けている。
異世界の言葉は英語とドイツ語をリミックスしたような発音であったことから、比較的学習もしやすかったのだ。
居住区画の至る所で眩しい光と激しい音が繰り広げられる。
次第に銃声も止んでいき、最後に発砲があったのはグリーンベレーが広場に着陸してから8分後であった。
衣装入れの中に隠れて反撃の機会を伺っていた戦闘員を発見し、咄嗟に撃ったのだ。
戦闘員は女性の寝具の中に隠れてナイフを持っていたが、衣装入れの付近にやってきた隊員に襲い掛かる際にタイミングを誤ってしまう。
隊員の目の前の壁にナイフが突き刺ささり、隊員は正当防衛として射殺したのだ。
「HQ、こちらBチーム第4小隊…たった今、村の制圧を完了した。大陸同胞会の戦闘員及び構成員は可能な限り拘束した。村人の生存者も7名ほど保護した。うち2名が重傷だ、ヘリをもう一機寄こしてほしい」
『こちら本部、了解した。異世界での初任務ご苦労様であった。じきにCH-47が迎えに来る。負傷者を先にそのヘリに乗せよう。それと今回の戦闘で確保した奴らはアメリカ合衆国領で起こした重大犯罪の重要参考人たちだ。くれぐれも逃亡しないようにしっかり見張ってくれ』
居住区画から次々と拘束された大陸同胞会の者たちが連れ出される。
人数は51名。
構成員30名、戦闘員17名、魔術師3名、下級士官1名。
村を占拠していた時に321人ほどいたが、51人以外はすべて死体となっている。
次に奇跡的に生き残った村人は7名。
子供が5名、残り2名は成人女性だ。
子供は食料貯蔵庫の樽の中に潜んでいて難を逃れたのだ。
女性2人は酷い怪我をしており、隊員たちによって救助された時には下半身を重点的に暴行された跡が生々しく映し出されていた。
2人の女性は何度も助け出した隊員にお礼を言って子供たちと共にヘリコプターに搭乗する。
「ありがとう…!助けてくれてありがとう…!!!」
「ありがとう、本当にありがとう…!!!」
グリーンベレーの隊員たちは彼女たちの顔を見て、少なくとも自分達の活躍によって現地人が助かったことを嬉しく思った。
それと同時に、もう少し早く彼らと接触できていたらこのような悲劇は生まれなかったかもしれないと思う。
銃を構えたまま、グリーンベレーの隊員たちは無表情で交代要員の兵士が到着するまでの間、拘束した大陸同胞会の輩の監視をしていたのであった。




