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制圧 2

揺れるヘリコプターの中で男たちは戦衣装に身を包んでいる。

この衣装は異世界にはないものだ。

科学技術と戦争で死んだ多くの兵士たちの統計調査を通じて学び、命を守るために出来上がった戦闘服アーマーだ。


すでに彼らは戦闘の準備が整っている。

隊員たちは己の命を預ける防弾チョッキを身に纏い、自身が使いように改造を施された武器を持って待機している。

彼らの武器は迷彩塗装やグリップなど追加のオプション装備が施されているが、こうした軍の支給品である装備品を迷彩塗装にカスタムできるのは特殊部隊だけの特権だ。


CH-53はゆっくりと降下していく。

あと2分以内に着陸するようだ。

最終確認を終えてからグリーンベレーBチーム第4小隊の小隊長を任された日系人のヤマモト少佐が号令を掛ける。


「よーし、あと120秒後に着陸するぞ!これが異世界で最初の仕事だ!気を引き締めろ!いいな!!!」


「「「サー、イエッサー!!!」」」


「いいか、相手は()()を使ってくるかもしれん。白衣を着ている奴は問答無用で拘束しろ!()()()()()()を行った()()()()()達だ。もし攻撃する素振りをしたら構わず撃て、この世界にジュネーブ条約は存在しない。あるのは俺たちアメリカの正義だ!分かったか!」


「「「サー、イエッサー!!!」」」


大声で返事をする隊員たち。

これまでに彼らは世界中の戦場で戦ってきた猛者たちだ。

アフガニスタン、イラク、シリアは勿論の事。

フィリピンやリビア、パキスタンで起こったテロ紛争にも出動している。


戦場の裏側に必ずいると言っても過言ではない特殊部隊。

それがグリーンベレーだ。

ベトナム戦争から現代にいたるまで第一線で活躍するアメリカ軍が誇る精鋭であり、同時に村を彼らだけで制圧できるだろう。


「よーし、最後にもう一度だけおさらいだ!ヘリから降りたら分隊ごとに分かれて行動を開始する!村は半径100メートル以内ほどしかないが、木々をくり貫いて居住区画として使っているようだ。幸いにもこの木は不燃性の物質で出来ているからナパーム弾でもない限り燃えはしない!存分に俺たちグリーンベレーの力を異世界人に見せつけてやれ!分かったな!」


「「「サー、イエッサー!!!」」」


間もなくヘリコプターが広場に着陸する。

CH-53の後部ハッチが開く。

地面に接地したのを確認するとヤマモト少佐は隊員たちに作戦開始の合図を告げた。


「いけぇぇぇぇ!!!GO!!!GO!!!GO!!!!!!」


ヘリから最初に降りた4人が周囲の警戒を行う。

その間に次々とヘリから隊員たちが降りていく。

銃を構えて周囲に狂信者たちがいないか確認する。


周囲には殺りくを楽しみ、それを快楽としていた者たちの亡骸が転がっていた。

身に着けていた筈の白衣は、血で赤い衣類と染色されている。

そうした地獄のような場所でも眉をひそめるだけで、日頃の猛訓練を生かして安全を確保する。


CH-53が離陸して上空で待機している間に村を制圧しなければならない。

その為にも、貴重な()()()()()から受け取った村の地図を元に家々の制圧を開始する。



降りてくる兵士たちを見た構成員たちは、その光景に驚愕する。

見たこともない()()()が降りてきたかと思えば、口を開いて人間がぞろぞろと飛び出してくるではないか。


「なんだあの服は…泥にでも浸かったのか?」


「あいつら魔術師なのか?」


それは大陸でも見たことが無い服装をしており、手に持っている武器も杖に取っ手をつけたようなものだ。

大陸同胞会が滅ぼした国や宗教の軍隊や私兵の鎧ではない。

緑色をベースに森林地帯での戦闘で相手側から見えにくい迷彩服を着ているのだ。

金色など目立つような派手な色合いなどはしていない。


魔術師であればローブを身に纏うが、ローブのようなものを着ているわけでもない。

異世界人の視点でみれば『汚れた衣装』を着ている状態でやってきたのだ。

パッと見た限りでは勇ましい戦士に見えないのかもしれない。


「…おい、あいつらがさっき攻撃してきたのか?」


「…たぶんな…くそっ、四方を隈なく見ている…隙が無いぜ…」


「…静音魔法をかけてから攻撃すればいいだろう。なに、奴らはこの家を攻撃してこないじゃないか。なら、あの恐ろしい攻撃はしてこないはずだろう?」


生き残った数少ない戦闘員の男が弓に呪文を唱える。

数十秒だけ弓を引く音を消すためのものだ。

音が分からなければ反撃しようがない。


「…お、おい…本気でやる気か?」


「…ああ、他の家に逃げ込んだ奴らも隙を狙っている筈だ…俺がそのきっかけになれば後でメブ様から褒美が出るに違いない。あの人は部下をちゃんと評価する人だ」


「…いや、もう少し引き付けてからでもいいのでは?」


「…なに、あのデカブツは空に飛んで行った。あいつが攻撃してこない今がチャンスだろう!俺はやるぞ!」


男は矢も強力な毒を塗ったものを使い、弓を引き始める。

一番手前にいる兵士を狙うようにヒビが入った壁の隙間から弓を引いて狙いを定める。

着実に息を止めて頭を狙おうとする。


―バァン!バァン!バァン!


…が、矢を放とうとした瞬間に何かが破裂した音が外で響き渡る。

その音に気を取られて視線を戻すと、先程まで攻撃しようと息巻いていた男がいた場所に無数の穴が開いて男の身体を貫いていた。


「…う、うそ…だ、だろぅ………」


男は矢を放つことなく血を流して絶命した。

その光景に隣にいた構成員は途方に暮れる。

これは悪夢だ。

悪い夢を見ているに違いない。

そう思い頭を両手で抑えた瞬間に視界が真っ白になる。


―ガァァァァァァァァン!!!!


次いで耳も強烈な耳鳴りが響き渡る。

う破裂音と共に視界と方向感覚を失う。

何もできずに右往左往していると、誰かに身体を押さえつけられてしまう。

手と足を縛られて、気が付くと何もできないまま男は見知らぬ模様を施した男たちによって身柄を拘束されてしまっていたのであった。

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