Combat 6
「殺せ!殺せ!異教徒を殺せ!」
「殺せ!殺せ!異種族を殺せ!」
「お、俺たちが何をしたって言うんだよぉーっ!」
「やめてくれ!やめてくれーっ!!うぎゃああああああああ!!!!」
怒号。
興奮。
悲鳴。
絶叫。
村に響き渡る大合唱。
辛うじて命乞いをして生き残った村民が、次々と狂信者たちによって殺されていく。
一度は生かした身でありながらなぜ殺すのか?
理由は単純明快だ。
”強敵が現れたからだ…”
ナルゼとラディを救うべく、ソホヤに率いられた百名は同胞たちの中でも戦闘が優秀な人物であった。
そんな彼らはたった14名程度まで数を減らして帰ってきたのだ。
残りは全員未知の攻撃でやられたと喚きだした。
「あれは矢ではない!とてつもない攻撃だ!」
「化け物だ!あれは化け物なんだ!!!」
「逃げろ!とにかく逃げるんだ!」
これまでに幾多の戦いを経験した同胞が混乱しているのを目の当たりしたレレグは、その中でも村から逃げようと進言している同胞の首を大剣で跳ね飛ばした。
両断された首が宙を舞い、自分が死んだと分からないまま絶命する。
「やかましい!!!我ら大陸同胞会の力はその程度のものであったか!!!」
その怒号に静まり返る広場。
レレグは大変立腹していた。
自分の愛人を取り戻すどころか、同胞のうち三分の一を失ったことに怒っていた。
攻撃の方法も気になるが、逃げかえってきた臆病者たちにどのような攻撃を受けたのか聞き出す。
「おい、相手の攻撃はどんなものであったか!!!言え!!!」
「は、はいいぃ!!あ、相手の攻撃は矢ではありませんでした…まるで太鼓を甲高く叩くような音を発すると、突然身体から無数の穴が空くのです…それと、黄色い光を点滅させておりました!魔法による攻撃でもあれだけ光る魔法は見たことがございません!」
男はレレグの前で自分たちが見た光景を包み隠さず話した。
甲高い音と光が点滅し、気がつけば身体に穴が空いているのだ。
近代兵器を知らない者からしてみれば恐怖以外の何物でもないだろう。
「さらに、奴らの後ろには奇妙な箱のような魔獣がいたのです!魔獣から火が噴いたかと思えば、太い木が一撃で粉砕されてしまっているのです!それも何度も繰り返し行うのです!あれは魔法使いでも魔術師でもありません。化け物なのです!」
未知の攻撃に曝された彼らの精神状態は芳しくない。
他の全員も同様の言葉を口にしている。
流石に嘘を言っている素振りは見られなかった。
「う~む…そんな集団は聞いたことが無いぞ…」
こればかりはレレグも首を傾げてしまう。
大陸同胞会でも兵を預かる身分になるまでに、レレグは数々の異教徒や異種族狩りの戦いに参加していた。
魔法使いや魔術師と戦ったことはあるが、無数の穴を身体に開けさせる攻撃魔法や、大木を一撃で粉砕する攻撃は魔法石などを使わないと使用ができない。
おまけに、そうした攻撃は青や赤の色が放たれる。
黄色の色が放たれるとしたら灯りを照らす日常魔法に分類されるものしかしらない。
「メブよ、お前は現れた相手の事をどう思う…?」
レレグは側近のメブに意見を尋ねる。
メブは十秒ほど思考を巡らせる。
メブの出した答えは、相手が自分達の常識が通用しない相手である可能性を示唆した。
「そうですね…まずこの辺りに出没するモンスターや敗北者どもの斥候兵とも思えませんね…この辺りの大木を一撃で粉砕できる魔法はある程度素性のある者でないと破壊できません。まして、魔法が使える人間など我々大陸同胞会以外では山岳地に逃げた長耳族程度でしょうか…それとも…」
「それとも…何だ?」
「この村の人間が仕掛けた罠が作動したのかもしれません…」
最も現実的な考察であった。
村は大陸同胞会へ屈服することを拒み、灯りすら魔術を使用して漏らさない程であった。
そうした徹底した抵抗戦を選択した彼らならば村の郊外に罠を仕掛けているということも考えられる。
レレグは頷いてメブの考察を採用する。
「やはりそうとしか考えられないな!よーし、全員…生き残って遊んでいる連中を徹底的に殺し尽くせ!」
レレグの掛け声一つで、村の生き残りの運命は決した。
必死に命乞いしたのは何の為だったか。
潔く死ねば良かったのではないか。
無念を抱きながら次々と村の者は殺されていく。
「やめてくれ!娘は殺さないでくれ!!」
「お父さーん!!!痛いよおぉぉぉぉぉ!!!!」
「うわああああああああああ!!!!!」
ある者は目の前で娘の腸を切裂けられ、ある者は槍で下半身を突き刺され、ある者は意識が無くなるまで体中に剣で刻まれて…。
そして死んでいく。
その光景を見ながらレレグは大声で笑いながらメブを称賛する。
「メブよ、考察見事であった!」
「ははっ、一応この村の者を殺し尽くしたら一度本拠地まで引き返しましょう。生き残りが呼びかけに応じて反撃してくるかもしれません。十分以内に殺して戦利品を袋に沢山詰め込んでから村を焼いておきましょう。私は先に本拠地にて戦果報告を致します故、お先に失礼します。」
「さすが我が右腕よ!徹底したやり方を推薦するとは、見事なり!戦果報告もよろしく頼むぞ!」
白馬にまたがって本拠地に向かうメブを見送ると、レレグも他の同胞たちと混ざって虐殺に加わった。
笑ながら人を殺す気分はどんな気持ちなのだろうか?
本人に聞かなければ分からない。
ただ一つ言えるのは、レレグも異教徒と異種族殺しに快楽となっていることだろうか。
そうして村人を殺し尽くしたところで、現場で両手をあげて喜びを表現しているレレグは実にいい気分であった。
異教徒かつ異種族を徹底的に破壊することができた。
愛人を含めた多くの同胞が犠牲になったのは心に響くも、本拠地に戻れば新しい戦力で補えるだろう。
勝利を確信したその時であった。
レレグは身体に違和感を感じた。
酒を飲みすぎたのだろうか、視界がぐにゃりと曲がっていく。
うっかり飲みすぎたのが原因だろう。
「おっと、いけねぇ…ん?」
―バズゥン!バズゥン!
足元に突然土埃が舞ったかと思えば、変な感触を感じる。
腹部を触ると、赤黒い臓器が無数に出てきた。
レレグの腹部から飛び出している臓器は誰のだろうか?
それはレレグ自身の中身だ。
「…はぁっ?!…いっ、一体なにがぁっ…!!」
ふと、空を見上げる。
そこには空を飛ぶ乗り物がレレグ達に向けて攻撃していたのだ。
レレグは誰に攻撃されたかも分からないまま、地面に倒れる。
村人を殺し尽くした奴らに待っていたのは裁きであった。




