三百五十六話 親の仇
最終破壊兵器クロエが放った威嚇射撃の爆弾が、息子が受験する志望校のパンフレットを見ていた球体王まんまるに直撃する。
どーーーんっ、と巨大な花火が目の前で打ち上がったような大爆音と共に、まんまるが粉々になりながら飛び散っていく。
「あわわわわわ」
うまく言葉がでてこない。
現実にあわわ、とか言うやつなんていないだろうと思っていたが、本当に動揺している時、人はあわわ、と言っちゃうものだと実感する。
『ク、クーちゃんっ、なんでまんまるをっ!?』
「あわわわわわ」
クロエも俺と同じように動揺している。どうやら当てるつもりで当てたんじゃないらしい。
『これ、どうなるん? 審判おらんくなったから試合中止なん?』
「おお、それいいねっ、このまま無限界層一桁トーナメントも中止でいいじゃないっ」
伽羅様と彼女のタッグなんて絶対戦いたくないものっ。
『そんなわけにはいきませんよ』
脳内に響くカルナとは違う声。
「この声はっ、球体王まんまるっ!?」
「え? 生きてたん? よかった、うち、誤射で殺ってしもたか思たわっ」
爆発のあった空を見上げると、ひと回り小さい球体王が輝いている。
「爆発で小さくなった? 外側が壊れただけ?」
『違いますよ、父は流れ星になりました。僕はジュニア。球体王まんまるJrです』
「受験生のっ!?」
こくり、と球体が縦に頷く。
『亡き父の意思は僕が引き継いでいきます。たとえ浪人しようとも』
なんで引き継いじゃったのっ!? お前は受験頑張れよっ!!
『ヤバいで、タッくんっ、うちのクーちゃんが初代まんまる殺ってもうたっ、絶対向こうひいきされるでっ、うちら大ピンチやっ!』
え? そうなの?
『そんなことはありません。我々、球体族は生まれた時から絶対平等公正公平の立場で様々な審判を務めてまいりました。たとえ親の仇といえど、その姿勢を崩すつもりはございません』
「そ、そうか、若いのに偉いな君は。うちのクロエがすまなかったね」
「ご、ごめんな、わざとちゃうねんで」
『ただ……』
え? ただ?
『ただ僕はまだ正式な資格を持っていない受験生なので、誤審をしてしまうかもしれません。それはわざとではないのでお許しください』
「あわわわわわ」
「あわわわわわ」
クロエと身を寄せ合って震え上がる。ダメだ。全然、俺たちを許していない。
「もう始めてもいいのかしら?」
彼女が焦れたようにまんまるJRに尋ねる。うん、できれば一生始まらないで。
『すこしお待ちください。僕の父はこのタッグ戦、魔剣カルナや最終破壊兵器クロエをタクミ陣営の武器として認めていたようですが僕の見解は違います』
「へ?」
ちょっと待ってっ、それって……
『魂の宿った武器は武器ではなく、1人の人間と換算いたしますので、このタッグ戦での使用を全面禁止にさせていただきますっ』
ぎゃあああああっ、カルナやクロエが使えないって、それもう完全に終わってるじゃないかっ!!
「えと、私はどうなんですか?」
『レイアさんは論外です。早く消えて下さい』
う、うん、まあ、そこは俺もそう思ってた。
でも、これでソネリオンと2人になったら、伽羅様と彼女に勝てるはずないじゃないかっ!
「……魂の宿った武器、だったら私の可愛い魔装備たちは?」
『全部アウトです。すぐに装備を解除して下さい』
俺の隣にパンツ一丁のおっさんが並ぶ。もうやめて、最弱のおっさんと裸のおっさんが2人で一体何ができるっていうのっ!?
『ちょっと待ってっ、助っ人全面禁止やったら、そっちの彼女も助っ人やんかっ! ほんまはネレスが戦うはずやんかっ!!』
おおっ、ほんとだっ、ナイスツッコミだよ、カルナっ!
『彼女さんは正式に交代が認められました。なのでルール上、なんの問題もございません』
「だったら俺たちもチェンジだっ、俺とソネリオンに代わって、カルナとクロエに交代してくれっ!」
『タ、タッくん、どさくさにまぎれて試合から逃げようとしてる』
うん、だってもうこんなのただの拷問なんだもん。
『残念ながら交代時間は終了致しました。今後、いっさいの交代、助っ人は認められません』
「思ってた以上の超エコひいきだよっ! こんちくしょうっ!!」
まんまるJRが、ニヤリといやらしい笑みを浮かべ声高らかに宣誓する。
『それではこれより無限界層一桁トーナメント準決勝、タッグ戦を再開致しますっ!!』
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