三百五十七話 ちぢみあがる走馬灯
『それではこれより無限界層一桁トーナメント準決勝、タッグ戦を再開致しますっ!!』
いやぁあああああっ、始めないでぇ、再開しないでぇっ!!
「どうする? キャラメル、タクミのパートナー、パンイチだけど」
「うんもう、ただのおっさんだからほっといていいよ。2人でタクミをやっちゃおう」
ダメえぇええぇっ! せめてパンイチのおっさんを2人で片付けてぇっ!!
『タッくん、頑張って、うちら何もできへんけど応援してるでっ』
「タクミ殿になにかあったら、世界滅ぼしますので大丈夫ですっ」
大丈夫じゃないよっ! 俺が死んだ後の世界なんてどうでもいいよっ!!
「ふっ、どうやら2人とも、この私を戦力外と判断して油断しているようですな」
「ま、まさかっ、実は奥の手を隠していたのかっ、ソネリオンっ」
「……」
「お、奥の手を隠していたの? ソッちん」
「いえ、そのまま状況を説明しただけでございます」
だからソッちん呼びならなんかありそうな雰囲気だすなよっ!!
もう、どうせやられるなら先にチョビ髭を殴ってやりたいっ、最初から最後まで邪魔しかしてなかったよっ。
「じゃあいくよ、タクミ。覚悟してね」
ぶわわっ、と伽羅様が分裂する。その数、100以上。クロエにくっついていた発射口のすべてを喰いちぎった101匹ワンちゃん大分身だっ!!
「え、俺、全部喰いちぎられちゃう?」
とりあえず、1番大事な部分だけを両手で覆い隠す。
『タ、タッくん、そこだけ守っても……』
いいんだよっ、ここだけは喰いちぎられたくないんだよっ。
「あらあら、ワタシが攻撃する箇所は残ってるかしら。そこだけ残ってたら、なんかイヤだわ」
「息子の息子は攻撃しないでっ!!」
もうイヤだ。こんな戦い、今すぐ逃げ出したいっ。
「あ、あの、まんまるジュニアさん、棄権したいんだけど、よろしいですかね?」
『認めません。この試合はどちらかが全滅するまで決着がつかないデスマッチ方式になっております』
「そ、そんなのいつ決まったのっ!?」
『パパがお星様になった時からに決まってるでしょうっ!!』
うん、ぐうの音もでない。クロエも目をそらして、こっちを見てくれない。
『さあっ、パパの仇をボコボコにして下さいっ!!』
「あまりにもエコ贔屓がすぎるよっ!!」
百一匹伽羅様と彼女が大地を滑るように高速で飛んでくる。さけれないっ、よけれないっ、受け止められないっ、もはや俺ができることは、大事な部分を隠すことだけっ!!
「やめてえぇえっっっ!!」
目の前が真っ白になり、なにもかも見えなくなる。
「もうタクみんはこれぐらいのプレートじゃ足りないかもしれないでござるよ」
『ほんまやな、もう手遅れやな。どうする? もうちょんぎってしまう?』
ロッカとカルナが黙々とスケベ猛省中のプレートを豪華に飾りつけている。
あ、あれ? この光景は? 過去の映像?
「よかったら、それ、私がカットしましょうか?」
「やめてっ! それだけはカットしないでっ!!」
いままでで1番怖いレイアの登場シーンに、背筋が凍りつき、それがちぢみあがる。※
も、もしかして、これって走馬灯? あの部分を必死に守ってたからっ!? 俺の最後の想い出、これで終わっちゃうのっ!?
「そんなの、いやだぁぁぁあぁあぁっ!!」
絶叫と共に雷にうたれたような衝撃が全身を駆け巡る。
伽羅様の攻撃っ!? いや、違うこれはっ……!?
「絶対不可侵領域」
その声は俺の中から響くように鳴り響く。
101匹伽羅様と彼女が見えない壁に、がんっ、と衝突する。
「も、文字人間?」
「来ちゃった」
ロッカの頭の中から再び俺の中へ。
何を考えているのか、真意の見えない嘘ナイスガイが最大のピンチに駆けつけて、てへ、と舌を出した。
※ タクミのそれがちぢみあがるエピソードは「第十部 一章 三百二十一話 寿」をご覧になってみてください。
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