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三百五十四話 ごほうび2

 

 伽羅様が彼女ときゃきゃうふふ、とボールで遊んでいる。


「え、えっと、何してるんですかね?」

「キャラメルは持ってこい遊びが大好きなのよ♡ ね、キャラちゃん♡」

「わふん」


 そんなこと聞いてないよっ、いまこの状況で何してるのって聞いたんだよっ!


「あのぉ、ちょっと後にしてもらえませんかね。最終破壊兵器、自爆しそうなんで……」

「何言ってるのっ!? 頑張ったごほうびでしょうがっ!!」

「わふっ!!」


 お、怒られたっ、俺怒られたよっ!

 ええっ、俺が間違ってるのっ!? 確かに伽羅様発射口全部もぎ取ってくれたけど……


「じゃ、じゃあ、1人でがんばってみますね」

「そうね、ちゃんとできたらタクミにもボール投げてあげるわ」

「わっふ」


 世界滅亡救うご褒美がボールなんだ。

 逃げ出したいのを我慢して、いまだひっくり返ったままのクロエに近づいていく。


『タッくん、優しい言葉の応酬やでっ』

「応酬ですよ、タクミ様っ」


 うん、黙れ、お前ら。一言間違えたら世界滅んじゃうんだぞ。そんな適当な応援いらない。


「あー、クロエ、その、自爆すると痛いし、そんなことしたら余計に出番なくなっちゃうよ。ここは穏便に……」

《うちだけやなくて、みんなも永遠に出番なくなるなら本望や》


 うん、やめて。全滅エンドで連載終わっちゃうからね。


「だ、大丈夫。これから出番増えるよっ、発射口ついてカッコよくなったし」

 《ダックスフンドが全部もぎ取っていったで》

「……」


 う、うん、そうだったね。どうしよう、フォローの隙間もない。


『沈黙はあかん、なんか言うてっ、声かけてっ』

「あかん、言うて、かけてっ」


 うるさい、お前の髭も全部もぎとるぞ、チョビ髭っ!


「そうだっ、しばらくカルナと入れ替わって魔剣やってみるか? ずっと側にいられるし出番倍増、レギュラー間違いなしだよっ」

『えっ?』

《えっ?》

「え? 私がですか?」


 なんでお前なんだよっ、チョビ髭っ! お前長いことシャツやってたじゃないかっ!!


『タッくんっ、うちのこと嫌いになったんっ!? クーちゃんと一緒にいたいん? そんなことになったら、うち、うち……』

「ち、ちがうよっ、期間限定だよっ、落ち着いたらまた元に戻すよっ、って、なんか魔剣から発射口出てきてないっ!? そんな秒速で闇落ちしないでっ!!」


 今のカルナが最終破壊兵器になったら、もはや誰も止められない。この世界どころか、全界層、終わっちゃうよ。


《心配せんでええよ、カル姉。うちの魂はもう終ちゃんと融合してしもてる。二度と普通の姿には戻られへん。ずっと発射口と繋がったまま生きていくしかないねん。……もげてるけど》


 ええっ! そうなのっ!?

 ぶわわっ、と思わず涙がこぼれる。

 世界(ほろ)ぼしたくなる気持ちもわかってしまうじゃないか。


「なんとかしろよ、髭っ、元々はお前が最終破壊兵器なんて作るからっ」

「……」

「な、なんとかしてください、ソッちん」

「申し訳ありません。終ちゃんは魔装備の集大成。私ごときがその融合された魂に手を加えられるはずもございません」


 じゃあソッちん呼びならいけそうな雰囲気だすなよっ!! 


『タッくん、こうなったら仕方ないっ、クーちゃんを思いっきり抱きしめて慰めてあげてっ!』

「え、ええっ!?」


 それ自爆されたら、俺、絶対に助からないよね?


「タクミさん」

「えっ、まだいたの、レイア」

「はい、私は見えない時もずっと側にいますよ。それよりこれは私が出会った時に体現したタクミさんの必殺技ですね。あまりにも大きな力を持つタクミさんには、ほんの少し触れただけで多大なる影響を及ぼします。大武会の時には直接口からその力を流し込んでアリス様を撃退し優勝しましたね」


 うん、やめて。そんな力はないし、そんな初期設定みんな忘れてるよ。


『く、口から直接、しゃ、しゃーない、緊急事態やっ、今回だけは、それも許したるわっ、クーちゃんを救ってあげてっ!!』

「ええっ!? ダ、ダメだよっ、そんなのクロエだって嫌だよなっ!?」

《そ、そんなことあらへんよ……ポッ》


 えっ!? なんか黒龍なのに全身真っ赤っかなんだけどっ!!


「え? え? これキスする流れなのっ!? 俺、されたことあるけど、自分からしたことないんだけどっ!!」

『キスやない、必殺技やからノーカウントや』


 コクコクとレイアも頷いている。ボール遊びをしていた彼女と伽羅様もこっちを見てコクコクしている。


 いやぁっ、せめてこっち見ないでええっ!!


 覚悟を決めて、巨大な黒龍のクロエを抱きしめる。大きすぎるから鼻みたいな場所にしがみつくので精一杯だ。


「これはキスじゃない。これはキスじゃない」


 呪文のように唱えて、鋭い牙が剥き出しの黒龍の口に、ソッと唇を重ねる。


 ぼんっ、という爆発したような音がして、まるで呪いが解けたように最終破壊兵器だったクロエの姿が人型に戻っていく。


「あいたっ!」


 彼女が投げたごほうびボールが俺の後頭部に直撃した。







コミックス5巻が2026年9月8日に秋田書店様の少年チャンピオンコミックスから発売されます! この巻から小説版とかなり違うオリジナル展開になりますので、ぜひぜひお手に取ってみて下さい。よろしくお願い致します!

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