三百四十九話 愛の流星群
「いやぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁっ!! ちょっと待ってぇえぇぇええっぇっぇええっ!!」
うん、当然待ってくれない。
ものすごい勢いで、伽羅様とネレスが俺に向かって突進してくる。
「ふ、不可侵領域っ!!」
思わず叫んだのは、文字の力最強の防御壁。しかし文字人間がいないので、もちろん発動しない。
だが、その言葉を聞いた伽羅様とネレスの足がピタリと止まる。
『タッくんっ』
「ああ、元から見えない壁だったから、発動しなくても2人とも警戒してくれたんだっ、カルナっ、力はたまったかっ!?」
『まだやっ、あと10秒っ』
ひぃ、無理だっ、10秒どころか、5秒ももたないよっ!!
「ソッちんっ、時間稼いでっ」
ダメ元で自爆が出来なくなった元凶の髭に頼んでみる。
「おや、時間を稼ぐだけでよろしいのですか?」
「え?」
「別にあの2人をそのまま倒してしまっても構わないのでしょう?」
か、かっこいいっ! なんなのっ!? カルナの力を吸い取って、スーパーソネリオンになったのっ!?
「いきますよ、お嬢さん。そして可愛い子犬さん」
すっごい男前のキリッとした顔で、2人をびしっ、と指さすチョビ髭。キランと髭が光っている。
『タッくんっ、上っ!!』
「えっ!? 何あれっ!?」
太陽の横に、球体王まんまると同じように巨大な黒い球体が現れる。
「伽羅様っ!」
「気をつけてネレスちゃん。異次元ホールだ。穴からいっぱい出てくるよっ」
その声と同時だった。黒い球体から一斉に何かが降り注ぐ。
「魔装備流星群」
剣、刀、鉈、長刀、大剣、短剣、細剣、双剣、銃剣、槍、ハルバード、バルディッシュ、薙刀、鎌、大鎌、戦鎌、棍棒、ロッド、斧、杖、メイス、金棒、鞭、ハンマー、トンファー、スティック、木刀、モーニングスター、鎖鎌、多節棍、鉄球、フレイル、弓矢、クロスボウ、スリングショット、銃、大砲、ブーメラン、手裏剣、チャクラム、ジャベリン、メリケンサック、鉄扇、鉤爪、毒針、爆弾…… etc。
空を埋め尽くすほどの、大量の武器が伽羅様とネレスめがけて一気に降り注ぐ。
「アレはっ!? 魔王が大武会でアリスに使った多重転移空間魔法・百鬼夜行っ!?」※
『似てるけど違うっ! アレはただの武器やったっ! コレはっ! 信じられへんっ! 全部の武器が魔装備やっ!!』
一つ一つがカルナのように力を持った魔装備達、それらが雨あられのように飛んでくる。しかもよく見ると俺が集めた無限界層ランキングのカプセルまで混ざっていた。
「これならっ、さすがの伽羅様もっ」
『いやタッくん。これ、うちらもやばいんちゃう? 普通に逃げ場ないで』
え? いやそんなはずは……ちゃんと俺たちは避けてくれるよね? 降り注ぐ魔装備達。
恐々とソネリオンのほうを振り向くと、最初に飛んできた魔装備が直撃して、遥か後方に吹っ飛んでいた。
「お、おまっ、これ、無差別だぁあああああっっっ!!」
『いやぁああああっ、逃げてぇっ、タッくーーーんっ!!』
顔のすぐ横を雷をまとった籠手が、どひゅんっ、と飛んで地面に激突する。
『タッくん、アレっ』
「うん、リックが身につけてた雷神トールの籠手ヤールングレイプルだね。そういえばソッちんがレンタルしてたって言ってたね」
『当たったら真っ黒焦げやんっ!! なんでタッくん、そんな冷静なんっ!?』
だってこれ、どうしようもないもの。もう伽羅様にやられても、魔装備にやられても一緒なんだもん。
『あ、あれ? でもなんか降ってくる魔装備、タッくんを避けてへん?』
「へ? そ、そういえばっ」
まるで見えないバリアに守られているように、全ての魔装備は俺を避けて飛んでいる。
もしかして、俺目覚めた? 文字の力を使わずに不可侵領域、使えちゃった?
「ふ、ふふふ、さすがタクミ様、魔装備を愛し、魔装備に愛される者には、この技は通用しないのです」
魔装備に吹っ飛ばされたソネリオンがボロボロになって帰ってくる。
「え? 俺、そんなに魔装備愛してないけどっ、むしろ、お前、魔装備に愛されてなかったのっ!?」
「魔装備流星群は、すべての魔装備を使い捨てにする禁断の必殺技。どんなに愛していても空からポイ捨てされたら、千年の恋も醒めるというもの」
そう言ったチョビ髭に再び魔装備が直撃して、綺麗に回転しながら吹っ飛んでいく。な、なんて悲しくて恐ろしい必殺技だ。
『ちょっとまってっ、もしかして魔装備がタッくんに当たらへんの、タッくんがうちを大切にしてるからやないの?』
「そうだったっ! カルナも魔装備だったんだっ! すっかり忘れてたよっ!!」
普通に毎日側にいるから、完全に人として接してたよっ。
『それやっ! 魔装備を道具として見てへんっ、愛する一個の人間として見てるっ、それが愛情として魔装備たちに認められたんやっ!!』
「いや、愛情というよりどっちかというと友情なんだけど……」
『そこは愛でいいねんっ! いらんこと言わんでええねんっ!!』
空から落ちてくる魔装備群を見上げると、ピカーーンと光って俺たちを照らしてくれる。ど、どうやら正解みたいだ。
「はっ、そうだっ、伽羅様達はっ!?」
降り注ぐ無数の魔装備の中を、ネレスが素早い動きでかわしている。しかし、回避に精一杯でまったくこちらには近づけていない。
それとは対照的にまったく動かない伽羅様は、大きく息を吸って……
「バウっ!!!!!!」
巨大な咆哮を吐き出した。
ビリビリと空気が震え、地響きと共に宙空にあった無数の魔装備がすべてピタリと止まる。
たった一声。それだけで魔装備たちは、その勢いを失って、パラパラと力なく地面に落ちていく。
「あ」
そして、まるまると太っていた伽羅様は、その咆哮だけで元のスリムなミニチュアダックスフンドに戻っていた。
「うん、いい準備運動になったよ」
規格外の最強生物が、可愛いコロッケのような足を一歩、踏み出す。一瞬で俺との距離がゼロになった。
「カルナっ!!」
『いけるっ、10秒やっ!!』
伽羅様の攻撃とカルナの自爆。
それはコンマゼロのズレもなく、まったく同時に発動された。
※ 魔王が大武会で多重転移空間魔法・百鬼夜行を使うエピソードは「第二部 転章 六十九話 百鬼夜行」に載ってます。よければご覧になってみて下さい。
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