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JK、未来で巨大ロボに乗る  作者: 久遠悠羽


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第28話 さようなら

 エスラータの基地で最後の夜を過ごした4人は、翌日を迎えた。


 AIが言っていた時間に間に合うように支度をする。

 今日は4人共パイロットスーツではなく、懐かしい制服を着ていた。


「では、お世話になりました。ありがとうございました」


 彼らはランゲイル他のエスラータの民に別れを告げる。


「帰ってからも元気で。

 我々の事を、たまには思い出してください」


 つづみ達は深く頭を下げ、それぞれの開拓者プロトポーロスに乗り込んだ。

 AIの拠点から帰って来る為のパイロットとして、バーニィにはケーナ、ガルガラハにはイヴァン、それにアーグハヴァにもエンジニアが1人ずつ乗り込んだ。


「私達は元々パイロット候補者だったのよ」

 ケーナが照れながらつづみの横の、補助パイロット席に着いた。


「え。じゃあ操縦した事はあるんですか?」

ガルガラハだけが完成してたからね。交代で乗ってみてたのよ……

 でも、弾君が来て乗ってくれて、反応速度を見たら『地球人って凄い。私達じゃ役不足だな』って思って。

 今まで戦ってくれてありがとうね」


「いえ……そんな……こちらこそありがとうございました」


 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 AIの拠点に到着した。


 つづみ達は開拓者プロトポーロスから降りた。


 4人が地面に降り切ると、中に入っていたパイロット達がそれぞれの機体を立ち上がらせた。


「さよなら、バーニィ!」

「元気でな、ガルガラハ!」

「俺の事忘れんなよ、アーグ!」

「淋しいよ〜バイバイ、ハヴァ!」


 彼らは自分の機体に向けて声を掛ける。

 中の人間が気を遣ってくれたのか、みんな手を振る仕草をして見送ってくれた。



 4人は後ろ髪を引かれる思いがしたが、踵を返し、基地の中に入って行った。

 司令室では、アンドロイド数体が待ち構えていた。


[時間移動装置はこちらです]


 そう言って案内された部屋には、虹色の靄が広がる不思議な空間があった。

 天井を見上げると、里菜とハヴァが見つけた煙突状の突起が空へと延びている。


[こちらに広がっているのが『アカシック・レコード』と繋がる空間転移システムです]


 アンドロイドが説明する。


「アカシック・レコード?」

 弾が驚いて繰り返した。


「……それって何?」

 里菜が問う。


「アカシック・レコードは宇宙誕生から未来に至るまでの、すべての事象、思考、感情、行動が記録されている『宇宙のデータベース』だと言われている。

 実際にそんな場所が確認された訳ではなくて、スピリチュアルな存在なんだけど……」


[我々は確かにその存在にアクセスする方法を見つけ、こうしてあなた方をこちらの時間に連れて来る事に成功していたのです]


「……そこまで言われたら、信じるしかなさそうだな」

 遼太郎が用心深く呟いた。


[今からあなた方を元の時間に転送します。

 そちらの円形に区切った場所に入ってください。

 システムを作動します]


 アンドロイドが冷静に言う。


「転送……久しぶりだから緊張しちゃう」

 つづみが慄きながら円の中に入った。


「時空迷子とかにならないよね?」

 里菜も恐る恐る入る。


「……みんな、手を繋ごう。離れ離れにならないように」

 弾が声を掛けた。


 円の中に入った4人は円形に手を繋いだ。


「さあ、みんなで帰ろう」

 遼太郎が言う。


[システム、起動します]


 アンドロイドの声がして、彼らの視界は白い光に包まれて行った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 用水路にサラサラと水が流れて行く音がする。


 もう日が暮れて真っ暗になった元の世界の、小さな月虹橋の側に4人の高校生が立っていた。

 輪になって手を繋ぎ、お互いの顔を不思議そうに見つめている。


 どこかから消え入りそうな虫の声がした……


「……あれ?」


 4人の中の1人が、我に返ったように声を上げた。

 井関遼太郎だった。


「え? うわっ!」

「何? きゃっ!」

「……え!?」


 ほぼ同時に他の3人も声を上げ、慌てて手を離す。

 自分達の状況が分かるまでには少し時間が掛かったようだ。


「い、井関君に実村君?なんであたし達、手を繋いでたの?」

 金子里菜が言った。

 暗くてあまり分からないが、顔が赤くなっているようだ。


「そ、そうだよ……何があったの? なんで4人でこんな時間に……」

 桜場つづみも両手を胸の前にピッタリ当てて恥ずかしげに尋ねる。


「俺だって何がなんだか分っかんねーよ、こっちが聞きたいわっ。

 気付いたらここにいたんだって。手の事も記憶ないっ」

 遼太郎が慌てて言い返す。


 そんな中、実村弾だけが落ち着いて周りを見回していた。


「……見た所オレ達、無事に元の世界に戻れたみたいなんだけど……

 みんなどうしたんだ?

 なんでそんなに驚いてるんだ?」


「無事に? 元の世界? 何言ってんだ、俺達は普通に学校に行ってて……

 って、あ!! お前! 弾じゃねーか!」

 遼太郎が改めて弾の顔を見て驚いた声を出した。


「本当、実村君だ。行方不明って聞いてたけど、良かった、無事だったんだね」

 つづみが安堵の表情を浮かべた。


「……待ってくれ、みんなこそ何を言ってるんだ?

 オレが行方不明……なのは聞いてたけど……」


 弾は何が起こっているのか分からない。


「弾、お前3日前から行方不明になったって、お前のおばさんとおじさんが何か知らないかうちまで聞きに来たんだよ。

 一体何処行ってたんだよ……心配したんだからな」


「3日前?」


 ——おかしい。確かオレはこっちの世界では2ヶ月前から行方不明だって遼自身から聞いていた……

 という事は、ここはオレがいなくなってすぐの世界線?

 そんな時間に戻らされたのか。


 だったら他の3人はまだ神機プロスターティスのパイロットに呼ばれていないって訳か……

 それにしても……——


「みんな……記憶がないんだな」

 

 弾が悲しげに言った。


 この4人で未来で一緒に過ごした事、神機プロスターティス開拓者プロトポーロスに乗っていた事、異星人との交流……


 全てが転送のせいで、無かったことになってしまっているのか……


 ——だけどおかしい。

 オレだって……行方不明になってまだ間がないってことは、あちらではエスラータの民に助けられたばかりの筈なのに、その後の記憶も残っている……のに……


 俯く弾の前で、遼太郎が

「とにかく、今は何時なんだろう」

と言ってスマホを取り出した。


「……あれ?電源が切れてる。いや、入りもしない……」

「え? あ、あたしのも。なんで? 今朝満タンで出たんだよ?」

「わ、私のもダメだ」

 それぞれのスマホを取り出した3人が不思議そうに言った。


 未来で長い間充電も出来なかったスマホは、真っ黒な画面から動きもしない。

 ただ街灯が映り込んでいるだけだ。


 ハッとした弾もスマホを取り出してみる。

 真っ黒な画面だ。


「……あの時間は嘘じゃなかったんだな……」

 彼は呟き、住宅の間に広がる星空を見上げた。


「と、とにかくみんな帰ろう。

 何時か分かんないけど、多分遅い。

 何が起こったのかはまた落ち着いて考えることにしてさ」


 遼太郎の声掛けで、4人は解散することになった。


 

 弾は久しぶりに家に帰った。

 ドキドキしながら扉を開ける。


「ただいま」


 音と声に気付いた両親が、驚いて駆け付けてきた。


「……弾……あんた、どこ行って……」

 母親がしがみついて涙を流す。


「全くだ。3日も連絡付かないで、どこに行ってたんだ」

 その後ろで、苦虫を噛み潰したような顔で父親が言った。


「……上手く説明出来ない……」

 しがみつかれたまま、彼は答えた。


「分からないんだ……ごめんなさい……

 でも、帰って……来れた……」


 弾は疲れたように母親の首元に顔を埋めると、肩を振るわせて嗚咽した。


 両親はもう、何も聞かない。

 父親は息を吐いて彼の側まで来ると、肩に優しく手を添えた。


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