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JK、未来で巨大ロボに乗る  作者: 久遠悠羽


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29/29

第29話 最終話 雷雨

 その夜、家に帰ったつづみは1日の用事を終えてベッドに潜り込んだ。


 今日の夕方の4人でいたあれは何だったんだろう。

 確か今日は普通に学校に行って、塾のない日だったからちょっと自習室で勉強してから帰って……


「……あれ?」

 なんだか記憶が曖昧だ。

 普段通りの生活をしていたなら、何故里菜と井関君と、行方不明だって聞いていた実村君とまで手を繋いで輪になって立っていたんだろう……


 あの時の前の記憶がぼんやりしている。

 私は何をしていたっけ……


 そういえば、いつものこの部屋も、ベッドもなんだかとても懐かしい気がする……


 つづみは考えながらも眠気に襲われて来た。

 何故だか酷く疲れているようで、そのまま意識が薄れて行ったのだ。



 ——夢の中で、彼女は不思議な物に出会っていた。


 それは巨大なロボットだった。

 初めは女神のような真っ白な機体で、つづみはそれを『アマテラス』と呼んでいた。


『……私が名前を決めたのかな……

 凄く綺麗なロボット……』


 その『アマテラス』は自分の思う様に動き、何処かから来る敵を倒して行った。

『強い。戦うロボットなんだ』


 ——暫くして暗転し、場面が変わる。

 今度もロボットが出て来た。


 全体的に薄い銀色に光る機体の胸には、青色にカラーリングしてある部分があった。

 スラスターで陽を受けて飛ぶ姿は、時々暗めの虹色に反射する。


 そのロボットは振り向いて、声を掛けて来た。


[つづみ……ボクね……]


『!?』



 つづみは反射的に飛び起きた。


 暫くベッドの上で頭を抱えて考える。


 やがてハッとして明かりを点けて起き出すと、壁に掛けていた制服の上着のポケットを探った。

 そこから小さなメモ帳を取り出す。


 ページがちぎり取られたり、繋がったままだったりしているが、つづみ本人や誰かの字で何かが書き込んであった。


 そのメモを何枚か眺めていた彼女の瞳が、大きく見開かれて行った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 彼らの周りでは何事もなく普通の生活が続いていた。


 弾がこの時代に戻って来てから、3日程が経った。


 あれから金子里菜にも桜場つづみにも、特に会って話をした訳でもない。

 遼太郎と話していても、その話題に触れることは無かった。

 みんな『あの事』は忘れてしまっているのだから……


 彼は諦めた様に息を吐いて、教室の自分の席から窓の外を眺めた。


 遠くから暗い雨雲がこちらに向かって来ている。

 運悪く帰る頃にはひと雨が来そうだった。


「……折りたたみ傘、持って来てたっけ」

 弾は雲から目を離さずに独り言を言った。



 予想通り、帰る頃には土砂降りになってしまった。

 雷鳴が轟き、強い雨が降りしきる。


 皆が騒ぎながら傘を差し、足早に下駄箱から去って行くのを軒下からぼんやり見送って、彼はまた暗い空を眺めた。


 稲光が一瞬、辺りを真昼の明るさに塗り替え、ドガンと大きな音を立てて近くに落ちた。



「……ガルガラハ……」

 誰に言うともなく呟く。


 その囁きは、地面に打ち付ける雨音に掻き消されてしまう。


 不意に、弾の後ろから静かな声がした。


「……大気から水を作り出し戦う『バーニィ

 機体が炎となって突撃し敵を殲滅する『アーグ』」


 振り返ると、つづみが優しく微笑みながら立っていた。


「桜場……思い出したのか……」

 弾が驚いた顔で言った。

 その瞳に安堵の色が滲む。


 彼女は頷き、続ける。


「風を鋭い刃に変える『ハヴァ

 ……雷雲を生み出し雷を撃ち付ける……『ガルガラハ

 実村君の、大切な友達だったよね」


 つづみはゆっくりと彼の隣まで歩いて来て、空を見上げた。


「……そうだな」


 弾ももう一度、同じ様に顔を空に向けた。


開拓者プロトポーロスもエスラータの人達も、みんな元気にしてるかな……」

 つづみが懐かしそうに目を細める。


 下駄箱の向こう側で、遼太郎と里菜が和かな笑顔でこちらを眺めていた。

 彼らの記憶も戻っていたようだ。


「元気にしてるよ、きっと」


 弾が答えた。



 通り雨だったのだろう。

 激しく降っていた雨は、いつの間にか止んでいた。


 ——遠くの空の厚い雲の間から、神の導きのように明るい日差しが、筋を何本も描いて降りて来ていた。



                             了



これでこのお話はおしまいです。

ここまでお付き合いくださり、本当に有難うございました。

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