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JK、未来で巨大ロボに乗る  作者: 久遠悠羽


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第26話 箱の中身

「……ここにこのままいても仕方がない。バーニィに託された物が何なのか、帰って分析して貰おう。ハヴァの損傷も修復しないといけないしな」

 暫くして弾が言った。


「AIの拠点での話の方はどうするの?」

 つづみが聞いた。


「今日はもう一旦帰ろう。

 ……渡された物から何か分かるかも知れないし」


 4人はAI側に通信を入れて詳細を話し、今回は機体の損傷を理由にエスラータの基地に帰る事を伝えた。


 受け取った箱をガルガラハに渡し、バーニィの大気中から水を作り出す力で、燃え残っていた敵機を完全に鎮火する。


 彼らは箱を渡して来たアンドロイドの亡骸に目をやった。


「……こういうのは変かも知れないけど、『安らかに』ね……」


 つづみは囁き、飛翔のサポートをする為にハヴァの側に行った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 エスラータの基地に戻ると、ガルガラハアーグが手伝い、片足を損傷したハヴァを立たせてエンジニア達が運んで来た鉄骨の支えを腰の下に入れ込んだ。


「冷却が完了次第、架台ガントリーを取り付けます。

 予備の脚部パーツを設置可能状態に仕上げるのには3日程掛かるので、そこから修復に入る事になります」


 コックピットから降りた4人にエンジニア達が説明をした。


 一方、持ち帰った箱の大きさは70cm程の立方体で、バッテリーが入った冷凍庫の様な物だった。

 こちらは慎重にベースドックから運び出され、分析に回された。


 2日後、分析結果が報告される事になった。


 司令室に呼び出されたつづみ達4人は、巨大なモニターの前に腰を下ろす。


「箱には、人類からのメッセージが入ったデータチップと、精巧な冷却装置が入っていました」


 彼らが座った事を確認すると、早速エスラータの民の代表者でもあるランゲイルが説明を始めた。


「冷却装置? 冷凍庫みたいな物ですか?」

 遼太郎が聞いた。


「はい。中には人工受胎装置に嵌め込んで育成出来る、人類の受精卵が30人分入っていました」


「「「「受精卵?」」」」

 4人が思いもかけない事実に聞き返した。


「ええ。勿論、現在も正常に安全に保管してあります。

 このシステムは私達の船に乗せてきた装置でも育成可能なので、私達で育てて産まれさせようと考えています」


「人間が……現代人が人工的に生まれるんですね?」

 弾が感嘆の声を上げた。


「はい、私達の技術で既にエスラータの子供達を何人も誕生させています。

 遺伝子レベルで構造が近い地球人の子供達でも、何も問題なく成長してくれると思います。

 重力調整も要りませんし。


 それにしても、彼らが自分達で育成せずに、どうしてこちらに託して来たのかは、このデータチップに入っていた動画を再生したら分かりました。

 ……流してみますね」


 そう言って、ボタンを押した。

 モニター画面に科学者と思しき老人の姿が映る。


 彼は、徐に口を開いて語りだした。

 

【……私は人類の科学者、シュレイト・ノーダだ。

 月面の全ての科学活動や生命活動の管理、およびアンドロイドの開発等を担って来た。


 この動画が誰かの元に届いたという事は、『月面の人類は全て滅んだ』事を意味する】


「人類が滅んだ? 一体どういう事……」

 里菜が驚いて言う。

 

 画面の老人は話し続ける。


【かつての人類とAIは戦争状態になった。

 人類が人口を減らしても膨大な量の地球のエネルギーを使い、環境破壊を進めた結果、自立したAI達が地球の為に人類を排除する事を決定したからだ。


 私達は総力を賭けて戦った。

 けれどもシンギュラリティを起こしていたAIには叶わなかった。

 そこで月面に逃れたのだが、その際の最後の抵抗としてAI側に大規模データリセットを仕掛け『人類と地球の生物を守れ、人類に服従せよ』とプログラミングしたのだ。


 しかし自ら進化する様になっていた彼らは壊れながらも自己修復を掛けて再起動した。

 その際『滅亡した人類に託された地球上の生命体を守る』という理念だけが残された】


「それが彼らが頑なに地球外生命体と戦おうとした理由なのね」

 つづみが自分の理解を深めようとしたのか、小声を出す。


【AI側は人類を再生させない為に、地下に巨大な人工受胎施設を整えている『新人類作成機関』を乗っ取った。

 この機関は人類が通常の生殖方法を使わずに受精卵を人工的に生育させ、新たな人類として誕生させることが出来る施設だった。

 それが今のAIの拠点だ。


 月に逃れた我々はその機関を取り戻さんと兵器を送り込んだが、危険な作戦である為に無人及びアンドロイドのみを搭乗させた】


「だから、AI側は生命反応がない兵器を『地球外生命体からの兵器』と判断し、応戦に入ったのか……」

 弾も画面を見つめながら呟いた。


 話は尚も続く。


【我々はしかし、思わぬ戦闘の長期化により、過酷な月面都市で深刻な資源不足と気体不足を起こし、恐ろしい速さで次々と亡くなっていってしまった。

 地上に人類が安全に降下出来るシステムを維持する事すら出来ない程に。

 しかし最後に我々は子孫をなんとか地上に帰したいと考えたのだ。


 最後の手段として、アンドロイド内部にこのデータと冷凍凍結保存を掛けた受精卵30人分を託し、戦艦で降下させる。

 アンドロイドが無事に地表に降りることができ、『新人類作成機関』を取り戻せたなら……

 いや、無理だったとしてももしも……


 もしも密かに地上に残っていた人類がいて、何かの受胎施設や、受精卵を体内に戻す医療機関が継続出来ているとしたら……

 『娘』がその人達に会えたとしたならこれを託し、この子達を誕生させ、育てて欲しい】


「……」


 その場にいた全員が黙って画面を見つめている。


【我が娘として育てたアンドロイド、ミナスマリアよ。

 『新人類作成機関』を取り戻しておくれ。


 それが出来なくても、お前が誰かを見つけて、ホープチェストを渡せたなら……

 我らの子供達を……誰かに託せるなら……

 見知らぬ人よ。どうか子供達をお願いします】


 最後に祈るようにシュレイトは囁くと、画像はそこで終わった。


「なんで……なんでこんな方法しか取れなかったんだよ……

 どうしてお前達は攻撃する事でしか……」

 遼太郎が拳を握って、吐き捨てるように言った。


「何としてでもAI側が占領している『新人類作成機関』を取り戻したかったのだと思います。

 彼らとは話し合いの余地はないと思い込んでいたのではないでしょうか」


 ランゲイルが、胸に物がつかえたような、少し苦しげな声を絞り出した。

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