第25話 最後の戦い
前のお話『第24話 AIとの会話』は5月24日(日)に公開済みです。
つづみ達4人を乗せた開拓者は上空に並んで飛び上がっていた。
遠くから初めて見る、中央に操縦アンドロイドを乗せたロボット型の飛行ユニットが迫って来るのが見える。
「……なんだあれ……決死の特攻隊みたいだ」
遼太郎が呟いた途端、ユニットから鋭い光線が彼らに向かって降り注いだ。
「!! 回避!」
4機は散開する。
「そっちがその気なら! 行くよ、風。
風翼断空!!」
里菜が叫んだ。
ロボットの腕から風の羽がブワリと浮かび上がり、光速で真空刃を放つ。
それは遠距離斬撃となって飛び、飛行ユニットをガシガシと突き破った。
「水流斬刃!」
つづみの水も腕から高圧水流の刃を出現させ、敵の装甲を削った。
「烈炎斬刃!!」
水により防御力が低下した装甲を狙い、素早く敵に近付いた火が炎を纏った剣で斬り刻む。
斬られた部分からも燃焼が続き、継続ダメージが襲って行く。
「雷鳴穿槍!」
雷が背から取り出した槍を構えた。
それは雷を纏い、突いた所から発雷し内部機能を狂わせ、飛行不能に陥らせた。
4機の攻撃により、飛行ユニットは次々に爆散した。
その勢いで乗っていたアンドロイド達も燃えながら地上に落ち、無惨に動きを止めていった。
[……ああ……]
今までとは違う、人ではないが生のアンドロイドが燃えて朽ちて行くのを、開拓者達は複雑な気持ちで目にしていた。
しかし今は攻撃を避けながら自分達とパイロットを守らなければならない。
「ユニットは後2機!」
里菜が叫ぶ。
——ひと呼吸も置かない間だった。
突然、風の右脚が吹き飛んだ。
体勢がグラリと傾く。
「……え?」
「「「風!!」」」
つづみと弾、遼太郎が叫んだ。
「いやあぁ! 風! 風!」
里菜がコックピットの中で叫び、ガクガクと震えた。
飛行ユニットに気を取られている間に、後方に控えていたデュポン級戦艦に撃たれたのだ。
『右脚部損傷。誘爆回避の為大腿部より切り離します。
アクチュエーター停止、循環路変更。エンコーダー再計算——
ジャイロ、加速度センサー正常』
コックピット内にオペレーターからの落ち着いたアナウンスが流れる。
里菜の頭に風の声が響く。
[里菜、大丈夫。私達に痛覚は設定されていないから痛みはない。
これぐらいなら影響は出ないよ。
……ただ一瞬バランスが取れなくなっただけ]
「……ホント? それなら良かった……」
彼女が涙目で返事をする。
「よくも風を!」
つづみが尚も撃って来る攻撃を躱して飛びながら、戦艦に向かう。
追随して来る飛行ユニットを光速で撃つ激流砲撃で撃退して行く。
残っていた2機の飛行ユニットが墜ちた。
「桜場! 落ち着け!」
弾が叫んで雷で追って来た。
その後に続く風に、庇うようにしながら火が並んで来た。
「金子、まだ行けるか? 一旦降りるか」
「風が大丈夫だって言ってる……
片足だからかえって飛んでいる方がいいかも」
「そうか、でも無理するな。俺の後方に控えておいてくれ」
「うん」
4機はデュポン級戦艦に近付いた。
[つづみ、重水素カートリッジを追加して]
水が言った。
「分かった!」
つづみが予備のカートリッジを差し込む。
小型核融合炉のパワーが一時的に上がった。
[行くよ!]
水がググッと身体を縮めた。
周りに巨大な水渦が発生して行く。
台風を水の渦に変えたかのような膨大な水量が、デュポン級戦艦の先端を捉えた。
[「大渦核動!!」]
つづみと水の声が揃った。
擬似深海水圧を起こした水渦は、超圧水爆発を起こして戦艦前方を爆破した。
雷と火の技が続く。
「天雷審判!!」
「煉獄突駆!!」
雷に撃たれ、火炎に燃やされた戦艦は呆気なく沈んだ。
それは大きな炎の塊となって落ちて行く……
「! あれでは周囲も燃える!
消火に回るぞ」
弾が落ちて行く先を見て言った。
4機は戦艦を追って原生林に入って行く。
そこには地面を燃えながら船体を引き摺って着陸させた跡があった。
急いで延焼を防ぐ為に辺りを線で燃やす。
巨大なロボットを使った迅速な判断で、地面は落ち着き、燃え広がる事はなくなった。
彼らはまだ激しく燃えている戦艦に近付いた。
片足を無くした風を火が支えてやっている。
「これではまたデータは取れないだろうか」
弾が呟いた。
その時、艦のハッチが勢い良く開いた。
「「「「?!」」」」
4人は身構える。
中から、燃えながらもゆっくりとこちらに歩いて来る何かがいたからだ。
「あれは……大きめのアンドロイド?」
遼太郎が目を細めて言った。
全高5メートルはあるだろうか。
そのアンドロイドはこちらに目をやると、一歩ずつ足を引き摺るように歩いて来た。
しかし、後10m程で近くまで来られる場所で、ガクリと膝を付いた。
背を焼かれ、肩まで炎が上がった姿で、ブルブル震える手をこちらに掲げて来る。
[「あっ!」]
つづみと水が思わず近寄り、彼らロボットからすると小さなその手を握った。
燃え盛るアンドロイドは手を握られたまま、反対の手で自分の胸の辺りを触る。
すると、胸元に四角い光の筋が現れ、箱の形に引き出されて来た。
耐火強化された箱なのだろう。中に何か入っている様子だ。
アンドロイドは最後の力で胸からそれを引き抜くと、水の手に乗せた。
[これ……何?]
受け取った彼が戸惑う。
アンドロイドの瞳が一瞬淡い緑に光ったが、水の声は聞こえてはいない。
[……トウサマ……ミッション……完了シマ……シタ……]
呟くようにそう言うと、バスンっと小さな破裂音を立て、そのまま燃えて溶け落ちて行った。
「父様……?」
[ああ……君は……君は一体……?]
つづみと水は呆然とする。
パチパチと残り火の燃える音がする。
その音以外は、風にそよぐ木々の葉や枝が触れ合う音しかしない……
——4機と4人は、戦いの後に残った、どうしようもない虚しさに打ちひしがれて、そこに佇んでいた……




