第95話 それじゃ、いこっか!
朝日を受けたかまどの縁が、まんぷく号の荷台に淡い光を返している。
早朝の空気はきりっと冷たくて、寝ぼけた頭に心地いい。
いつもより早く目が覚めた私は、まんぷく号の荷台にいた。
「よし、よし。これもよしっ、と」
この街で買い込んだ食材のチェックを終えると、荷台に腰かける。
「しのぶちゃんも仲間になってくれて、私を含めて四人パーティーだよ。これ、完全にRPGだよね」
ぱたぱたと飛んでいるステッキに話しかけると、ステッキは少し考えるように曲がった。
「RPGかどうかはわからないが、最初のころからは考えられないな」
「ほんとだよね」
最初、私ひとりじゃどうしようもないって思ってた。
でも、今はみんながいる。
もしかしたらなんとかなるんじゃないか。
今は、そんなふうに思えるようになっていた。
「ぷい!」
ウリ坊が、私の膝に飛び乗ってきた。
「はいはい。もちろんあなたも忘れてないよー」
ウリ坊の頭をそっとなでる。
この世界に来て、初めて出会ったのがあなただったもんね。
何度もお尻つつかれたけど。
でも、あのキノコ狩りがなかったら今の私はいないし、本当に感謝だよ。
私はウリ坊を抱え上げると、鼻先にキスをしようとした。
「ぷいっ!」
ウリ坊が嫌そうに顔をそむける。
「ちょっと! 避けないでよ!」
それからも、ウリ坊は私のキスを避け続けた。
「何やってんだ?」
唇を突き出したまま声のほうを向くと、旅支度を整えたサビーがそばに立っていた。
サビーだけじゃない。
ラセンも、しのぶちゃんも、いつの間にか集まっている。
「もう集合時間だぜ? 早く支度して来いよ!」
「えっ? もうそんな時間!? ごめん! ちょっと待ってて!」
私はウリ坊を荷台に置くと、慌てて自分の部屋へ向かって駆け出した。
「ごめーん、おまたせ!」
旅支度を整えた私は、まんぷく号へ戻ってきた。
三人はそろって、やれやれという顔で私を見る。
「それじゃ、いこっか!」
まんぷく号の引き手を握る。
サビーが先頭に立ち、ラセンはまんぷく号の隣に。
しのぶちゃんは自然にまんぷく号の後ろに回った。
ウリ坊がぴょんと荷台に飛び乗る。
前にサビー。
隣にラセン。
後ろにしのぶちゃん。
荷台にウリ坊。
腰にステッキ。
私たちは、次の街へ向けて、ゆっくりと歩み始めた。
― まんぷく編 完 ―




