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料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


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第94話 しのぶちゃんって呼ぶね!

 この街に来てから、すっかり常連となったレストラン。

 値段はそこそこで、味もそこそこ。

 けど、がやがやした店内は、食事をしながら話し合いをするのにはもってこいだった。


「私、このような店は初めてです」


 忍者の彼女が、珍しそうに店内を見回している。

 そしてメニューを手に取ると、眉間にしわを寄せてじっとのぞき込んだ。


「今日は私のおごり! なんでも好きなもの食べて!」


 彼女には助けられたもんね。

 正直、ご飯をおごるくらいじゃ全然足りないよ。


「茉歩瑠のおごりか! やったぜ! どれ食おうかなー」


「ちょっと、サビー! あなたは別! おごるのは彼女だけ!」


「ちぇっ」


 私とサビーがいつものやりとりをしている横で、ラセンがメニューとにらめっこしている彼女に声をかけた。


「あ、あの、そういえば、ま、まだ、名前を聞いてないと思うんですけど……」


 友達宣言してから、私たちとはすらすら話していたラセンが、久しぶりに言葉を詰まらせた。


 彼女はメニューから顔を上げ、私たちの顔をひとりずつ見る。

 そして、申し訳なさそうに頭を下げた。


「すみません、名前は明かせないのです」


 えー、そこもちゃんと忍者なの!?

 でも名前がないと、私の中ではずっと「彼女」のままなんだけど。


 困ったなぁ……。

 なにかいい呼び方は……。

 忍者……忍《しのび》……しのぶ……。


「……ねぇ、名前が言えないなら、しのぶちゃんって呼んでもいい?」


「しのぶ、ですか。ええ、好きに呼んでください」


「うん! それじゃ、しのぶちゃんって呼ぶね!」


 しのぶちゃんはこくりとうなずくと、また難しい顔に戻ってメニューと真剣勝負を始めた。



 結局、しのぶちゃんが選んだのは素朴なおじやみたいな料理だった。

 高級な料理は食べ慣れてなくて、口に合わないんだって。


「それで、これからどうするんだ? 短剣も直ったし、俺はまっすぐ王都を目指してもいいぜ」


「私も、魔力回復は白ラムネのおかげでなんとかなりそうだし、王都に向かっていいと思う」


 最初に三〇〇日かかるって聞いたときは絶望したけど、なんだかんだでもう少しのところまで来ている。

 このまま一気に王都を目指してもいいのかも。


「それなら、まずは王都の手前にある街を目指すのはどうですか」


 おじやに大量の激辛香辛料を振りかけていたしのぶちゃんが、その手を止めた。

 そしてかばんから地図を取り出すと、器を端へ寄せ、テーブルに地図を広げる。


「ここです。グラン・イグリア。イグラルトの双子都市とも呼ばれる、この国で二番目に大きい街です。まずはここで、イグラルトの情報を集めてはどうでしょうか」


 何それすごい! 今までの行き当たりばったり旅とは全然違う! さすが情報通!


「いいじゃん! そこに行こう! ふたりもいいよね?」


 私はサビーとラセンの顔を交互に見る。


「いいぜ。いきなり正面から乗り込むのもなんだしな」


「私もいいと思う」


 しのぶちゃんが地図を畳んだ。


「決まりですね。それでは明日の朝、出発ということで。集合はロビーでいいですか?」


 ん?


「あれ? もしかして、しのぶちゃんも一緒に来るの?」


「そうですが、なにか?」


 当然ですが? みたいに返された。


「えっと……サビーの短剣を届けに来てくれたんだよね?」


「はい」


「それで任務完了、とかじゃないの?」


「いえ。主様より、あなた方をお守りするように仰せつかっていますので」


「そうなの!?」


 っていうか、主様って?

 会ったこともないのに、なんで私たちのこと知ってんの!?


 サビーとラセンも、目を丸くしてしのぶちゃんを見ている。


「ご迷惑でしたら、あなた方に気づかれぬよう尾行しますが」


「いや、そっちのほうが怖いから! それに、ぜんっぜん迷惑じゃないよ! あんなことがあった後だし、むしろこっちからお願いしたいくらい!」


「だな。俺も戦力は多いほうがいいと思うぜ」


「うん。私も、賑やかになって嬉しい」


「よしっ! 満場一致だね! しのぶちゃん、よろしくね!」


 しのぶちゃんは小さくうなずくと、頭巾に手をかけた。

 結び目がほどけ、絹糸のような黒髪がさらりと肩へ流れる。


 頭巾の下から現れた素顔に、私は大きく目を見開いた。

 えぇっ!? 忍者じゃなくて、お姫様の間違いなんじゃないの!?


「私の方こそ、よろしくお願いしますね」


 しのぶちゃんは、にっこりとほほ笑んだ。

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