第92話 それは、どういう意味?
一斉に振り返る。
そこには、黒ローブの人物が立っていた。
フードを深くかぶり、表情は見えない。
ただ、手だけをゆっくり動かして、乾いた拍手を送っている。
間違いない。
ルルさんの家を襲っていた、あいつだ。
サビーはすぐさま短剣を抜き、ラセンが杖を構える。
しかし、私たちの警戒など気にする様子もなく、静かに話し始めた。
「あれだけの数の魔物を協力して倒すとはな。いや、実に見事だった」
「そ、それは、どういう意味?」
私は声を低くして尋ねた。
「言葉のとおりだが?」
その返事は、あまりにも平坦だった。
私がいぶかしげに眉をひそめていると、今度はラセンを向く。
「私の炎を遮った結界も見事だったが、今回も見事だったね」
ラセンが、じりっと一歩下がる。
続いて、ゆっくりとサビーを見下ろす。
「それに、小さい君。なかなかいいものを持っているようだ」
「へへっ。そりゃどうも」
サビーは短剣を構えたまま、皮肉まじりに返した。
「そして……問題は君だ」
最後に、ゆっくりと私へ向く。
「彼女の家を訪ねていたとき、君はただ茂みで怯えていただけだった。正直、そこまで気にしていなかったが……」
あのとき気づかれてた!? ――冷たい汗が背中を伝う。
「君の料理は、どうにも計算を狂わせる」
フードの奥で、目が光った気がした。
次の瞬間、黒い影が一気に距離を詰めてくる。
「っ!」
避けられない!
そう思った瞬間、目の前で火花が散った。
ローブの下から突き出した剣を、短刀がぎりぎりで受け止めている。
「間に合ってよかったです」
私をかばうように立っていたのは、忍者の彼女だった。
「もうひとりいたか」
黒ローブひらりと後ろへ飛びのく。
「サビーさん!」
彼女が相手を睨んだまま叫ぶ。
「父より、届け物です」
彼女は腰の包みを外すと、振り返らずにそれ後ろに放った。
サビーが片手で受け止め、包みをほどく。
中から現れたのは、鍛え直された短剣だった。
サビーは借りていた短剣を鞘に納めると、自分の短剣を握り直す。
「やっぱりこれだな」
手になじむ感触を確かめるように、刃先を黒ローブへ向ける。
それに合わせるように、彼女も短刀を構え直した。
二人の刃先が、同時に相手を捉える。
「新手に加え、新たな刃か……今回はここまでだな」
ローブの下に剣を収めると、ゆっくりとお辞儀をした。
まるで、余裕を見せつけるような仕草。
そして、その姿勢のまま、ふっとかき消えた。




