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料理魔法のバフ飯屋台~食べた仲間が強くなるごはん、作ります~  作者: たこやき風味


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第89話 なんか、様子がおかしくない?

 空中で短剣を振るい、サビーが次々と蛾を斬り落とす。

 さっきまで空を覆っていた大群が、目に見えて減っていく。


 ラセンを追い回していた群れも少なくなり、ようやく隙が生まれた。

 すかさず小瓶から白ラムネを数粒取り出し、まとめて口に放り込む。

 そして杖を構え、呪文の詠唱を始めた。


「烈風よ、我が杖先に宿り、空を裂け! ウインド・スラッシュ!」


 突然、竜巻のような強風が吹き荒れた。

 風は鋭い刃となり、薄い羽を切り刻む。

 飛ぶ力を失った虫たちが、ラセンの周りにぼたぼたと落ちていく。


「うわぁ……。すごいけど、ちょっとやだなぁ」


 私は苦い顔で、その光景を見つめた。



 それからも、サビーのジャンプ攻撃とラセンの魔法攻撃は続いた。

 逃げ回っていたウリ坊まで、体にまぶしたダゴシアをなめたのか、高く跳ねて蛾を叩き落としている。

 バフって、ウリ坊にも効くんだな。


 やがて――あたりには、蛾の死骸が山となって積み上がった。



 ひと仕事終えた私たちは、妃円を使ったハーブティーを飲んでいた。


「ふぅ。疲れが取れるぜ」


「これ、いい香りだね」


 二人とも、死骸の山を見ながらよく飲めるな……。


 私はできるだけ別の方向を見ながら、お茶をすすった。


「けどよ」


 サビーがテーブルにカップを置く。


「この討伐依頼、Bランクだろ? その割には難しくないか?」


 今度はラセンがティーカップを置いた。


「数が多いだけで、魔物自体は弱いからじゃないかな? 毒もないみたいだし」


 たしかに物量はすごかったけど、直接的な攻撃はされなかったもんね。


「これがもし、もっと攻撃的な魔物だったら、Sランクでも足りないかもねー」


 私は冗談めかして笑った。



「さてと、そろそろ戻ろっか。ラムネの効果も試せたし、ギルドに行って報酬をもらわないと」


 お茶の道具を片づけようとした、そのとき。

 近くに転がっていた死骸のひとつが、ぴくりと動いた気がした。


「ん?」


 目を凝らして、もう一度見る。

 ……やっぱり、動いてる気がする。


「ねぇ、サビー。なんか、様子がおかしくない?」


「何がだ?」


 隣に来たサビーと一緒に、死骸を見つめる。


「……たしかに、おかしいな」


 サビーの声が低くなった。

 そして、それはもう気のせいではなくなった。


 蛾の死骸が、紫色の炎に包まれる。

 その背中が、ゆっくりと割れ始める。

 そこから、黒光りする甲虫のような魔物が、ぬるりと身を起こす。

 大きく開いた顎。

 硬そうな殻。

 ぎちぎちと鳴る脚。


 なにあれ……クワガタ?

 って、蛾の中からクワガタって何!?


 一匹じゃない。

 地面に転がるいくつもの死骸から、次々と黒い魔物が這い出てくる。


 やがて、蛾のときとは比べ物にならないほど重い羽音を響かせて、黒い大群が空へ舞い上がった。


 私たちは、その黒い大群を言葉もなく見上げた。

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